『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』中島聡

中島聡の略歴

中島聡(なかじま・さとし、1960年~)
コンピュータ技術者、ITエンジニア、起業家。
早稲田大学高等学院、早稲田大学理工学部電子通信学科、早稲田大学大学院理工学研究科を卒業。
NTTに入社、後にマイクロソフトの日本法人に入社。マウスの「右クリック」「ドラッグ&ドロップ」「ダブルクリック」などの概念を生み出した元マイクロソフトの伝説のプログラマー。

『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』の目次

1 なぜ、あたなの仕事は終わらないのか
「終わらない仕事」は、こうなっている
なぜあの天才は、トップグループから脱落したのか
応用問題が終わらないと、テストは終わらない
最初に頑張るアメリカ人、最後に頑張る日本人
「なるはや」をやめれば緊張感が生まれる
「余裕を持っておけばよかった」の経済学
結局、なぜあなたの仕事は終わらないのか
それでも、あなたの仕事は終わる
2 時間を制する者は、世界を制す
その仕事は、本当に間に合うのか?
スマホアプリがアップデートを繰り返す理由
3500個のバグがあっても、世界は変わる
すべての仕事は、必ずやり直しになる
石膏像を彫るとき、「眉毛」から始める人はいない
待ち合わせ30分前に、スタバでコーヒーを飲め
花さえ用意できれば、裏で昼寝してもいい
ルーがなくてもカレーは作れる
「出勤前の服選び」で疲れてどうする
ビル・ゲイツの意思決定は光速
現在の「右クリック」の概念は、こうして生まれた
時間を制する者は、世界を制す
3 「ロケットスタート時間術」はこうして生み出された
何としても宿題を終わらせて海に行きたかった
予習は、最強の時短になる
本当は受験勉強さえ効率化できる
タイムマシンを作るのに漢字は要らない
余った時間で、好きなことに打ち込む
嫌なことをやりたくなければ効率化するしかない
言葉で説明できなければ、先に形にしてしまえ
「まず作ってみる」が、未来を変える
企画を早く形にした者がチャンスをつかめる
インターネットという概念は熱狂する
誰もが、この時間術を使えるようにするために
4 今すぐ実践 ロケットスタート時間術
100人に1人もできない「あること」とは?
「ラストスパート志向」が諸悪の根源
まずは「締め切りは絶対に守るもの」と考える
スタートダッシュで一気に作る
見積もるには、とにかくやってみることだ
徹夜は仕事がノッているときにしろ
仕事は最速で終わらせてはいけない
集中力の秘密は「界王拳」
界王拳を使ってメールを返す必要があるか?
どこまでも2:8の法則で仕事をする
最強の昼寝は「18分」
午後は気楽に「流し」で働く
朝が最強である3つの理由
結局、ロケットスタート時間術とは何なのか
5 ロケットスタート時間術を自分のものにする
長期の仕事は縦に切る
「並行して進む仕事」は1日を横に切る
大きな仕事と小さな仕事が平行している場合
それでもうまくいかなかったら
あなたの仕事は規則を守ることではない
ほかの人の仕事が遅れたら「モックアップ」を作る
結局、まず仕事が来たら
6 時間を制する者は、人生を制す
目的があれば、勉強はたやすい
崖を飛び降りながら飛行機を組み立てろ
勉強しなくても英語を話せるようになる方法
集中しなきゃいけない仕事なんかするな
何を基準に「自分に適した職」を選ぶべきか
運だけではない「姿勢」の重要性
やりたいことには思い切って飛び込む
冴えたアイデを生む思考とは
今の環境で夢に近づく方法
やりたいことが見つからないなら先人に聞く
MBAで学べることより大切な、たった一つのこと
時間を制する者は、人生を制す
結局、本書の真の目的とは何か
あなたが寝る前にやるべきこと
あとがき

概要

2016年6月1日に第一刷が発行。電子書籍は、2016年6月7日に発行。文響社。207ページ。

元マイクロソフトの伝説のプログラマー・中島聡が仕事の終えるための具体的な方法をはじめ、仕事論及び人生論を語る著作。

副題は「スピードは最強の武器である」。

マイクロソフトに関連のある人物も少しだけ登場する。

スティーブ・バルマー(Steven Anthony Ballmer、1956年~)…マイクロソフトの元最高経営責任者。実業家。ミシガン州デトロイト出身。ハーバード大学で数学と経済学の学士を取得。スタンフォード大学経営大学院を中退。

ウィリアム・ヘンリー・”ビル”・ゲイツ3世(William Henry “Bill” Gates III、1955年~)…マイクロソフトの共同創業者。実業家。プログラマー。ワシントン州シアトル出身。ハーバード大学で応用数学を専攻するが、後に中退。

ちなみに、スティーブ・バルマーとビル・ゲイツは、ハーバード大学の時に学生寮の同じ部屋で生活していた。

マイクロソフトの時のエピソードを交えながら、仕事に関する方法論、時間術を提示する。生い立ちなどにも触れているのもポイント。

感想

kindle unlimitedで読む。

題名というか、本の存在自体は、前から知っていた。

ビジネス書を斜めから解説というか、茶々を入れる堀元見(ほりもと・けん、1992年~)のYou Tubeで内容を知った。

結論としては、なかなか面白かった、といった感じ。というか、中島聡が、凄すぎる能力というのが実情であろう。

取り敢えず、スタートダッシュで、8割完成させる。日程の見積もりを、そこで出す。早く提出はしないで、納期通りで提出。

この辺りが肝である。

マイクロソフトを辞めると言うと、当時CEOだったスティーブ・バルマーは、私が退社する日の朝7時に、直接訪ねて引き留めてくれました。(P.5「表紙(まえがき)」)

