『星新一』最相葉月

最相葉月の略歴

最相葉月(さいしょう・はづき、1963年~)
ノンフィクションライター。編集者。
東京都の生まれ。兵庫県神戸市の育ち。関西学院大学法学部法律学科を卒業。
『絶対音感』で第4回小学館ノンフィクション大賞を受賞。『星新一』で第34回大佛次郎賞、第29回講談社ノンフィクション賞、第28回日本SF大賞、第61回日本推理作家協会賞評論その他の部門、第39回星雲賞ノンフィクション部門を受賞。

星新一の略歴

星新一(ほし・しんいち、1926年~1997年)
小説家。
東京の生まれ。東京女子高等師範学校附属小学校(現・お茶の水女子大学附属小学校)を経て、東京高等師範学校附属中学校(現・筑波大学附属中学校・高等学校)に進む。
旧制の官立東京高等学校(現・東京大学教養学部及び東京大学教育学部附属中等教育学校に継承)に入学。東京大学農学部農芸化学科を卒業。東京大学大学院の前期修了。
本名は、筆名と同じ読み方で、漢字が異なる星親一。父親は、星薬科大学の創立者で星製薬の創業者・星一(ほし・はじめ、1873年~1951年)。

『星新一』の目次

序章 帽子
第一章 パッカードと骸骨
第二章 熔けた鉄 澄んだ空
第三章 解放の時代
第四章 空白の六年間
第五章 円盤と宝石
第六章 ボッコちゃん
第七章 バイロン卿の夢
第八章 思索販売業
第九章 あのころの未来
第十章 頭の大きなロボット
第十一章 カウントダウン一〇〇一編
第十二章 東京に原爆を!
終章 鍵
あとがき

概要

2007年3月30日に第一刷が発行。新潮社。571ページ。197mm×138mm。ハードカバー。

副題は「一〇〇一話をつくった人」。

ショートショートの神様と呼ばれるSF短編小説の第一人者・星新一。その知られざる生涯を辿るノンフィクション作品。

出生。幼年期。学業。戦争。終戦。

父親の残した会社。作家。創作。

1001話の完成。その後。といったように、その生まれから死までを追った評伝。

物語は、星新一の最期の時から始まる。そして、出生へと繋がっていく構成。

重要なポイントとなるのが、取り巻く人物たち。

まずは、父親・星一(ほし・はじめ、1873年~1951年)。。アメリカに留学し、コロンビア大学政治経済学科を卒業。後に、星製薬を設立した人物。

母親は、解剖学者・小金井良精(こがねい・よしきよ、1859年~1944年)の次女・せい

ちなみに、小金井良精の妻は、小説家で軍医の森鴎外(もり・おうがい、1862年~1922年)の妹・森喜美子(もり・きみこ、1871年~1956年)。

喜美子は、歌人であり翻訳者でもあった。

父親は仕事で、母親は次男に掛かり切りとなり、幼少期の星新一は、小金井良精と喜美子と、よく過ごすこととなる。

そのような環境から、星新一の人生が始まっていく。

それぞれの詳細の記述や描写があり、非常に重厚な内容。星新一の様々な側面も多く描かれている。

最後の564~571ページには、参考文献も掲載。

全編にわたって参考にしたものが最初にあり、その後は章ごとにまとめられているのも特徴。

2010年3月29日には、上下巻の文庫版も刊行されている。

感想

星新一は、私にとって、かなり特別な作家である。というのも、読書の楽しさを教えてくれた作家だからである。

子供の頃は、ほとんど本を読まなかった。高校に入ってから、担任が国語の教師で、国語の授業の最初の10分間が読書の時間となった。

そこで、担任が用意した本棚から手に取ったのが星新一の本。

あまり明確に憶えていないが、恐らくシンプルに短編で、読みやすそうだからと思ったのではないだろうか。

そこから一気に星新一の作品にハマっていった。読書の習慣もいつの間にか身に付いていた。

そして、星新一以外の作家の本もどんどん読むようになって、月日は流れた。

ある時、星新一がノンフィクション作品も手掛けていることを知る。

当時はノンフィクションも読み漁っていたから気になった。

『人民は弱し官吏は強し』『明治・父・アメリカ』『明治の人物誌』を読む。とても面白かった。

そのような折に、この最相葉月の『星新一』を読む。とても興味深い。あっという間に夢中になって読み切ってしまった。

父親や祖父や祖母との関係なども興味を持った。

その後、電子書籍で『祖父・小金井良精の記』を、また紙の本で『泡沫の歌:森鷗外と星新一をつなぐひと』(著・小金井喜美子/編・星マリナ)なども読む。

この『星新一』では、評伝の主人公である星新一以外の人物にも深く焦点が当てられている。

特に父親の星一。製薬会社を設立して、後に多くの事件に巻き込まれてしまう人物。そして、祖父や祖母。

詳細な情報も多く、星新一ファンには非常に面白い書籍である。

参考文献も最後に豊富に載っているので、そこからさらに深堀りしていくのも面白いかもしれない。

星新一ファンであれば、必読のオススメの書である。

書籍紹介

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