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ロバート・キヨサキ『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』要約・感想

ロバート・キヨサキ『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』表紙

  1. 資産の活用が重要
  2. レバレッジで加速
  3. 必須の金融リテラシー
  4. 大量の行動と計画の力

ロバート・キヨサキの略歴・経歴

ロバート・キヨサキ(Robert Toru Kiyosaki、1947年~)
アメリカの実業家、投資家、作家。
アメリカのハワイ州の生まれ。日系四世。高校を卒業後、ニューヨークのアメリカ合衆国商船大学校(The United States Merchant Marine Academy、略USMMA or Kings Point)へ進学。卒業後に海兵隊に入隊し、士官、ヘリコプターパイロットとしてベトナム戦争に出征。
帰還後、ビジネスの世界に乗り出し、1977年にナイロンとベルクロを使ったサーファー用の財布を考案し会社を設立。1994年にビジネス界から引退。1997年に『金持ち父さん 貧乏父さん』を執筆。

『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』の目次

はじめに ダビデはなぜ巨人ゴリアテに戦いを挑んだか?
第一部 頭脳のレバレッジ
第一章 若くして豊かに引退する方法
第二章 なぜできるだけ早く引退するのがいいか?
第三章 私はこうやって早期引退を実現した
第四章 どうしたら早く引退できるか?
第五章 頭脳のレバレッジで現実を広げる
第六章 あなたは何が危険だと思うか?
第七章 仕事量を減らして収入を増やす
第八章 金持ちになる一番の近道
第二部 プランのレバレッジ
第九章 あなたのプランは遅いか、速いか?
第十章 豊かな未来を見ることのレバレッジ
第十一章 一貫性のレバレッジ
第十二章 童話のレバレッジ
第十三章 気前よさのレバレッジ
第三部 行動のレバレッジ
第十四章 習慣のレバレッジ
第十五章 あなたのお金のレバレッジ
第十六章 不動産のレバレッジ
第十七章 紙の資産のレバレッジ
第十八章 Bクワドラント・ビジネスのレバレッジ
第十九章 とっておきのヒント
第二十章 人によって現実は異なる
第四部 最初の一歩のレバレッジ
第二十一章 やり続けるにはどうしたらいいか?
おわりに 人生の豊かな恵みを受け取る

『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』の概要・内容

2003年7月10日に第一刷が発行。筑摩書房。432ページ。ソフトカバー。148mm✕210mm。A5版。

原題は『Rich Dad’s Retire Young Retire Rich』。副題は「How to Get Rich Quickly and Stay Rich Forever!」。

共著者には、公認会計士で経営コンサルタントのシャロン・レクター(Sharon L. Lechter、1954年~)。フロリダ州立大学を卒業。専門は会計学。

訳者は、翻訳家の白根美保子(しらね・みほこ)。東京都の生まれ。早稲田大学商学部を卒業した人物。

2015年11月9日に改訂版が刊行。

『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』の要約・感想

  • 富を築くための三つの主要な資産
  • 資産を持つための三つの技術
  • 経済的自由を加速させる「レバレッジ」
  • 究極のレバレッジ「他人のお金」を使う思考法
  • あなたが目指すべき所得の種類とは?
  • 成功の方程式に「失敗」を組み込む勇気
  • 金持ちへの道を照らす「プラン」の力
  • 富を築く土台となる「金融リテラシー」
  • 具体的な資産形成のテクニック
  • 不動産投資で成功するための行動量の原則
  • 本書から学ぶべき本質と行動への転換

経済的な不安から解放され、時間的な自由を手に入れる。

多くの人が一度は夢見る「若くして豊かに引退する」というライフスタイルは、本当に実現可能なのだろうか。

毎日満員電車に揺られ、会社のために働き、限られた給料の中から将来のために貯蓄する。この繰り返しの中で、「このままでいいのだろうか」という漠然とした疑問を抱えている人も少なくないはずである。

