『心は孤独な数学者』藤原正彦

藤原正彦の略歴
『心は孤独な数学者』の目次
概要
感想
書籍紹介
関連書籍
関連スポット
- ケンブリッジ大学、トリニティ・カレッジ：アイザック・ニュートン、シュリニヴァーサ・ラマヌジャン
- トリニティ・カレッジ・ダブリン：ウィリアム・ハミルトン

藤原正彦の略歴

藤原正彦（ふじわら・まさひこ、1943年～）
数学者。大学教授。
満州国の新京（現在の中国吉林省長春市）生まれ、東京育ち。東京学芸大学附属小金井中学校、東京都立西高等学校、東京大学理学部数学科を卒業。東京大学大学院理学系研究科修士課程数学専攻を修了。アメリカのミシガン大学の研究員、イギリスのケンブリッジ大学の研究員も経る。
父親は小説家の新田次郎（にった・じろう、1912年～1980年）、母親は作家の藤原てい（ふじわら・てい、1918年～2016年）。

『心は孤独な数学者』の目次

神の声を求めて――アイザック・ニュートン――
アイルランドの悲劇と栄光――ウィリアム・ロウアン・ハミルトン――
インドの事務員からの手紙――シュリニヴァーサ・ラマヌジャン――
あとがき
流れる星の下で　安野光雅

概要

2001年1月1日に第一刷が発行。新潮文庫。226ページ。

1997年10月に刊行された単行本に大幅な加筆をして文庫化したもの。

数学者の藤原正彦が特に尊敬し、憧れている歴史的な3人の数学者たちを紹介する評伝紀行。

その3人は以下の通り。

アイザック・ニュートン（Isaac Newton、1643年～1727年）…イングランドの自然哲学者、数学者、物理学者。ニュートン力学の確立、微積分法の発見など。

ウィリアム・ハミルトン（William Rowan Hamilton、1805年～1865年）…アイルランド・ダブリン生まれのイギリスの数学者、物理学者。四元数と呼ばれる高次複素数を発見。ダブリン大学トリニティ・カレッジを卒業。

シュリニヴァーサ・アイヤンガル・ラマヌジャン（Srinivasa Aiyangar Ramanujan、1887年～1920年）…インドの数学者。数論などを専門とする。「インドの魔術師」との異名も。ケンブリッジ大学での研究も。

実際に現地に赴いて、文化や歴史、風土などを体感しながら、数学者たちの足跡を辿る。

解説は、画家の安野光雅（あんの・みつまさ、1926年～2020年）で、「流れる星の下で」という題。

これは、藤原正彦の母親で作家の藤原ていの著書『流れる星は生きている』を踏襲したもの。

感想

藤原正彦の著書は好きで、ほとんど読んでいる。その中でも特にお気に入り作品。数学者たちの評伝集『心は孤独な数学者』。

この後には、さらに多くの数学者たちの評伝をまとめた『天才の栄光と挫折』（文春文庫）も出している。

数学が得意というわけではないけれど、何故か魅力というか関心がある数学者たち。映画とかでも観てしまう。

アメリカの数学者のジョン・ナッシュ（John Forbes Nash Jr.、1928年～2015年）の伝記映画『ビューティフル・マインド』や、イギリスの数学者のアラン・チューリング（Alan Mathison Turing、1912年～1954年）が出てくる『イミテーション・ゲーム』。

あとは数学関連では『グッド・ウィル・ハンティング』や『博士の愛した数式』も。

というわけで、このアイザック・ニュートン、ウィリアム・ハミルトン、シュリニヴァーサ・アイヤンガル・ラマヌジャンが出てくる『心は孤独な数学者』も好きである。

著者の藤原正彦がそれぞれの現地を訪問しているので、紀行文としても読める。

あとがきにも書かれているが、妻で心理学者・翻訳家の藤原美子（ふじわら・よしこ、1955年～）も一緒に取材旅行のためにインドへ行ったという。

その話を受けて、安野光雅の解説の最後に、藤原夫妻について触れている。また、この解説そのものも秀逸である。

文学にも造詣が深い画家である安野光雅。画家たちの名前も出てくるが、藤原正彦の生い立ちにも触れる。

藤原正彦は、満州国の新京で生まれている。父親は、後に小説家・新田次郎となる気象学者・藤原寛人（ふじわら・ひろと）。

当時の藤原寛人の勤務先は新京の気象台であった。そして、母親は後に作家となる藤原てい。

1945年8月8日に、対日宣戦布告と同時にソ連が当時の満州の国境を越えて侵入。藤原一家は、日本に帰るために凄惨な逃避行に。

その詳細については、藤原てい『流れる星は生きている』に書かれている。

ここで、安野光雅が伝えたかったことは、3人の数学者たちと同様というか、似たように過酷な人生を背負っているという話。

解説までも、とても素晴らしい著作である。