スティーブ・バルマーが引き留めるというのが、凄い。それだけ、マイクロソフトで認められていたということ。

スティーブ・バルマーと言えば、『マイクロソフトでは出会えなかった天職』『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』の著者であり、社会起業家としても有名なジョン・ウッド(John Wood、1964年~)が尊敬する人物でもある。

どんなに頑張って100%のものを作っても、振り返ればそれは100%ではなく90%や80%のものに見えてしまうのです。言い換えれば、100%のものは、そんなに簡単に作れるものではないのです。(P.40「スマホアプリがアップデートを繰り返す理由」)

これは、なるほど、と思った部分。言われてみれば、当たり前ではあるが。

どんなに完璧だと思っても、後から振り返ってみれば、至らない所は出てきてしまう。

つまり、仕事はどんなに頑張っても、100%満足のいくものなどできない。

そのため、ある程度、諦めというか、仕方がないと思って、作業を終わらせて、次に進むすかない、ということ。

彼は複雑な問題をいくつかの独立した問題に分けるのがとても上手な人です。「困難は分割せよ」とはフランスの哲学者・デカルトの言葉ですが、分割術を最も実践的に行っているのはビル・ゲイツでしょう。(P.50「ルーがなくてもカレーは作れる」)

冒頭の「彼は」の彼は、ビル・ゲイツのこと。

ルネ・デカルト(René Descartes、1596年~1650年)は、フランス生まれの哲学者、数学者。合理主義哲学の祖であり、近世哲学の祖として知られる人物。

複雑なものは、分割して、独立した問題として捉える。

そして、その問題の解答を出す。それを繰り返していく。

本章の最後に、結局時間を制するとどんなメリットがあるかをおさらいしておきましょう。それは次の3点に集約されます。
①リスクを測定できる
②目に見える形のもの(プロトタイプ)を素早く作ることができる
③誤差に対応できる
(P.62「時間を制する者は、世界を制す」)

これは、第2章のまとめの部分。

時間の使い方によるメリット。早め早めに対処しておくことで、余裕ができて、突発的な事態が起きても対処ができる。

また、プロトタイプとして、目に見える形で、試作品をつくっておくと、他者に伝わりやすい、納得してもらいやすいという話。

その後には、マイクロソフトのベーパーウェアという戦略についても。

ベーパーウェア (vaporware) とは、概要が発表されたものの構想や開発の途中であり、実際に完成するのかどうかは、未定のソフトウェアもしくはハードウェアのこと。

vapor とは英語で「蒸気」の意味で、実体のないことを表す。

マイクロソフトは、ベーパーウェアという戦略で、競合他社のやる気を削ぐという方法をよく使うとか。

まずはそもそも、「他人の仕事は遅れるもの」という認識を強く持つことからはじめましょう。(P.153:ほかの人の仕事が遅れたら「モックアップ」を作る)

これも、印象的だったポイント。

他者との共同作業の場合における前提の認識というか、心構えについて。

他者の仕事は遅れるのが当然として、その際の余った時間で、見本品を作ったり、自らの出来る仕事を進めておくというもの。

「無理だ」という人の多くがじつは、そのことについて実際にはほとんど何も調べてもいないし、考えてもいない人だということを、強く心に刻み込んでください。(P.184「今の環境で夢に近づく方法」)

物事を始める前に、それなりにしっかりと勉強して準備をしておくことは大切である。

その際に、周りから「無理だ」と言われることもある。

ただ、そういうことを言う人間は、得てして、何も調べていないし、無知であることが多い、というもの。

まぁ、否定した方が楽だし、マウントも取れる感じになるし、アドバイスしているっぽい感じというか、相談に乗っている姿勢にはなる。

そういことに、気を取られずに、自らの挑戦をしなさいということ。

最後に本章のをまとめておきましょう。大きくは、次の3点に集約されます。

・勉強のための勉強はするな
・規則は守るな
・集中力を無理やり引き出さなければならない仕事はするな
(P.194「結局、本書の真の目的とは何か」)

第6章のまとめの部分であり、この著作の最後の部分。

特に、納得したのは、最後の「集中力を無理やり引き出さなければならない仕事はするな」。

これって、つまり、自らが望んでいない仕事をするな、ということ。

あるいは、その仕事の理由をしっかりと把握しておきなさいとも読み取れる。

自らの興味がしっかりと目的に重なっている仕事を選ぶということ。

最初の「勉強のための勉強」も同じ。

いきなり始めて学びなさい、という感じか。やりながら憶えなさい、というもの。

実際に、第6章の中には「崖を飛び降りながら飛行機を組み立てろ」という項目もある。

走りながら考えなさい、みたいなものの、さらに上の次元である。

世界的に超絶優秀な人物の発言であるので、ある程度、凡人としては、割り引いて考えなければならないが、いろいろと学ぶことの多い著作である。

マイクロソフトやパソコン、IT関連などに興味のある人や仕事術や時間術に関心の高い人には非常にオススメの作品である。

書籍紹介

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