- 働き方の二つの選択
- クワドラントの理解
- マインドセットの変革
- 小さな行動の積み重ね
ロバート・キヨサキの略歴・経歴
ロバート・キヨサキ(Robert Toru Kiyosaki、1947年~)
アメリカの実業家、投資家、作家。
アメリカのハワイ州の生まれ。日系四世。高校を卒業後、ニューヨークのアメリカ合衆国商船大学校(The United States Merchant Marine Academy、略USMMA or Kings Point)へ進学。卒業後に海兵隊に入隊し、士官、ヘリコプターパイロットとしてベトナム戦争に出征。
帰還後、ビジネスの世界に乗り出し、1977年にナイロンとベルクロを使ったサーファー用の財布を考案し会社を設立。1994年にビジネス界から引退。1997年に『金持ち父さん 貧乏父さん』を執筆。
『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』の目次
はじめに キャッシュフロー・クワドラントとは何か
第1部 クワドラントの右側か左側か
第一章 私があえてホームレスになったわけ
第二章 クワドラントが違えば人間も違う
第三章 人はなぜ自由よりも安全を求めるのか
第四章 ビジネスシステムを手に入れる
第五章 投資家の五つのレベル
第六章 お金は目に見えない
第2部 最高のあなたを引き出す
第七章 なりたい自分になる
第八章 どうしたら金持ちになれるか
第九章 銀行そのものになれ
第3部 クワドラントの右側で成功するために
第十章 まずはヨチヨチ歩きから
第十一章 ラットレースから抜け出すための七つのステップ
おわりに 道はかならず見つかる
『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』の概要・内容
2001年6月25日に第一刷が発行。筑摩書房。311ページ。ソフトカバー。148mm✕210mm。A5版。
副題は「経済的自由があなたのものになる」。
原題は『Rich Dad’ CASHFLOW Quadrant』。副題は「Rich Dad’s Guide to Financial Fleedom」。
共著者には、公認会計士で経営コンサルタントのシャロン・レクター(Sharon L. Lechter、1954年~)。フロリダ州立大学を卒業。専門は会計学。
訳者は、翻訳家の白根美保子(しらね・みほこ)。東京都の生まれ。早稲田大学商学部を卒業した人物。
2013年11月8日に改訂版が刊行。
『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』の要約・感想
- 労働か、仕組み作りか?あなたの仕事はどっちだ
- あなたが立つ場所、それがクワドラントだ
- 思考こそが最も過酷な労働である
- ビジネスオーナーに必要な二つの力
- なぜ人は安定を求め、自由を遠ざけるのか
- 失敗は成功への必須科目である
- お金は目に見えない?富の本質を理解する
- 経済的自由への移行を支えるもの
- 恐怖を乗り越えるための思考法
- まずは一歩ずつ、着実に進むこと
- ラットレースから抜け出すために
- まとめ:あなたのクワドラントはどこにあるか
この記事では、将来のお金の不安を解消し、経済的な自由を手に入れるための道筋を描き出す一冊を徹底的に解説する。
その一冊とは、ロバート・キヨサキ(Robert Toru Kiyosaki、1947年~)の著書『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』である。
もしあなたが、今の働き方や将来の生活に漠然とした疑問や不安を抱いているのなら、この記事はまさにあなたのための羅針盤となるだろう。
本書が提示する「クワドラント」という概念は、単なる金儲けのテクニックではない。それは、自らの人生をどのように生きるかという、根源的な問いに対する一つの答えなのだ。
労働か、仕組み作りか?あなたの仕事はどっちだ
私たちは日々、生活のために働いている。
しかし、その働き方が「バケツで水を運ぶ」労働なのか、それとも「パイプラインを建設する」労働なのかを意識したことはあるだろうか。