もし、あなたが現状を打破し、経済的自立への道を本気で模索しているなら、ロバート・キヨサキ(Robert Toru Kiyosaki、1947年~)が著した『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』は、そのための強力な羅針盤となり得る一冊である。

本書は単なる夢物語ではなく、具体的な思考法と行動指針を提示してくれる。

この記事では、同書のエッセンスを深く掘り下げ、あなたが経済的自由を達成するためのロードマップを描く手助けをしたい。

本書は、時に回りくどく、同じ内容が繰り返し語られる部分もある。しかし、それこそが著者が伝えたい核心であり、私たちの思考に深く刻み込むべき重要な原則なのである。

この記事を通じて、あなたの内なる「金持ち父さん」を目覚めさせる第一歩を踏み出してほしい。

富を築くための三つの主要な資産

経済的自由を手に入れるためには、まず富を生み出す「資産」とは何かを正確に理解する必要がある。漠然とお金を貯めるだけでは、いつまで経っても労働から解放されることはない。

ロバート・キヨサキは、私たちを豊かにしてくれる資産として、三つの主要なカテゴリーを挙げている。

あなたを金持ちにし、若くして引退できるようしてくれる資産の主だったものとしては次の三つがある。
1.不動産
2.紙の資産(株式、債券など)
3.ビジネス(P.16「はじめに ダビデはなぜ巨人ゴリアテに戦いを挑んだか?」)

これら三つの資産こそが、経済的自由への扉を開く鍵である。

不動産は家賃収入という不労所得を生み出し、株式や債券といった紙の資産は配当や値上がり益をもたらす。

そして、自らがオーナーとなるビジネスは、仕組みを構築することで自分がいなくても収益を上げ続ける強力なエンジンとなる。

多くの人は、給料という「勤労所得」だけで生活を成り立たせようとする。

しかし、真の豊かさを目指すのであれば、これらの「資産」を所有し、そこから得られる収入で生活を賄うという発想への転換が不可欠である。

私自身、この考え方に触れた時、まずは不動産を持つための知識を身につけようと決意した。そのためには、徹底的な学習と読書が欠かせないと感じたのである。

資産を持つという目標を掲げたなら、次に必要となるのは具体的なスキルだ。

闇雲に不動産や株に手を出しても、成功はおぼつかない。ロバート・キヨサキは、富への道筋として、習得すべき三つの技術を明確に示している。

金持ち父さんが教えてくれた、偉大なる富へ続く三つの道に焦点を合わせた。その三つの道とは次のようなものだ。
1.ビジネスに関する技術を高める
2.お金の管理に関する技術を高める
3.投資に関する技術を高める(P.26「第一章 若くして豊かに引退する方法」)

この三つの技術は相互に関連し合っている。ビジネスを成功させる能力、稼いだお金を適切に管理し守る能力、そしてそのお金をさらに増やすための投資能力。

これらをバランス良く高めていくことで初めて、資産形成のサイクルが力強く回り始めるのだ。これもまた、終わりなき勉強と読書、そして実践を通じて磨いていくべきものである。

経済的自由を加速させる「レバレッジ」

「若くして豊かに引退する」という目標を達成するためには、他者よりも速いスピードで資産を築く必要がある。

そのために絶対的に必要な概念が「レバレッジ」である。

レバレッジとは「てこの原理」を意味し、小さな力で大きな物を動かすように、少ない元手や労力で大きな成果を得るための考え方や手法を指す。

ロバート・キヨサキは、多くの人が経済的に成功できない理由を、レバレッジの欠如にあると指摘する。

「ただ一生懸命働く人は、限られたレバレッジしか持っていない。物理的に一生懸命働いているのに経済状態がよくならない人は、たぶん他人のレバレッジになって働いているのだ」金持ち父さんはこうも言っていた。「貯蓄口座や、引退後に備えたそのほかの口座にお金をただ入れているだけの人は、自分のお金を他人にレバレッジとして使わせているのと同じだ」(P.68「第四章 どうしたら早く引退できるか?」)

