『ウェブ進化論』梅田望夫

梅田望夫の略歴

梅田望夫(うめだ・もちお、1960年~)
IT企業の経営コンサルタント。
東京都の生まれ。慶應義塾幼稚舎から慶應義塾で学び、慶應義塾大学工学部電気工学科を卒業。
東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程を修了。
父親は、劇作家・フランス文学者の梅田晴夫(うめだ・はるお、1920年~1980年)。

『ウェブ進化論』の目次

序章 ウェブ社会――本当の大変化はこれから始まる
第一章 「革命」であることの真の意味
第二章 グーグル――知の世界を再編成する
第三章 ロングテールとWeb2.0
第四章 ブログと総表現社会
第五章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
第六章 ウェブ進化は世代交代によって
終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち
初出について
あとがき

概要

2006年2月10日に第一刷が発行。ちくま新書。256ページ。副題は「本当の大変化はこれから始まる」。

序章に関しては、新潮社の『フォーサイト』や産経新聞の「正論」に掲載されたもの。

第一章~終章は、上記に記載されたもの中心に、素材としながら書き下ろしたもの。

インターネットやウェブ、ブログ、グーグルなどが、一般的な社会に広がり始めた頃の考察が、まとめられたもの。

感想

「Web2.0」という言葉が流行し始めて、しばらく経った頃に読んだ記憶がある。

ざっくりいうと「Web2.0」とは、誰もが参加できる構造のウェブ。受信だけではなく、送信も。受容だけでなく、参加すること。双方向性が大きな特徴。

Amazonのロングテールなどについても解説。

需要の少ない商品が豊富に並ぶ。少数の人々が購入する商品が、ほぼ無限に近い形で並ぶ。ただし、それが無限に近い形で積み重なる。

するとその積み上がりは大きくなる。つまり利益にもなる。

ただ、その構造を組み上げていくのに大量の時間と労力が必要になる。それを成し遂げたのがAmazonという話。

物事の本質は変わらない。ただ時代は変わるし、技術も変わる。

第六章の章題にもなっているが「ウェブ進化は世代交代によって」というのも重要。どのような進化も世代交代による。

若者だった人がいつかは、老人となる。いつの間にか、変化や進化を恐れるようになってしまう傾向がある。自分自身も気をつけたい。柔軟性が大切である。

また「あとがき」にも記載されている言葉。

第一章で触れた「アナロジーで理解しようとしてはいけない」というファインマン教授の言葉を改めて思い出してほしいと思う。(P.248「あとがき」)

これも非常に金言である。

因みにファインマン教授とは、リチャード・フィリップス・ファインマン(Richard Phillips Feynman、1918年~1988年)で、アメリカ合衆国出身の物理学者。

1965年には、量子電磁力学の発展に大きく寄与したことから、ノーベル物理学賞を受賞。

付け加えておくと、同時に、アメリカの理論物理学者であるジュリアン・セイモア・シュウィンガー(Julian Seymour Schwinger、1918年~1994年)と、物理学である朝永振一郎(ともなが・しんいちろう、1906年~1979年)も共に受賞している。

類推では、直線的な進化になってしまう。

飛躍的進化は、全く別の物事として、捉えなければならない。この辺りも日頃から、思考を柔らかく変化を受け入れやすいようにしておく姿勢が必要である。

本書では、ウェブの発展などをシリコンバレーに住んでウェブ関連の仕事にも携わっている梅田望夫の深い考察を読む事ができる。

ウェブの歴史や本質などを改めて振り返る事ができるオススメの良書である。

書籍紹介

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