『人生を最高に生きる法』竹内均

竹内均の略歴

竹内均(たけうち・ひとし、1920年~2004年)
地球物理学者、科学評論家。
福井県大野市の生まれ。東京帝国大学理学部地球物理学科を卒業。東京大学大学院理学研究科を修了。
定年退職まで東京大学に勤務。科学雑誌「Newton」を創刊し、編集長を務める。

『人生を最高に生きる法』の目次

はじめに――自分にとって「最高の人生」を実現する方法
第一章 広い分野に好奇心を持っているか!
第二章 自分をしばる固定観念を捨てされ!
第三章 あなたは自分の“顔”に自信があるか
第四章 時間を制する者に不可能はない!
第五章 言い訳するな! 可能なかぎり挑戦せよ! そして最良の人生を築け!

概要

1992年6月10に第一刷が発行。知的生き方文庫。236ページ。

本の読み方や時間の管理、睡眠の大切さなど、知的生活のための重要なポイントをまとめた著作。

1989年9月に三笠書房から刊行された『人生を最高に生きる私の方法』を改題して文庫化したもの。

私はかねてから、個人にとっての理想の人生とは、①好きなことをやって、②それで食べることができ、③しかもそれが他人のために役立ったとしてほめられるような、そういう人生であると考えている。(P.3:はじめに――自分にとって「最高の人生」を実現する方法)

ベルギー王立科学アカデミーからラグランジュ賞(Charles Lagrange Prize)を受賞した地球物理学の権威でもある著者の竹内均。

現在より約30年前の文章であるが、今尚よく言われる人生のテーマを分かりやすく定義する。

その後の文章では、人生には目的を持ち、努力を継続して、自己実現しなさいと強く主張する。

東京大学で教授を務め、後に科学雑誌「Newton」を創刊、大学予備校の校長も引き受け、NHK教育テレビの高校講座も担当。

さまざまな方面で教育に携わり、若い世代へ熱いメッセージを送った人物の言葉には熱が帯びている。

構想力を一口でいえば、データとデータとを関連づけ、その組み合わせから生じる意味や効果を理解する能力である。あるいは重要な意味や効果を生むようなデータの関連づけをする能力といってもいい。その力がないと、いくら良い発想をしてもそれは新発明や新発見になっていかない。だから、構想力こそが、「独創」の生みの親であるといってもいいのである。(P.95:第二章 自分をしばる固定観念を捨てされ!)

独創についての考察。独創とは「断片から意味のある集合をつくること」と説く。また、独創とは、断片を結合させる能力があって、初めて開花すると。

つまり、断片を結びつけて、積み上げる、構想力が重要であると。

その後に、具体的な構想力の事例として、ソニーのウォークマンを挙げる。

井深大(いぶか・まさる、1908年~1997年)からの機器に関する不満が、盛田昭夫(もりた・あきお、1921年~1999年)に届く。盛田昭夫は新しいアイデアを考える。

技術者たちの反対を押し切って商品化。大ヒットする。といった逸話。

「初級読書」とは、「この文は何を述べているか」を理解する読書である。「点検読書」は、時間内にできるだけ内容を把握する読書。「分析読書」は、本の内容に関連する事柄を系統立てて読むことだ。「シントロピカル読書」は、ひとつの主題に対して一冊だけでなく何冊もの本を読むことである。(P.119:第三章 あなたは自分の“顔”に自信があるか)

ここでは、アメリカの哲学者で教育者のM・J・アドラー(Mortimer Jerome Adler、1902年~2001年)と、アメリカの批評家で伝記作家のC・ヴァン=ドーレン(Carl Clinton Van Doren、1885年~1950年) による共著『本を読む本』の内容紹介。

