『名著講義』藤原正彦

藤原正彦の略歴

藤原正彦(ふじわら・まさひこ、1943年~)
数学者。大学教授。
満州国の新京(現在の中国吉林省長春市)生まれ、東京育ち。東京学芸大学附属小金井中学校、東京都立西高等学校、東京大学理学部数学科を卒業。東京大学大学院理学系研究科修士課程数学専攻を修了。アメリカのミシガン大学の研究員、イギリスのケンブリッジ大学の研究員も経る。
父親は小説家の新田次郎(にった・じろう、1912年~1980年)、母親は作家の藤原てい(ふじわら・てい、1918年~2016年)。

『名著講義』の目次

はじめに
第一回 新渡戸稲造『武士道』[明治三十二年]
第二回 内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりし乎』[明治二十八年]
第三回 福沢諭吉『学問のすゝめ』[明治五年]
第四回 日本戦没学生記念会編『新版 きけ わだつみのこえ』[昭和二十四年]
第五回 渡辺京二『逝きし世の面影』[平成十年]
第六回 山川菊栄『武家の女性』[昭和十八年]
第七回 内村鑑三『代表的日本人』[明治二十七年]
第八回 無着成恭編『山びこ学校』[昭和二十六年]
第九回 宮本常一『忘れられた日本人』[昭和三十五年]
第十回 キャサリン・サンソム『東京に暮す』[昭和十二年]
第十一回 福沢諭吉『福翁自伝』[明治三十二年]
最終講義 藤原正彦『若き数学者のアメリカ』から『孤愁』

概要

2009年12月10日に第一刷が発行。文藝春秋。287ページ。四六判。128mm×188mm。ハードカバー。

お茶の水女子大学の新入生向けに開講していた藤原正彦の名著講義をまとめたもの。最終講義まで含めて、12回に分けられて名著を解説。

初出は『文藝春秋』の2008年10月号~2009年9月号。

目次にある通りの著作が紹介される。以下、作者を列記。

新渡戸稲造(にとべ・いなぞう、1862年~1933年)…教育者、思想家。岩手出身。東京英語学校、札幌農学校(現在の北海道大学)を卒業。アメリカ、ドイツへ留学。『武士道』Bushido: The Soul of Japan)を英文で書き世界的ベストセラーに。

内村鑑三(うちむら・かんぞう、1861年~1930年)…キリスト教思想家、文学者。東京生まれ。東京英語学校、札幌農学校(現在の北海道大学)、マサチューセッツ州アマースト大学を卒業。『余は如何にして基督信徒となりし乎』How I Became a Christian)、『代表的日本人』Representative Men of Japan)を英語で出版。

福沢諭吉(ふくざわ・ゆきち、1835年~1901年)…啓蒙思想家、教育者。大阪生まれ、大分育ち。適塾で学び、後にアメリカやヨーロッパを視察。慶應義塾の創設者。

渡辺京二(わたなべ・きょうじ、1930年~)…思想史家、歴史家。京都生まれ、熊本育ち。大連一中、旧制第五高等学校文科を経て、法政大学社会学部卒業。

山川菊栄(やまかわ・きくえ、1890年~1980年)…評論家、婦人問題研究家。東京生まれ。女子英学塾(現在の津田塾大学)卒業。夫は社会主義運動家の山川均(やまかわ・ひとし、1880年~1958年)。

無着成恭(むちゃく・せいきょう、1927年~)…教育者、禅宗の僧侶。山形生まれ。旧制山形中学(現在の山形県立山形東高等学校)、山形師範学校(現在の山形大学地域教育文化学部)卒業。後に駒澤大学仏教学部に編入し卒業。

宮本常一(みやもと・つねいち、1907年~1981年)…民俗学者、社会教育家。山口生まれ。大阪府立天王寺師範学校(現在の大阪教育大学)専攻科を卒業。

キャサリン・サンソム(Katharine Sansom、1883年〜1981年)…イギリスの外交官・ジョージ・サンソム卿(George Bailey Sansom、1883年〜1965年)の夫人。夫婦で1928年~1939年まで日本に滞在。1937年に『Livin in Tokyo』を出版。

新田次郎(にった・じろう、1912年~1980年)…小説家。本名は藤原寛人(ふじわら・ひろと)で気象学者。藤原正彦の父親。長野生まれ。旧制諏訪中学校(現在の長野県諏訪清陵高等学校)、無線電信講習所本科(現在の電気通信大学の母体)、神田電機学校(現在の東京電機大学の母体)卒業。

上記のような人物たちの名著などを講義。構成としては、藤原正彦と学生の対話形式。

2012年5月10日には文庫版も刊行されている。

感想

藤原正彦の著作は好きなので色々と読んでいる。

国語の大切さを語る藤原正彦。その彼が特に若い人たちに勧める名著が、まとめられたのが、この『名著講義』

この影響で読んだ本もあれば、既に読んでいた本を振り返る事もできる内容。

新渡戸稲造の『武士道』に関しては日本語訳も英文の原著も読んだ。理解できているかは不明ではあるが。

北海道大学の片隅にある胸像をお参りに行ったり、岩手の花巻新渡戸記念館に訪れたこともある。

福沢諭吉に関しても『学問のすゝめ』『福翁自伝』や作家・北康利(きた・やすとし、1960年~)の『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』も読んだ。大分の福澤諭吉旧居・福澤記念館に行った事も。

2021年には、やっと内村鑑三の『代表的日本人』を読み終えた。

こういった名著を紹介する本の影響を受けて、色々と読み進めるのは楽しい。読んでみたい本がまだまだあるので、再読して確認したいと思う。

新田次郎の著作も、『強力伝・孤島』『孤高の人』は読んでいる。未完で終わってしまった『孤愁』を藤原正彦がラストまで書き上げた『孤愁<サウダーデ>』も読んでみようと思っている。

藤原正彦ファンだけではなく、本好きな人や歴史・文化好きな人には非常にオススメの作品である。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

花巻新渡戸記念館:新渡戸稲造

新渡戸稲造の出身地の岩手にある記念館。祖父・(つとう)、父・十次郎、兄・七郎も陸奥国北部(現在の岩手県中部から青森県東部)を治めていた盛岡藩で活躍。新渡戸家の功績を紹介する記念館。

公式サイト:花巻新渡戸記念館

福澤諭吉旧居・福澤記念館:福沢諭吉

大分県中津市留守居町にある福沢諭吉の旧居と記念館。

公式サイト:福澤諭吉旧居・福澤記念館

福澤諭吉記念・慶應義塾史展示館:福沢諭吉

創立者である福沢諭吉の生涯と慶應義塾の歴史を伝える博物館。

公式サイト:福澤諭吉記念・慶應義塾史展示館