本書の冒頭で、著者は鋭い問いを投げかける。
私はよくこんなふうに自問する―― 「私はいまパイプラインを建設しようとしているのか、それともバケツで水を運ぼうとしているのか?」 「私は懸命に働いているのか、それとも賢明に働いているのか?」(P.12「はじめに キャッシュフロー・クワドラントとは何か」)
「バケツで水を運ぶ」働き方とは、自分の時間と労働力を切り売りして収入を得る方法である。
働けば働くほど収入は増えるが、病気や怪我で働けなくなれば、その瞬間から収入は途絶える。これは、労働収入(フロー)に依存した生き方だ。
一方、「パイプラインを建設する」働き方とは、一度作れば継続的に収入を生み出し続ける仕組み(資産)を構築することである。
建設中は多大な労力が必要かもしれないが、完成すれば自分が働かなくても水(お金)が流れ込み続ける。これは、資産からの収入(ストック)を基盤とした生き方である。
重要なのは、懸命に働くこと自体を否定しているのではない、という点だ。
問題は、その労働力が何に向けられているかである。
自分の労働力を単に消費するのではなく、永続的な資産、つまり自分だけのパイプラインを築くために投入することこそが、「賢明に働く」ということなのだ。
この記事を読み進めることで、あなた自身のパイプラインをいかにして建設すべきかのヒントが見つかるはずだ。
あなたが立つ場所、それがクワドラントだ
本書の核心をなすのが「キャッシュフロー・クワドラント」という概念である。これは、世の中の収入の得方を四つのカテゴリーに分類したものだ。
Eクワドラント:Employee(従業員)
会社などに雇われて働き、給料を得る人々。最も一般的で安定しているように見えるが、収入や時間は組織にコントロールされる。
Sクワドラント:Self-employed(自営業者)
専門的なスキルや技術を持ち、独立して仕事をする人々。医者や弁護士、フリーランスなどがこれにあたる。自由度は高いが、自分が働き続けなければ収入は得られない。
Bクワドラント:Business owner(ビジネスオーナー)
自分自身が働かなくても収入を生み出す「ビジネスシステム」を所有している人々。従業員を雇い、事業を組織化することで利益を得る。
Iクワドラント:Investor(投資家)
お金を働かせて、さらにお金を生み出す人々。株式や不動産などに投資し、配当やキャピタルゲインを得る。
重要なのは、クワドラントの左側の上から「EとS」と、右側の上から「BとI」では、求められる価値観やスキル、思考法が根本的に異なるという事実だ。
左側の人々は「安定」を重視し、自らの労働力で収入を得る。対して右側の人々は「自由」を求め、資産やシステムから収入を得るのだ。
思考こそが最も過酷な労働である
なぜ多くの人が、経済的な自由を手にできる右側のクワドラントへ移ることができないのか。その一つの答えが「思考の放棄」にある。
自動車王として知られるヘンリー・フォード(Henry Ford、1863年~1947年)は、かつてこう述べた。
フォードの言葉として有名なものに「考えることは最も過酷な仕事だ。だからそれをやろうとする人がこんなにも少ないのだ」というのがある。(P.38「第二章 クワドラントが違えば人間も違う」)
私たちは日々の忙しさに追われ、深く考えることをやめてしまいがちだ。
目の前のタスクをこなすことに精一杯で、自分の働き方や人生の方向性について根本から問い直す機会を持てていないのではないだろうか。
「考えているつもり」になって、実際には思考が停止している状態は非常に危険である。
行動しているつもりでも、進むべき方向が間違っていれば、目的地には永遠にたどり着かない。
今一度、立ち止まり、自分が本当に望むものは何か、そのために何をすべきかを真剣に考える時間が必要不可欠なのだ。
ビジネスオーナーに必要な二つの力
Bクワドラント、すなわちビジネスオーナーとして成功するためには、何が必要なのだろうか。
ロバート・キヨサキの金持ち父さんは、その条件を明確に示している。
Bとして成功するためには、次の二つが必要だ。
1.システムを持っている、あるいはシステムをコントロールする権限を持っていること
2.他人の上に立ってリーダーシップをとる能力を持っていること(P.40「第二章 クワドラントが違えば人間も違う」)