会社員として働くことは、自分の時間を会社のレバレッジ、つまり会社の利益のために使っている状態だと言える。

また、銀行にただお金を預けているだけでは、そのお金は銀行によって融資などに活用され、銀行が利益を得るためのレバレッジとして使われてしまう。

金利が限りなくゼロに近い現代において、その恩恵はほとんどない。

若くして豊かになるためには、自分が他人のレバレッジになるのではなく、自らがレバレッジを最大限に活用する側に回らなければならない。

時間、知識、人脈、そして他人のお金。これらすべてが、あなたの経済状況を飛躍させるためのレバレッジとなり得るのである。

究極のレバレッジ「他人のお金」を使う思考法

レバレッジの中でも、特に強力で、多くの人が心理的な抵抗を感じるのが「他人のお金(OPM: Other People’s Money)」を使って資産を築くという考え方だろう。

私たちは幼い頃から「借金は悪だ」と教えられてきた。しかし、金持ちになる人々は、この借金を巧みに利用する。

中でも最大の違いは、金持ち父さんの次の言葉によく表れている。「貧乏な人や中流の人がなかなか金持ちになれないのは、彼らが金持ちになるために自分のお金を使おうとするからだ。金持ちになりたかったら、自分のお金ではなく、他人のお金を使って金持ちになる方法を知らなくてはいけない」(P.52「第三章 私はこうやって早期引退を実現した」)

これは決して、無謀な借金を推奨しているわけではない。

資産を生むための「良い借金」と、消費のための「悪い借金」を明確に区別することが重要である。

例えば、不動産投資の世界では、銀行から融資を受けて物件を購入するのが一般的だ。自己資金は頭金の一部にとどめ、残りは銀行融資、つまり他人のお金で賄う。

そして、その物件が生み出す家賃収入でローンを返済し、残りが自分の利益となる。

これは、他人のお金というレバレッジを効かせることで、自己資金だけでは到底買えないような高額な資産を所有し、そこから利益を得るという典型的な例である。

他にも、ビジネスの世界では支払サイトの時差を利用したり、付加価値を上乗せして商品を販売したりと、他人のお金や信用を活用する方法は無数に存在する。

この発想の転換こそが、資産形成のスピードを劇的に変えるのである。

あなたが目指すべき所得の種類とは?

レバレッジを理解する上で、所得の種類について知ることも極めて重要である。

ロバート・キヨサキは、所得を三つのカテゴリーに分類している。この分類を理解することで、自分がどの所得を得るために時間と労力を費やすべきかが見えてくる。

これまでの本の中でもお話ししたが、所得には次の三つの種類がある。
1.勤労所得…勤労所得はあなたがお金のために働いていることを意味する。多くの場合、この所得は給料という形で入ってくる。(中略)
2.ポートフォリオ所得…ポートフォリオ所得は一般に、株式や債券、投資信託などの「紙の資産」から入る所得を指す。(中略)
3.不労所得…不労所得は一般に、不動産から入る所得を指す。特許の使用料や、歌曲、著作、そのほかの知的財産から得られる印税もこの所得に含まれる。(P.106「第七章 仕事量を減らして収入を増やす」)

多くの人が頼りにしているのが「勤労所得」である。

しかし、金持ち父さんの教えでは、この勤労所得こそが最も効率の悪い所得だとされている。

その理由は明確である。

金持ち父さんにとって、せっせと働く対象として最悪な所得は勤労所得だった。その理由は四つある。
1.一番多く課税される所得で、しかも、税金の額や支払い時期に対して、本人のコントロールがもっとも効かない所得だから。
2.勤労所得を得るには自分自身がせっせと働かなければならず、そのために貴重な時間がとられるから。
3.勤労所得にはレバレッジがほとんど効かないから。この所得を増やすためにたいていの人がとる方法は、労働の量を増やすことだ。
4.労働に対する残存価値がない場合が多いから。つまり、価値が残らず、働いて給料をもらっても、また給料をもらうために働かなければならない。(P.107「第七章 仕事量を減らして収入を増やす」)

