森岡毅の略歴
森岡毅(もりおか・つよし、1972年~)
マーケター。
兵庫県伊丹市の出身。兵庫県立伊丹高等学校、神戸大学経営学部を卒業。P&Gジャパンマーケティング本部を経て、USJに入社。2017年に独立して、マーケティング会社「刀」を創業。
今西聖貴の略歴
今西聖貴(いまにし・せいき、1953年~)
アナリスト。
大阪府の出身。米国シンシナティ大学大学院理数部数学科修士課程を卒業。
水産会社、P&Gを経て、USJに入社。
『確率思考の戦略論』の目次
序章 ビジネスの神様はシンプルな顔をしている
第1章 市場構造の本質
第2章 戦略の本質とは何か?
第3章 戦略はどうつくるのか?
第4章 数字に熱を込めろ!
第5章 市場調査の本質と役割―プレファレンスを知る
第6章 需要予測の理論と実際―プレファレンスの採算性
第7章 消費者データの危険性
第8章 マーケティングを機能させる組織
巻末解説1 確率理論の導入とプレファレンスの数学的説明
巻末解説2 市場理解と予測に役立つ数学ツール
終章 2015年10月にUSJがTDLを超えた数学的論拠
『確率思考の戦略論』の概要
2016年5月31日に第一刷が発行。角川書店。311ページ。ハードカバー。148mm×210mm。A5判。
副題は「USJでも実証された数学マーケティングの力」。
ビジネスにおける確率思考を高めるためにマーケターの森岡毅とアナリストの今西聖貴が共同で執筆した著作。
前半の戦略の部分は、森岡毅。後半の消費者調査の部分は今西聖貴。といった分担。
本体価格は税別で3,200円。ビジネス関連書籍としては、やや高額の部類ではある。
ただ私が購入した本の奥付を見ると、発売から10カ月程度の2017年3月15日に10版発行と書かれている。コンスタントに売れ続けているようだ。
数学が苦手な人でも理解できるように、結論と考え方をメインにしている。また数学をさらに深く知りたい人にも満足ができるように、巻末解説に数式が並んでいる。
ビジネスにおけるマーケティングについての考え方が、かなりの範囲で網羅されている内容。
課題を要素分解して、さらに数学を使って、確率の高い施策を選んでいく。
特に戦略的な部分で強調されているのが、プレファレンス。
プレファレンスとは、消費者のブランドに対する相対的な好意度(簡単に言えば「好み」)のことで、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決定されています。(P.22「第1章 市場構造の本質」)
そのため、戦略としては、消費者のプレファレンスを高める事が最重要となる。
では、そのプレファレンスは何によって、決定されるのか。それは、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つ、であると。
その他に、継続的な経営と値決めのバランス、アンケート調査の方法、質問方法なども。
さまざまな事例についても、具体的に書かれているので、非常に参考になる書籍である。
『確率思考の戦略論』の感想
森岡毅の著作を読み続けようと思って手に取った書籍。
数学的考え方というか確率思考が、いかに重要であるのかを実感。改めて数学の勉強をしなければならないと認識。
ビジネス的にも非常に勉強になった。
後半の今西聖貴のパートでは、経済評論家の日下公人(くさか・きみんど、1930年~)の『すぐに未来予測できるようになる62の法則』を考えるためのフレームワークとして、推奨していた。
USJのマーケティング企画部の社内教育にも利用されているとか。
『確率思考の戦略論』で、日下公人を知る事ができた。
森岡毅と同様に兵庫県出身の人物。日下公人は、東京大学経済学部卒業、日本長期信用銀行に入行した経歴を持っている。
『すぐに未来予測できるようになる62の法則』も読み終えているので、次の機会に紹介したい。
また、森岡毅が人間的側面が現れている記述も印象に残っている。
USJを映画だけのテーマパークから総合エンターテイメントのテーマパークへの変革の際には、社内からも外部からも、ネットから自宅まで、かなりの反発や反応があったようだ。
痛くなかったか? 辛くなかったか? よく聞かれますが、きついに決まっているでしょう(笑)。あまりにも痛かったので、私は「人に好かれようなんてこれっぽっちも思わない」という鎧を着ることに決めたのです。それでも「心」はどうしても反応してしまうものです。USJに来てから毎冬のように血尿生活でした。(P.127「第4章 数字に熱を込めろ!」)
かなり数字や合理といった冷徹な感じの人で、その辺りの感情も上手く捌けているのかと思っていたら、そんな事も無かったというのは、ちょっと驚いた。
加えて、何故か親近感というか、この方も一般的な感情を持っている人間なんだな、という事を思った。
ただ、めちゃくちゃ能力もあり努力もされている方ではあるのは間違い無いが。
意思決定の強さは、やはり凄い。器というか、胆力というか。自分も、もっと正確に色々な判断が出来るようにしていきたいと改めて思った。
よりマーケティングについて、数学や数字を活用しながら考察していきたい人、確率思考を自分のビジネスに応用したい人には、非常にオススメの一冊である。
書籍紹介
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USJ:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
2001年にオープンした大阪にあるテーマパーク。
公式サイト:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン