柳井正の略歴
柳井正(やない・ただし、1949年~)
実業家。
山口家宇部市の出身。早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業。実家の小郡商事(ファーストリテイリングの前身)に入社。1984年にユニクロの第一号店を出店。
『柳井正の希望を持とう』の目次
第1章 自己変革を急げ
第2章 経済敗戦からの出発
(1)日本の変革
(2)変革を先取りするユニクロ
第3章 私の修行時代
(1)UNIQLOの本質を考えた頃
(2)UNIQLOへの道
(3)修行時代に学んだこと
第4章 基礎的仕事力の身につけ方
(1)営業現場で格闘する
(2)ビジネスマンにとっての人脈
(3)読書という基礎的勉強
第5章 自己変革の処方箋
(1)若きビジネスマンへ――自分を信じよ
(2)中堅ビジネスマンへ――失敗から学べ
(3)上司、マネジャーへ――鬼にも仏にもなれ
(4)経営を目指す人と経営者へ――「実行」こそがすべて
(5)すべてのビジネスマンへ――零細商店の店主のつもりで働け
第6章 希望を持とう
危機に際してのリーダーの役割――あとがきに代えて
『柳井正の希望を持とう』の概要
2011年6月30日に第一刷が発行。朝日新書。210ページ。
あらゆるビジネスマンに向けた柳井正の仕事論。自らの過去やユニクロの現在、そして未来。柳井正の仕事や思考の基礎を知ることができる作品。
目次に記載はないが「まえがき」もある。
上記の通り、第1章~第6章の6つの章から成る構成。さらに、章毎に細かく項目が分かれている。
それぞれ数ページずつとなっているので、簡潔で明瞭。
最後には「あとがき」的な形で、「危機に際してのリーダーの役割」がある。
『柳井正の希望を持とう』の感想
面白くて、『一勝九敗』、『成功は一日で捨て去れ』、『現実を視よ』と柳井正の作品を続けて読んだ。
その流れで、こちらの『柳井正の希望を持とう』も手に取る。
世界に挑戦している人の言葉は重みがあって凄い。
かなり励まされるというか、刺激を受けて、前向きになろうと思える作品である。
タイトルもかなりポジティブ。ただ内容はかなり厳しいというか、緩い感じでは全くない。
第1章、第2章では、過酷な日本の現実を分析していく。
第3章では、自らの経験談や若かりし頃のことを語る。
宇部で仕事をしていた時代はとにかく本を濫読していた。本の種類はビジネス書が中心だったけれど、それに限らず、文化や歴史の本も買いあさって、読んでいた。(P.70「第3章 私の修行時代」)
松下幸之助(まつした・こうのすけ、1894年~1989年)や、本田宗一郎(ほんだ・そういちろう、1906年~1991年)に関連したものなども読んでいたという。
日本の経営者だけではなく、海外の経営者の作品も読み、影響を受けた柳井正。
特に影響が大きかった2冊を挙げている。
『プロフェッショナルマネジャー』ハロルド・ジェニーン
『成功はゴミ箱の中に』レイ・クロック
『プロフェッショナルマネジャー』は、巨大多国籍企業の経営者として活躍したハロルド・ジェニーン(Harold Sydney Geneen、1910年~1997年)の経営回顧録。
ジェニーンの“現状の延長線上をゴールにしてはいけない”という言葉に衝撃を受けたという。“ほんとうの経営”について、考えを改め始めたという逸話も。
『成功はゴミ箱の中に』は、マクドナルドの創業者であるレイ・クロック(Raymond Albert Kroc、1902年~1984年)の自伝。
52歳の時に起業したレイ・クロック。その姿勢や精神に触れて、自分も同じように世界に挑戦していこうと思ったという。
マクドナルドの繋がりで、『ユダヤの商法』などの著書もある日本マクドナルドの創業者・藤田田(ふじた・でん、1926年~2004年)についても触れている。
さらに第4章でも、複数の著書を推薦。
ドラッカーの著作だけでなく、私がビジネスマンに推薦したい本を上げておく。どれも仕事に役立つ有益な本だ。本と対話しながら、自分自身の仕事について、考えを磨き上げてください。(P.121「第4章 基礎的仕事力の身につけ方」)
『イノベーションと企業家精神』P・F・ドラッカー
『プロフェッショナルの条件』P・F・ドラッカー
『幸之助論』J・P・コッター
『IBMを世界的企業にしたワトソンJr.の言葉』トーマス・J・ワトソンJr.
