『降伏論』高森勇旗

高森勇旗の略歴

高森勇旗(たかもり・ゆうき、1988年~)
ビジネスコーチ。
富山県高岡市の出身。元プロ野球選手。

『降伏論』の目次

まえがき “一生懸命”という幻想
第1章 いますぐやる
第2章 考えずにやる
第3章 具体的にやる
第4章 価値の本質に気づく
第5章 言葉を変える
第6章 相手を勝たせる
第7章 自分を働かせる
第8章 自分の「在り方」を決める
第9章 自分の「状態」を高める
あとがき 好奇心を取り戻す
参考文献

概要

2023年6月5日に第一刷が発行。日経BP。279ページ。ソフトカバー。128mm✕188mm。四六判。

副題は“「できない自分」を受け入れる”。

感想

映像ディレクターの高橋弘樹(たかはし・ひろき、1981年~)のリハックの番組に出ていて知った人物、高森勇旗。

インタビューを見ていたら、かなり面白かったので、書籍を購入。予想通りに面白かった。

もともとは野球一筋であり、プロ野球選手にもなった。だが、上手く行かずに引退。その後、ビジネスコーチとして成功している、といった感じ。

かなり例外的な能力のある人物ということは置いておくとして、非常に興味深かった。

著者自身の性格や才能が綺麗に噛み合って、今に到るみたいなものか。

もともと文章を書いたりするのは好きだったようで、ライターの仕事もしていたとか。そのため、文章は読みやすいし、構成の流れも無駄がない。

分析とかも好きだったとか。後は何よりも、野球で鍛え上げられた身体能力というか、シンプルに体力とかスタミナ。

集中力と、膨大な労働時間だな。

やはり、体力は超重要。

最終的には、著者自身も突っ込みを入れていたけれど、少しスピリチュアル系みたいな話も出てきて、驚いた。まぁ、直感を大切にしよう、みたいな感じで受け取ってみた。

基本的に、合理的で論理的な考察が続いているので、その辺りは安心感がある。

気になったことはその場で解決し、少しも未完了を残さない。その癖がつくと、限りなく未完了は発生しづらくなる。(P.45:第1章 いますぐやる・常に完了状態でいる)

物事を未完了にしないで、常に完了状態でいるようにする。

ここでは、未完了のことを“跨ぐ”と表現しているのも面白い。だから、跨がない、ようにすると。

単なる作業の未完了だけではなく、違和感、不快感を覚えたり、曖昧さを感じたりしたら、その場で対応するといったようなもの。

かなり、細かい話にはなる。

だが、それによって精神のエネルギー、心のマジックポイントが減ってしまう。分かりやすく言えば、僅かながらも心が消耗してしまうということ。

むしろ、注意がそこに多少向いてしまったり、エネルギーが奪われてしまったりする。

そのような違和感、不快感、曖昧さが積もり積もって、後々に大きな問題になってしまう。

そうならないように、早めに目を摘んでおく。この辺りは、多くの先人たちも言っているように思う。

コンサルタントの今北純一(いまきた・じゅんいち、1946年~2018年)とか、編集者の箕輪厚介(みのわ・こうすけ、1985年~)とかも。

その場、その場で、対応する。即座に、対応する。

なぜなら“いいところを取り入れる”判断能力は、残念ながらあなたにはないからである。何が良くて、何が悪いかという判断は、結局は下の自分の思考の内側である。そこで判断したことは、結局もとの自分に引き戻してしまう。(P.68:第2章 考えずにやる・「いいところを取り入れよう」は第二の敵)

これも至極真っ当な指摘。

この文章の前には、筆者がプロ野球選手の時代のエピソードも。ピッチングコーチに、コントロールを良くするためのアドバイスをもらいにいった。

15メートル先の的にボールを当てるように指示を受ける。

投げる。

右に外れる。

二球目を投げようとした時に、コーチが言う。「いま、何を考えている?」と。

「もう少し左に投げよう」と思っていたと素直に答える高森勇旗。

ここでコーチは「もう少し左に投げられるコントロールがあるなら、最初から的に当てている」と。

ボールのコントロールが出来ないから相談している人物。

その人物が、ボールのコントロールの微調整をしようとしている。

オカシイ話だ、というもの。

確かに!

身体の能力と同様に、頭脳の能力も同じ。

現在の判断能力を用いてきた結果が、不満のある現在の状態。つまり、判断能力がない。

判断能力がない人間が、いいところを取り入れる、という判断は不可能。

面白い!

ちなみに先述のボールのコントロールのアドバイスとしては、1球目で右に外れたら、2球目は左に外す。3球目に、その間に投げる、というもの。

この具体的なアドバイスから、抽象化すれば、自分の各課題にも応用できそうな気がする。

あとは、真似する時は、自分の考えなど入れずに、徹的に真似をする、というのがベストか。

守破離の守。まずは、徹底的な守。

自分という不純物は入れないで、純粋に真似をする。

“面白いと言ってしまえば、それはもう面白い”

かなり半信半疑であったが、とにかく私は、口に出してみることにした。言葉の持つ力を実感するのは、それから少し経ってからのことである。(P.136:第5章 言葉を変える・それは「難しい」のか「面白い」のか)

「難しい」と言いたくなった時に「面白い」と言ってみる。

言葉を変えるのは、思考を変えるのと同様である。

つまりは、認識を変えるということか。現実も変わるのか。

さらに事例として、とある企業では「忙しい」を禁句にしているというところも。しかも、「忙しい」と言いそうになったら「大人気」と言い換えるとか。

なかなか面白い。

確か、昔どこかの企業で「チャレンジする」とか使われていたような。

ミスると、そういった方向に流れてしまう場合もあるので注意は必要だけれど。

また後半には、自信の無さを隠す言い訳として使われる「一応」や「ちょっと」も使わないように著者はしているとのこと。

使いがちだから、気を付けたいな。

というわけで、非常に読みやすく分かりやすい、独特で具体的な成功の方法が書かれたオススメの作品である。

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