「初級読書」から「シントロピカル読書」までの四段階の読書方法がある。

ただし、常に「シントロピカル読書」をするのではなく、その時に求められているアウトプットに応じて、読書の方法を選択すれば良いという。

自分の状況に応じて、気楽に読むのが良い。気楽に読む気持ちが、読書を楽しいものにさせると。楽しいから習慣になるとも。

ちなみにこの文章の前には、英文学者の外山滋比古(とやま・しげひこ、1923年~2020年)の二通りの本の読み方も紹介。

知っていることを読み直す「アルファー読み」と、知らないことを初めて読む「ベータ読み」の二つ。

その意味で、入門書は薄いものほどいい。厚さが薄いということは、それだけポイントがうまく整理され、内容が凝縮されているということであり、短時間で全体像をつかむことが、より容易になる。しかも、分厚い専門書を広げたときのような精神的な圧迫感も少ない。だから、気軽に学習に取り組めるというわけだ。(P.129:第三章 あなたは自分の“顔”に自信があるか)

「その意味で」というのは、何か新しいものを体系的にザックリと知りたい、全体像を知りたいといった時のこと。時間効率も良いと説明。

入門書は恥ずかしいという人もいるかもしれないが、専門書は予備知識のない人が読めるようにはつくられていないから、まずは入門書からと。

また入門書はさまざまな立場で書かれているので、複数の入門書を読むのが良いと助言。

時間の無駄のように思うかもしれないが、重なる内容は大切な部分と理解できるし、またその部分の内容は既に知っているので、読むスピードも速くなる。

もしくは、共通の部分は飛ばして読んでも良いと。むしろ、異なる部分を意識して読む。

最終的には、一冊目よりも速く読めて、同じテーマで、さまざまな視点を得られて、理解も深まるという。

じつは、この時間管理が、すべての自己管理につながる。経営者のドラッカーも、「時間こそは、最もユニークで乏しい資源。これを有効に管理しなければ、ほかのどんなものも管理されない」といっている。(P.154:第四章 時間を制する者に不可能はない!)

この前段では、作家で実業家の邱永漢(きゅう・えいかん、1924年~2012年)にも言及。

お金と時間についての考察をする。お金と暇のバランス、つまり仕事と時間のバランスに注意しなさいという邱永漢の主旨を紹介。

そこで、時間を上手く使わないといけないと改めて説明。オーストリアの経営学者であるピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker、1909年~2005年)の言葉も引用。

何よりも時間管理を徹底することから始まると述べる。

ところで、時間の使い方で最も悪いのは、睡眠時間を削ることである。(P.213:第五章 言い訳するな! 可能なかぎり挑戦せよ! そして最良の人生を築け!)

前章で時間管理についての言及があり、ここでは注意点。短時間睡眠は良くないと。ただ長時間も良くないとも。

7~8時間くらいの睡眠が、頭にも体にも適切ではないかという。

また10分や20分程度の昼寝も推奨。加えて、午前2時~午前6時までは、体の疲れを癒やす時間帯であるので、体のリズムとしても活動には有効ではない。

その時間帯は、しっかりと眠った方が良いという話。

感想

自著をはじめ、共著や翻訳なども手掛けた竹内均。

たぶん、最初はイギリスの作家で医者のサミュエル・スマイルズ(Samuel Smiles、1812年~1904年)が書いた『自助論』の翻訳者として知ったような気がする。

その後に、自著も沢山書いているということを知り、いろいろと読んでいくようになった。

今回紹介した書籍には、日本をはじめ世界の偉人たちや、さまざまな本も紹介されている。恐らくここで初めて知った人とかも多いように思う。例えば、邱永漢など。

教育者としても幅広く活躍していた著者。そのため、文章や構成も分かりやすい。難しい言葉や表現も抑えられていて、幅広い年齢層が読めるようになっている。

自分はどちらかと言えば、短時間睡眠では上手く生活できな人間なので、睡眠の大切さを語る人には、ありがたい気持ちになる。

投資家の瀧本哲史(たきもと・てつふみ、1972年~2019年)なども睡眠を確保しなさいと指摘していた。

全く別のところでは、漫画『MASTERキートン』の「交渉人のルール」でも睡眠の義務についての描写がある。つまり、睡眠は良い仕事をするのには必要不可欠であるということ。

仕事、お金、時間、睡眠、余暇、遊びと上手く配分をして、人生を最高に生きていきたいところ。

具体的な内容が多いので、とても実践的で直ぐに自分の生活に取り入れられるのも素晴らしい点である。

ちょっと気分がいまいちの時などに、快活に元気を与えてくれるオススメの書籍である。

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