『一倉定の経営心得』一倉定
『ネクスト・マーケット』C・K・プラハラード
『語りつぐ経営――ホンダとともに30年』西田通弘
『情熱・熱意・執念の経営』永守重信
上記を挙げて、どれも集中力と、さらなる勉強が、必要な本かもしれないと添える。
そして、それが本を読むことであると言い、ウンウン唸りながら脳みそに汗をかいて読みましょう、といった形。
以下、各著者の略歴。
P・F・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker、1909年~2005年)…オーストリア人の経営学者。フランクフルト大学で法学博士号を取得。著書多数。
J・P・コッター(John Paul Kotter、1947年~)…組織論、リーダーシップ論を専門とする学者、作家。マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学を卒業。
トーマス・J・ワトソン・ジュニア(Thomas John Watson, Jr.、1914年~1993年)…IBMの二代目の社長。アメリカのオハイオ州デイトンの出身。ブラウン大学を卒業。
一倉定(いちくら・さだむ、1918年~1999年)…経営コンサルタント。群馬県の出身。
C・K・プラハラード(Coimbatore Krishnarao Prahalad、1941年~2010年)…インド系アメリカ人の実業家、作家。Loyola College、Indian Institute of Management Ahmedabadを経て、ハーバード・ビジネス・スクールで経営学博士を取得。
西田通弘(にしだ・みちひろ、1923年~2019年)…実業家、本田技研の副社長等を歴任。青森県弘前市の生まれ。横浜高等工業学校(現在の横浜国立大学)電気化学科を卒業。陸軍航技見習士官を経て、本田技研工業に入社。
永守重信(ながもり・しげのぶ、1944年~)…京都府の生まれ。職業訓練大学校電気科を首席で卒業。ティアック、山科精機を経て、日本電産を設立。
野菜の件の失敗など、思えば「相乗効果を望めないのに新事業に手を出した」わけで、原理原則を踏み外したのだ。私自身、それが原理原則だと、その時まではわかったつもりでいた。けれども、ほんとうの意味では「原理原則」をわかっていなかった。
わかるとは身に沁みることです。(P.145「第5章 自己変革の処方箋」)
失敗の話。
ニューヨーク郊外のモールへの出店の失敗。そして、野菜ビジネスへの進出の失敗。
多くの失敗をしているという柳井正。
頭で分かっていても、体験しないと、実際には理解できないということ。
また、失敗しても良いけれど、耐えられる失敗を計算しておくことが、とても重要とも。
挑戦して、失敗してしまったら、即座に撤退。
そこから学んで、次の成功に活かす、という流れ。
失敗談を披露する人は、何となく信用できるような気もする。あまり言いたくはないだろうけれど、後人のために伝えてくれている。ありがたい。
私自身は若い頃、仕事を通じて英語を習得したけれど、まだまだ充分ではないと思い、海外出張のたびにブラッシュアップを心掛けている。(P.198「第6章 希望を持とう」)
柳井正は、英語が出来るのか。これは知らなかった。
ユニクロは英語を社内公用語にしようと推進。英語習得のプログラムも会社で用意しているとのこと。
トップに立つ人間が英語が出来ないのであれば、英語校公用語化の説得力がないからな。
ただ、若い時に仕事で英語を身に付けて、さらに今現在もブラッシュアップしているのか。凄いな。
自分も英語力を磨いていこうと思う。
ビジネスマン、経営者、個人事業主、フリーランスと、特に仕事に従事している人には、非常にオススメの著作。
その他にも、ビジネスに興味があったり、世界的な規模で何かをしたい人には、最適の本である。