まず、核となるのが「システム」の存在である。
これは、自分がその場にいなくても事業が回り、利益を生み出し続ける仕組みのことだ。
優れた商品やサービスがあるだけでは不十分で、それを安定的に提供し続けるための組織、マーケティング、販売、財務などのシステムが不可欠となる。
そしてもう一つが、他人を動かす「リーダーシップ」である。
システムを構築し、それを効率的に運営していくためには、多くの人々の協力が欠かせない。
金持ち父さんは、ビジネスにおけるリーダーシップの重要性を繰り返し説いていた。
「リーダーシップとは、他人の力を最大限に引き出す能力だ」金持ち父さんはよくそう言っていた。だからこそ、マイクと私にビジネスの世界で成功するために必要な技術的能力――財務諸表を読む力やマーケティング、セールス、会計、経営、生産、交渉といった能力――を身につけさせると同時に、他人とともに働き、彼らのリーダーとなる方法を学ばせるようにいつも気をつけていたのだ。(P.39「第二章 クワドラントが違えば人間も違う」)
注目すべきは、ビジネスの技術的な能力と、リーダーシップが明確に区別されている点である。そして、金持ち父さんはこうも語る。
「ビジネスに必要な技術は簡単だ。むずかしいのは他人と一緒に働くことだ」金持ち父さんはいつもそう言っていた。(P.39「第二章 クワドラントが違えば人間も違う」)
この言葉は、ビジネスの本質を突いている。
会計やマーケティングといった技術は、学べば習得できる。
しかし、多様な価値観を持つ人々をまとめ、同じ目標に向かって導くリーダーシップは、一朝一夕には身につかない。
もし、あなたがこれからBクワドラントを目指すのであれば、まずは自分一人でもコントロール可能な小規模なシステム作りから始めるのが賢明かもしれない。
そして、事業の成長とともに、徐々にリーダーシップを発揮する範囲を広げていくという段階的なアプローチが有効だろう。
なぜ人は安定を求め、自由を遠ざけるのか
多くの人がクワドラントの右側へ移れない根源的な理由は、心理的な障壁、つまり「安定」への執着にある。
学校教育や社会通念は、私たちに「良い会社に入り、真面目に働けば、安定した生活が送れる」と教えてきた。
この価値観は、Eクワドラント(従業員)として生きる上では有効かもしれない。しかし、経済的な自由を求める旅においては、足枷となる。
自由には常にリスクが伴う。未来が保証されていない世界に飛び込む勇気、それが右側へ移るための第一歩なのだ。
では、自由を手にする人々は、暇な時間をどのように過ごしているのだろうか。
「金持ちと貧乏人の唯一の違いは、暇な時間に何をするかだ」 金持ち父さんはマイクと私にいつもこう言っていた。(P.88「第三章 人はなぜ自由よりも安全を求めるのか」)
この言葉は、私たちの日常に鋭く切り込んでくる。
仕事が終わった後や休日に、何をしているか。テレビを見たり、友人と飲みに行ったりして過ごすのが悪いわけではない。
しかし、その時間が未来の自分への投資になっているかと問われれば、どうだろうか。
クワドラントの右側を目指すのであれば、暇な時間は自己投資のための貴重な資源となる。
新しい知識を吸収するための読書、ビジネスシステムを構築するための勉強や作業など、未来のパイプライン建設につながる活動に時間を費やすべきなのだ。
失敗は成功への必須科目である
新しい挑戦には失敗がつきものだ。そして、多くの人はこの「失敗」を極度に恐れる。
しかし、金持ち父さんの哲学は、失敗を成功のプロセスに不可欠な要素として捉える。
「成功から多くは学べない」金持ち父さんはいつもそう言っていた。「私たちは失敗したときに、いちばんよく自分について学ぶ。だから、失敗をおそれるな。成功に失敗はつきものだ。失敗せずに成功することはできない。だから、失敗しない人間は成功もしない」(P.94「第四章 ビジネスシステムを手に入れる」)
これは、挑戦する者への力強いエールである。
失敗は、単なる敗北ではない。それは、自分の弱点や課題を浮き彫りにし、次への改善点を示してくれる貴重な学習機会なのだ。
最初から全てがうまくいくことなどあり得ない。
むしろ、失敗することを前提として計画を立てるべきだろう。
