『シリコンバレー精神』梅田望夫

梅田望夫の略歴

梅田望夫(うめだ・もちお、1960年~)
IT企業の経営コンサルタント。
東京都の生まれ。慶應義塾幼稚舎から慶應義塾で学び、慶應義塾大学工学部電気工学科を卒業。
東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程を修了。
父親は、劇作家・フランス文学者の梅田晴夫(うめだ・はるお、1920年~1980年)。

『シリコンバレー精神』の目次

文庫版まえがき
プロローグ
Ⅰ シリコンバレーの基本を体感する
Ⅱ ネット革命とバブルの崩壊――同時代体感的ネットバブル考察
Ⅲ マイクロソフトとリナックス(Linux)
Ⅳ シリコンバレーは私をどう変えていったか
あとがき
文庫のための長いあとがき――シリコンバレー精神で生きる

概要

2006年8月10日に第一刷が発行。ちくま文庫。320ページ。副題は「グーグルを生むビジネス風土」。

2001年8月に出版された単行本『シリコンバレーは私をどう変えたか』(新潮社)を文庫化したもの。

文庫化にあたって、本文の加筆修正は無いが「文庫版まえがき」「文庫のための長いあとがき」が増補される。

「文庫版まえがき」は、2~3ページにかけて、あっさりと端的に書かれている。

その代わりではないが「文庫のための長いあとがき」は、269~311ページというなかなかのボリューム。

1996年の秋から2001年の夏にかけてのシリコンバレーを、梅田望夫の経験したものを基にして描いたのが本書である。

感想

1994年10月に、奥さんと一緒にシリコンバレーに移り住んだ梅田望夫。

生活基盤を整えて落ち着いた頃が、約2年後の1996年の秋。当時の梅田望夫は36歳で、2001年の夏には40歳。

当時のシリコンバレーの雰囲気やIT企業の業界と同時に、36歳~40歳までの梅田望夫の体験や経験も知ることができる著作。

もちろん、日本との比較も出てくるので、シリコンバレーに関する知識がなくても、そこまで困らない。むしろ比較対象があることで、より日本というものも見えてくる。

アメリカ、シリコンバレーで奮闘する一人の日本人男性の記録としても楽しめる内容。

文章は読みやすく、分かりやすいのも特徴である。その文章を綴る姿勢に関しては、「文庫のための長いあとがき」に次のように書かれている。

近未来の方向について、その時点その時点で自分なりの判断を下し(未来から振り返れば間違いだらけであろうとも)、苦しくても断定する表現を心がけてきた。(P.299:文庫のための長いあとがき・「シリコンバレー精神」でモノを書く)

日本では楽観論と悲観論を併記した方が無難で受け入れられやすいが、意図的に判断と断定にこだわって、自らの行動に強く結びつけようとしたという。

間違っていた場合には、反省し、改善、成長といったサイクル。

現在から過去を振り返って書くといった静的なものではなく、現在の積み重ねの過去をアーカイブとして、動的で長期的な営みのコンテンツの方向性も示唆している。

また「あとがき」では、父親・梅田晴夫についての言及がある。この辺りは、エモーショナルな感じ。文章を書く、本を書くということに対する真摯な姿勢が見受けられる。

私としては、この上記の二つの部分が特に感銘を受けたというか、記憶に残った。

アメリカ、シリコンバレー、IT、情報技術、起業、海外生活、30代後半の生き方などに興味があれば、非常にオススメの作品である。

シリコンバレー関連では、この後に書かれた『ウェブ時代5つの定理』も。

書籍紹介

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