勝間和代の略歴
勝間和代(かつま・かずよ、1968年~)
経済評論家。
東京都の生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職学位課程を修了。
JPモルガン、マッキンゼー、アンダーセンなどの外資系企業を経て独立。
『お金は銀行に預けるな』の目次
はじめに
第1章 金融リテラシーの必要性
第2章 金融商品別の視点
第3章 実践
第4章 金融を通じた社会責任の遂行
おわりに
参考文献
『お金は銀行に預けるな』の概要
2007年11月20日に第一刷が発行。光文社新書。230ページ。
副題には「金融リテラシーの基本と実践」と書かれている金融に関する基本をまとめた書籍。
クリティカル・リテラシーとは、与えられた情報や知識を鵜呑みにせず、そこで得た情報や知識と学習者個人の経験との相互作用のなかで、統合された世界を自己に引きつけ、それを主体的に読み取らせるための識字教育として定義されます。(P.18「第1章 金融リテラシーの必要性」)
『大辞林』(三省堂)では、「リテラシー=読み書き能力。転じて、ある分野に関する知識」と書かれていると説明。
では、「知識」や「識字能力」という日本語を使わずに、カタカナ表記でリテラシーという言葉を使う時には、どのような時か。
その場合には、クリティカル・リテラシーの意味で使われる。そのため、クリティカル・リテラシーの定義を明確にしている。
これは、副題に書かれている、また、本書のキーワードともなる「金融リテラシー」を説明する上での前提となる。
金融リテラシーとは、金融に関する情報や知識を単に学ぶだけではなく、そこで与えられたものを批判的に見ながら自己の金融に対する学習を経験として重ねていくことで、金融の情報や知識を主体的に読み解くことができるようになることを指します。(P.18「第1章 金融リテラシーの必要性」)
ここでは、先述のリテラシー、クリティカル・リテラシーに続いて、金融リテラシーの定義を明確にしている。この書籍のメインとなる言葉であるため。
また何故、金融リテラシーが必要かというと、「はじめに」の部分で、次のような理由による。
経済や社会についての知識が豊富な人、司法試験にストレートで合格した人、官庁に勤務しているエリートといった具体的な身近な例を挙げる。
そして、日本人は一般的に、上述のような人であっても、金融に関する知識や情報が乏しいように思われたと勝間和代は述べている。
ファンダメンタルズ分析、すなわち特に会計利益と株価の関係――会計利益が市場の期待よりも大きくなる会社は株価が上がる――については、Ball and Brown(1968年)など、日米を始めとする各国からの学術的な証拠が疑いのないレベルで出ています。(P.49「第1章 金融リテラシーの必要性」)
株式投資には主に、ファンダメンタルズ分析とチャート分析の二つの分析方法がある。
ファンダメンタルズ分析は、企業の業績や株価などを用いて投資指標によって、株価が割高か割安かを分析する方法。
チャート分析は、チャートパターンやテクニカルチャートを利用して、株価の動向を分析する方法。
ここでは、ファンダメンタルズ分析が有効であると伝える。また、その前段階で、リスク(risk)と危険(danger)の違いを明確に区分。
リスクは計量することができ、コントロールも可能。危険は計量できず、コントロールも不能。
株式を例にあげますと、株は毎日数%変動するのが通常なので、その結果に一喜一憂するよりは、十分に分散投資をして株式を買ったあと、市価をあまり見ないようにするということもテクニックとしては有効です。(P.64「第2章 金融商品別の視点」)
「第2章 金融商品別の視点」では、定期預金と国債、株式、為替、不動産、投資信託、生命保険、コモディティ、デリバティブなど、金融商品それぞれについて解説。
最初はなかなか利益や損失に関して、躊躇が出てしまうことがあるので、毎日一喜一憂をしないで、意図的に株式の価格を見ないで放置しておくのも、一つの方法として紹介している。
第1原則 分散投資、分散投資、分散投資
第2原則 年間リターンの目安として、10%はものすごく高い、5%で上出来
第3原則 タダ飯はない
第4原則 投資にはコストと時間が必要
第5原則 管理できるのはリスクのみ、リターンは管理できない
(P.159「第3章 実践」)
この五つの原則を提示する際に、すべての前提は「私たちは金融の相場は予測することができない」という点を勝間和代は強調。
続いて、それぞれの原則についての詳細が並ぶ。
第1原則の分散投資は、リスクが下がり、リターンが安定。
第2原則では、高望みをしてはいけない。
第3原則では、再びリスクとリターンの関係性。
第4原則では、手数料や税金、情報収集や研究のための時間といった各種のコストについて。
第5原則は、文字通りリスク管理の徹底。
その後、この原理原則を基づいて、金融リテラシーを身につけるための具体的な10ステップを紹介。
節約したお金は、必ず、月々天引きにして自動的に積み立てるようにすることです。
なぜなら、行動ファイナンスでいう「メンタル・アカウント(心理的勘定)」という概念では、人間は目の前で見たお金と、目の前から隠されたお金については違った行動を取るためです。(P.194「「第3章 実践」」)
重要な注意点として自動的に積み立てができるような仕組みや設計をしておくようにと主張。
人間の心理と行動の関係性について言及する。自分の欲求や興味と合理や論理との比較。
何かと理由を付けて、普段のちょっとした生活費や遊興費などに使ってしまう場合が多いので、その対策。
現実の生の硬貨や紙幣といったお金よりは、銀行口座に入っている数字のお金の方が、心理的に投資などに利用しやすいという話。
『お金は銀行に預けるな』の感想
勝間和代の著作で初めに読んだのは『効率が10倍アップする新・知的生産術』。
その後に、金融に関する知識を学びたいと思って、手に取ったのがこの著作。シンプルにどうな行動をすればお金持ちになれるんだろうか、といった疑問もあった。
ほとんど金融に関する知識が無い状態で読んだので、とても勉強になった。
特に序盤は、表やグラフなども多用されているので、非常に分かりやすい。また文章もとてもロジカルで読みやすい。
要所要所では、参考文献も紹介しているし、最後にもまとめて掲載されている。読者への配慮がしっかりとなされている本。
取り敢えず、私の場合はいきなり投資とかをするのは怖かったので、現実の株式市場に結びついたオンラインの株式投資ゲームから始めた。
何となく、そのゲームを半年から1年くらい経験して、少額ずつNISAで投資を実際に開始した流れ。
やはり少額でも良いから、現実的に株式投資を始めると、情報収集や研究などの身の入り方が大きく変わる。
芋づる式に、あれもこれも勉強しなきゃいけない、となってしまうのは大変だけれど。
本書にもあった通り、一度購入したら、後は意図的に放置というか、保有して一定期間は市価の変動などを気にしないというのも、本当に良い方法だと思う。
金融関連について継続して勉強していきたいところ。
この著作は、基本的な事項を確認できるので、初心者には特にオススメだと思う。