「うまくいけば幸運」くらいの心構えでいれば、一つ一つの失敗に一喜一憂することなく、淡々と目標に向かって進み続けることができる。
成功とは、無数の失敗という土台の上に築かれるものなのである。
挑戦の過程では、周囲からの批判や否定的な意見に心を揺さぶられることもあるだろう。そんな時に思い出したいのが、次の言葉だ。
その頃私がいつも自分に言い聞かせていたのは、次のような言葉だ――「他人が私のことをどう思っているかなどどうでもいい。いちばん大事なのは、私が自分のことをどう思っているかだ」(P.104「第四章 ビジネスシステムを手に入れる」)
他人の評価は、その人の価値観や経験に基づいたものであり、絶対的なものではない。
特に、あなたが前例のない挑戦をしようとしている時、周囲の人間は理解できずに否定から入ることが多い。
しかし、最終的にあなたの人生の責任を取るのは、あなた自身しかいない。
もちろん、ビジネスにおいては顧客や市場といった他者からの評価は極めて重要である。
しかし、それはあくまで事業上の評価だ。
あなた自身の人生という大きな視点で見れば、他人の声に惑わされず、自分が信じる道を進む強い意志こそが、何よりも大切なのである。
お金は目に見えない?富の本質を理解する
私たちは「お金」というと、現金や預金残高といった「目に見えるもの」を想像しがちだ。
しかし、本当の富は、目に見えない場所で生み出されている。それは、金融リテラシー、つまりお金に関する知識や知恵である。
この知識がないと、他人の否定的な言葉に惑わされ、チャンスを逃してしまう。
金持ち父さんが教えてくれたことはこうだ――「そんなことあなたにはできない」という言葉はかならずしも「あなたにできない」ということを意味しない。むしろ、それを言っている当人ができないことを意味していることの方が多い。 このいい例が歴史に残っている。ずっと昔、人々はライト兄弟に「そんなことできるはずがない」と言った。だが、ありがたいことにライト兄弟はその言葉に耳を貸さなかった。(P.135「第六章 お金は目に見えない」)
「空を飛ぶ」という前代未聞の挑戦をしたライト兄弟、ウィルバー・ライト(Wilbur Wright、1867年~1912年)とオーヴィル・ライト(Orville Wright、1871年~1948年)は、周囲の「できるはずがない」という声に打ち勝った。
彼らには、自分たちには可能だという確信と、それを実現するための知識と情熱があったからだ。
他人の「できない」は、その人の限界を示しているにすぎない。
あなたの可能性を制限するものではないのだ。重要なのは、自らの知識と判断力を信じ、行動することである。
では、具体的にどのような知識が必要なのか。
金持ち父さんは、資本主義社会のゲームのルールを理解することが不可欠だと説く。
「資本主義というゲームの基本は『だれがだれに借金をしているか?』ということだ。ゲームを知ってはじめて優秀なプレーヤーになれる……何も知らずにゲームに参加してもみくちゃにされただれかさんのようにならなくてすむんだ」(P.150「第六章 お金は目に見えない」)
この社会は、借金をする側とされる側、貸す側と貸される側で成り立っている。
多くの人は、住宅ローンやクレジットカードで消費者として借金をし、利子を支払う側にいる。一方で、富裕層は銀行や債券を通じてお金を貸す側に回り、利子を受け取ることで富を築く。
まずは自分が抱える消費者としての借金をなくし、次にお金を働かせて利息や利益を得る側に回ること。これが、金持ちになるための基本的な戦略である。
そのためには、まずゲームのルールを学び、勝てる見込みが立ってから参加することが賢明なのだ。
このゲームのプレイヤーを見極めるための、非常に示唆に富んだ言葉がある。
世界最高の投資家と称されるウォーレン・バフェット(Warren Buffett、1930年~)の言葉だ。
アメリカで最も偉大なウォーレン・バフェットはかつて次のように言っている。 「ポーカーをやり初めて二十分たってまだだれがカモかわからない人は、自分がカモなのだ」(P.160「第六章 お金は目に見えない」)
これは、投資の世界だけでなく、あらゆるビジネスシーンにおいて心に刻むべき言葉である。
