『若き数学者のアメリカ』藤原正彦

藤原正彦の略歴

藤原正彦(ふじわら・まさひこ、1943年~)
数学者。大学教授。
満州国の新京(現在の中国吉林省長春市)生まれ、東京育ち。東京学芸大学附属小金井中学校、東京都立西高等学校、東京大学理学部数学科を卒業。東京大学大学院理学系研究科修士課程数学専攻を修了。アメリカのミシガン大学の研究員、イギリスのケンブリッジ大学の研究員も経る。
父親は小説家の新田次郎(にった・じろう、1912年~1980年)、母親は作家の藤原てい(ふじわら・てい、1918年~2016年)。

『若き数学者のアメリカ』の目次

1 ハワイ――私の第一歩
2 ラスヴェガス I can’t believe it.
3 ミシガンのキャンパス
4 太陽のない季節
5 フロリダ――新生
6 ロッキー山脈の麓へ
7 ストラトフォード・パーク・アパートメント
8 コロラドの学者たち
9 精気溢るる学生群像
10 アメリカ、そして私
解説 吉増剛造

概要

1981年6月25日に第一刷が発行。新潮文庫。283ページ。

1977年11月に刊行した単行本を文庫化したもの。

数学者の藤原正彦がアメリカで、研究員ならびに助教授として過ごした日々を綴った体験記。

1971年9月に東京で行われた数論日米セミナーで、藤原正彦の発表がミシガン大学のルイス教授の目にとまる。その発表内容は、“Hasse Principle in algebraic equations”(代数方程式におけるハッセ原理)。

そして、1972年にミシガン大学の研究員として、アメリカへ赴任することとなる。

直行するのも芸がないと思った藤原正彦は、ハワイ、ロサンゼルス、コロラドに立ち寄って、ミシガン入りしようと計画。

そのような始まり方の体験記。

ミシガン大学の研究員の次には、さらにコロラド大学の助教授となり、アメリカでの生活は続いていく。

数学、歴史、文化、文明など、幅広い教養を持つ藤原正彦が綴るノンフィクション作品。1978年には、第26回・日本エッセイスト・クラブ賞を受賞している。

解説は、詩人の吉増剛造(よします・ごうぞう、1939年~)。1970年に一年間、コロラドに近いアメリカ中西部のアイオワに住んでいた経験がある人物。

感想

藤原正彦を知ったのは、確か塾の講師をしていた頃に、中学生向けの国語の教材として触れたことが、きっかけだったと思う。

単なる教材として読んでいたら、思わず引き込まれてしまった記憶がある。

調べてみたら数学者ではあるが、数多くの著作を出版している。この『若き数学者のアメリカ』は、第26回・日本エッセイスト・クラブ賞も受賞している。

早速、購入して読んで、さらに他の著作も集めるようになってしまった。

もともと紀行文のようなものが好きというのはある。

もちろん、沢木耕太郎(さわき・こうたろう、1947年~)の『深夜特急』シリーズも読んでいる。

この『若き数学者のアメリカ』では、著者自身のアメリカでの観光や生活が、臨場感たっぷりに、時には叙情感たっぷりに、書き綴られている。

数学者ではあるが、文章の途中途中で、萩原朔太郎(はぎわら・さくたろう、1886年~1942年)、三島由紀夫(みしま・ゆきお、1925年~1970年)、松尾芭蕉(まつお・ばしょう、1644年~1694年)、島崎藤村(しまざき・とうそん、1872年~1943年)、西行(さいぎょう、1118年~1190年)といった詩人や文学者、俳人、歌人などの文学関連の記述も。

確か、中原中也(なかはら・ちゅうや、1907年~1937年)も好きだとか。

子供の頃から算数が好きで数学の道に進んだ筆者。だが、文学にも造詣が深い。その辺りも楽しめる。

というか、母親は作家の藤原てい、父親は直木賞も受賞している小説家・新田次郎だし。家庭環境や遺伝などもあるかとは思うけれど。

アメリカ、もしくは海外に興味のある人、紀行文やエッセイ、随筆、ノンフィクションが好きな人には非常にオススメの作品である。

書籍紹介

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関連スポット

ミシガン大学

ミシガン大学(University of Michigan)は、アメリカ合衆国ミシガン州立の研究型総合大学。アナーバー校、ディアボーン校、フリント校の3校から構成。一般的に、ミシガン大学と言った場合、アナーバー校を指す。

公式サイト:ミシガン大学

コロラド大学

コロラド大学(University of Colorado)はアメリカ合衆国コロラド州にある研究型総合大学。ボルダー校、デンバー校、コロラドスプリングス校の3校から構成。一般的に、コロラド大学と言った場合、ボルダー校を指す。

公式サイト:コロラド大学