『地図を燃やす』沢木耕太郎

沢木耕太郎の略歴

沢木耕太郎(さわき・こうたろう、1947年~)
ノンフィクション作家。
東京都大田区生まれ。横浜国立大学経済学部を卒業。『テロルの決算』で、第10回(1979年)大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『一瞬の夏』で、第1回(1982年)新田次郎文学賞を受賞。『バーボン・ストリート』で、第1回講談社エッセイ賞を受賞。その他に数々の賞を受賞。代表作に『深夜特急』シリーズなど。

『地図を燃やす』の目次

沈黙と喧騒 *異国
書物の漂流
彼の蒙古
仏陀のラーメン
曲り角
躰の中の地図
汐どき
六十セントの豪華な航海
ガンジズの川風
インドのジュリエット
冷たく、明るい元旦
五年前
亡命者の困難
道としてのシルクロード

地図を燃やす *自身
北の人びとのこと
この小さな事件が
紙屑の中のヒーロー
人の砂漠の中で
私の近況
ひとりだけの徒弟修業
職業としてのルポライター
ゴールに蹴り込む
名刺一枚
短文の練習
ホリデイ
戦無派と終末
「不信の時代」だって?
賭かったもの
たったひとつの言葉によって
ハリケーンとベンケイ
断片から
映像の力、活字の力
地図を燃やす
アーサーの夜
ワン・ショット!
嵐からの隠れ場所
文章があった
青春の夢、というやつ
ささやかな発端
馬車は走る

路上の視野
解説 新井敏記

概要

1987年3月10日に第一刷が発行。文春文庫。266ページ。

1982年に刊行された単行本『路上の視野』を、三分冊して、文庫化したものの第三弾。

そのため、副題的に「路上の視野Ⅲ」と付記されている。つまり、以下の形で、文庫化されている。

「路上の視野Ⅰ」は、『紙のライオン』
「路上の視野Ⅱ」は、『ペーパーナイフ』
「路上の視野Ⅲ」は、『地図を燃やす』

『地図を燃やす』は、沢木耕太郎の異国での出来事や自身の日常や考察がまとめられたもの。

「沈黙と喧騒 *異国」では、海外を旅した時の話が中心。回想したり、または当時の日記のような形で書かれていたり、といった構成。

「地図を燃やす *自身」では、日常生活的な部分がメインで、本や文章について、ルポライターとしての姿勢や考え方などが記載されている。

「路上の視野」というが実質的に「あとがき」みたいなもの。

ノンフィクション・ライターとしての自身を振り返るような記述。

「解説」は、編集者の新井敏記(あらい・としのり、1954年~)によるもの。「遠い部屋の彼の声」という題もついている。

沢木耕太郎に連れられて、ボクシングの試合を観に行った日のことをメインに綴られた小文。242~266ページまでで、三部構成になっている。

感想

ルポライター、ノンフィクションライター、ノンフィクション作家、取材者としての沢木耕太郎が、異国や自身について文章を綴ったもの。

とは言っても、さまざまな分野というかテーマで書かれている。

それぞれがコンパクトにまとめられているので、読みやすいのもポイントかもしれない。

しかし、やがて大学に入り、毎日が休日のような放埒な生活を送るようになって、「土曜の夜」の心たのしさを失ってしまった。アラン・シリトーの『土曜の夜と日曜の朝』を読んだのは、ちょうどその頃ではなかったかと思う。(P.186「アーサーの夜」)

海外文学は、あまり読んで来なかった。もともと、幼少の頃から読書をしていたわけではない、というのも大きな要因のひとつかもしれないが。

海外の作品は、有名なものを、あれこれ読んだ程度。

この沢木耕太郎の文章をきっかけに、イギリスの作家であるアラン・シリトー(Alan Sillitoe、1928年~2010年)の『土曜の夜と日曜の朝』を読んだ記憶がある。

ちなみに章題の「アーサーの夜」のアーサーとは、『土曜の夜と日曜の朝』の主人公の名前である。

土曜の夜というのは、休日の前の晩。さて、明日は何をしようかと夢想しながら、ゆったりと過ごしたり、友人たちと飲んで楽しんだりできる時間。

その高揚感。その雰囲気に、関連した文章が書かれている。

「ささやかな発端」では、沢木耕太郎が、どのような経緯でルポライターになったのかについての詳細も。

また解説では、沢木耕太郎の奥さんについての記述も少々。

小説家の村上春樹(むらかみ・はるき、1949年~)は、奥さんの意見を参考にして作品の発表の有無を決めるとの話を雑誌のインタビューで読んだ新井敏記。

沢木耕太郎に、奥さんに作品を見せるのかを訊ねる。

「時には見せるね、でも女房がダメだっていったって、僕の場合は発表するだろうね」(P.259「解説」)

上記が、沢木耕太郎の回答。

なるほど、面白い。そのような沢木耕太郎のさまざまな点も楽しめる作品。

沢木耕太郎のファンだけでなく、ルポタージュやノンフィクションが好きな人、読書好きな人、文章の書き方や取材の姿勢などについて、知りたい人には非常にオススメの著作。

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