取引や交渉の場で、誰が利益を得て、誰が損をする構造になっているのか。その力学を見抜けないのであれば、自分が搾取される側、すなわち「カモ」である可能性が高い。
常に状況を客観的に分析し、自分が有利な立場でいられるように立ち回る冷静さが求められる。
経済的自由への移行を支えるもの
クワドラントの右側へ移る旅は、孤独で困難な道に感じられるかもしれない。
しかし、その道のりを支えてくれる存在があれば、成功の確率は格段に高まる。
右側に移りたいと思っている人は、長期にわたって手を貸してくれる「サポートグループ」と、すでに右側のクワドラントにいる人で自分を導いてくれる「よき師」、まずこの二つを確保するようにしよう。(P.209「第八章 どうしたら金持ちになれるか」)
同じ志を持つ「仲間」と、先を歩く「師」の存在は計り知れないほど大きい。
仲間とは、互いに励まし合い、情報を交換し、時には健全な競争をすることで、モチベーションを維持する助けとなる。
師は、自分が過去に犯した過ちや成功の秘訣を教えてくれ、無駄な遠回りを避けるための道標となってくれる。
現代では、オンラインサロンやコミュニティ、あるいはYouTubeなどの学習プラットフォームを通じて、志を同じくする仲間や、尊敬できる師を見つけることは比較的容易になった。
これらのリソースを積極的に活用し、自分を成長させてくれる環境に身を置くことが、クワドラントの右側のbusiness owner(ビジネスオーナー)や、Investor(投資家)への移行を加速させる鍵となるだろう。
恐怖を乗り越えるための思考法
多くの人が行動できない最大の原因は、能力や情熱の欠如ではない。「失敗への恐怖」である。
こんなに多くの人がお金に苦労している最大の原因は、教育が足りないからでも、仕事への熱心さが足りないからでもない。負けることを恐れているからだ。負けるのが怖くて何もできないでいる人は、すでに負けている。(P.205「第八章 どうしたら金持ちになれるか」)
この言葉は、胸に突き刺さる。挑戦しなければ、失敗することはない。
しかし、それは同時に、成功することもないということを意味する。
何もしないまま現状維持を続けることは、緩やかな衰退であり、見方を変えればすでに「負けている」状態なのだ。
失敗は敗北ではない。何もしないことこそが、真の敗北なのである。
この恐怖を乗り越え、前進するためには、物事の捉え方、言葉の使い方を意識的に変える必要がある。
本書では、安全を求める左側の思考と、自由を求める右側の思考を対比させている。※実際の本の構成では、上下で対比。
矢印の下の言葉は感情に負けて臆病になったりしない人の言葉だ。
安全⇔自由
リスクを避ける⇔リスクへの対処の仕方を学ぶ
安全にやれ⇔賢くやれ
私には買えない⇔どうやったら買えるか?
高すぎる⇔長期的に見てどんな価値があるか?
分散⇔一点集中
友達がどう思うだろう?⇔私はどう思っているか?(P.207「第八章 どうしたら金持ちになれるか」)
例えば、「私には買えない」と考えるのをやめ、「どうやったら買えるか?」と自問する。
この小さな言葉の変化が、思考を停止から創造へと転換させる。諦めるのではなく、解決策を探す前向きな姿勢が生まれるのだ。
「リスクを避ける」のではなく、「リスクへの対処法を学ぶ」。
「高すぎる」と切り捨てるのではなく、「長期的な価値は何か」を考える。
このように、使う言葉を意識的にポジティブで建設的なものに変えることで、思考の枠組みそのものを変革し、困難な課題にも立ち向かう力を得ることができるのだ。
まずは一歩ずつ、着実に進むこと
クワドラントの右側へ移るという目標は、あまりに壮大で、どこから手をつけていいか分からなくなるかもしれない。
そんな時に思い出したいのが、ある有名なことわざだ。
「ローマは一日にしてならず」ということわざもみなさんは耳にしたことがあるだろう。学ばなければならないことがたくさんありすぎてくじけそうになったとき、私がいつも思い出すのは「象を食べるときはどうするか?」ということわざだ。この質問に対する答えは簡単。「一口ずつ」だ。(P.248「第十章 まずはヨチヨチ歩きから」)
巨大な象を一度に食べ尽くすことはできない。しかし、一口ずつであれば、いつかは食べ終えることができる。
「千里の道も一歩から」という言葉にも通じるが、どんなに大きな目標も、達成可能な小さなタスクに分解し、それを一つずつ着実にこなしていくこと。
これこそが、目標達成のための唯一の方法である。
焦る必要はない。大切なのは、歩みを止めないことだ。
日々の小さな積み重ねが、やがては大きな成果となって現れる。積小為大である。
では、具体的にどのような視点を持って計画を立てれば良いのか。
本書では、貧しい家庭から富を築いた人々の共通点を挙げている。
1.長期的な見通しとプランを持っている
2.あとになって報われることが肝心だと思っている
3.「複利の力」を自分に有利に利用する
つまり、貧乏な家庭に生まれ、大人になって富を築いた人は、長期的な見通しを持って考えたり計画を立てたりしていた。(P.250「第十章 まずはヨチヨチ歩きから」)
彼らに共通するのは、目先の利益や快楽に惑わされず、「長期的な視点」を持っていたことだ。
すぐには結果が出なくても、将来の大きなリターンのために、今、努力を続ける。
そして、知識、資産、人脈といったあらゆるものを「複利」で増やしていく戦略を取る。
複利とは、元本だけでなく、それによって生じた利息にもさらに利息がつくことだ。
最初は微々たる差でも、時間が経つにつれて爆発的な成長を生み出す。
この「複利の力」を味方につけるためには、長期的な視野に立ち、コツコツと継続することが不可欠なのだ。
ラットレースから抜け出すために
最後に、私たちが囚われがちな「ラットレース」、つまり、働いても働いても資産が増えず、ただ給料のために働き続ける生活から抜け出すための心構えについて触れておきたい。
金持ち父さんがこの二つの図と聖書の言葉を使って言いたかったのは、現在の欲求の充足を将来に延期すること(エモーショナル・インテリジェンスを持っている証拠)、他人ではなく自分のめんどうを見ること、まず自分の資産を築くこと、この三つによって、誘惑による人間の魂の堕落を引き止めることができるということだ。(P.290「第十一章 ラットレースから抜け出すための七つのステップ」)
ここには三つの重要な教えが凝縮されている。
第一に、現在の欲求をコントロールし、将来のために投資すること。
これは自制心や、感情をコントロールする知性(エモーショナル・インテリジェンス)に通じる。
第二に、他人のことより、まず自分のことを見ること。
『孟子』に基づく故事成語「恒産なくして恒心なし」という言葉があるように、まずは自分自身が経済的に安定し、豊かになることが、精神的な安定につながる。
自分が満たされていなければ、真の意味で他人を助けることはできない。
そして第三に、何よりも優先して「自分の資産」を築くこと。
給料が入ったら、支払いを済ませる前に、まず一定額を貯蓄や投資に回す。収入から支出を引いた残りを貯蓄するのではなく、収入から貯蓄を引いた残りで生活する。
この習慣が、着実に資産を築き、あなたをラットレースから解放してくれるだろう。
まとめ:あなたのクワドラントはどこにあるか
『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』は、単なるお金儲けの本ではない。
E、S、B、Iという四つのクワドラントを通じて、私たちの働き方、生き方、そして価値観そのものを問い直す哲学書である。
従業員(E)や自営業者(S)として生きることを否定するものでは決してない。
しかし、もしあなたが時間や場所に縛られない「経済的な自由」を心のどこかで望んでいるのなら、ビジネスオーナー(B)や投資家(I)という右側の世界を目指す旅を始めるべきだ。
その道は、失敗への恐怖や、変化への不安との戦いでもある。
しかし、本書で示されたように、正しいマインドセットを持ち、長期的な視点で計画を立て、「一口ずつ食べ進めれば」、あるいは一歩ずつ着実に歩みを進めれば、道は必ず開ける。
この記事を読み終えた今、改めて自問してほしい。
「私はバケツを運び続けるのか、それともパイプラインを建設し始めるのか?」
その答えが、あなたの未来を大きく左右することになるだろう。
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