税金の負担が最も重く、自分の時間を切り売りしなければ得られず、レバレッジが効かず、働かなければゼロになってしまう。

これが勤労所得の本質である。もちろん、生活のために、そして資産形成の元手を作るために勤労所得は必要だ。

しかし、最終的な目標は、この勤労所得への依存から脱却し、ポートフォリオ所得や不労所得の割合を増やしていくことにある。

稼いだ勤労所得を消費に回すのではなく、不動産や紙の資産、ビジネスといった「資産」に再投資し、そこから新たな所得を生み出す。

このサイクルを確立することが、若くして豊かに引退するための王道なのである。

成功の方程式に「失敗」を組み込む勇気

資産形成やビジネスへの挑戦には、必ずリスクが伴う。

「失敗したらどうしよう」という恐怖が、多くの人の行動を縛り付けている。

しかし、ロバート・キヨサキは、失敗を避けるのではなく、むしろ成功のプロセスに不可欠な要素として捉えるべきだと説く。

この勝利の方程式は、失敗を含む方程式だ。金持ち父さんは新しく起こされたビジネスの九割が失敗することを知っていた。だが、それと同時に、十回のうちたった一回の成功から得られる見返りが、九回の失敗をはるかに上回ることも知っていた。(P.78「第五章 頭脳のレバレッジで現実を広げる」)

これは、ユニクロを展開するファーストリテイリングの創業者である柳井正(やない・ただし、1949年~)が語る『一勝九敗』の哲学と見事に一致する。

こちらの記事「柳井正『一勝九敗』要約・感想」もぜひ。

成功者は、失敗を恐れて何もしないのではなく、数多くの失敗を重ねることを前提に挑戦し続ける。

そして、たった一つの大きな成功が、それまでのすべての失敗を補って余りあるほどの利益をもたらすことを知っているのだ。

失敗は終わりではなく、貴重な学習の機会である。何がうまくいかなかったのかを分析し、次の挑戦に活かす。この試行回数の多さこそが、成功確率を高める唯一の方法と言える。

これは投資やビジネスに限った話ではない。人生のあらゆる局面において、失敗を恐れずに行動量を増やすことが、成長への最短距離となる。

大数の法則が示すように、試行回数を増やせば増やすほど、結果は本来の確率に収束していくのである。

金持ちへの道を照らす「プラン」の力

闇雲に行動しても、望む結果は得られない。

若くして豊かに引退するためには、明確な目的地と、そこへ至るための地図、つまり「プラン」が必要不可欠である。

ロバート・キヨサキが実践したプランは、驚くほどシンプルだった。

理論上は、どのレベルおいても私たちの基本的プランは単純だった。つまり、ビジネスを立ち上げ、不動産に投資する――ただそれだけだった。(P.144「第九章 あなたのプランは遅いか、速いか?」)

ビジネスでキャッシュフローを生み出し、そのお金を不動産という安定した資産に投下して、富を雪だるま式に増やしていく。

この基本戦略を、自身の状況に合わせて実行し続けたのである。

重要なのは、複雑なプランを立てることではなく、シンプルでも効果的なプランを定め、一貫して実行し続けることだ。

そして、良いプランを立てるためには、未来を見通す力が必要となる。

未来を予測する最良の方法の一つは、過去を学ぶことである。

未来のことを知りたい、理解したいという人に私が勧めるのは、ロバート・ハイブローナーの書いた『入門経済思想史 世俗の思想家たち』という本だ。過去を学ぶことによって未来を見ようとする人に、この本はとても役に立つ。(P.156「第九章 あなたのプランは遅いか、速いか?」)

経済の歴史を学ぶことで、イギリスのアダム・スミス(Adam Smith、1723年~1790年)、ドイツのカール・マルクス(Karl Marx、1818年~1883年)といった思想家たちが現代にどのような影響を与えているかを知ることができる。

歴史は繰り返すと言われるように、過去のパターンを知ることは、未来のトレンドを予測し、より精度の高いプランを立てる上で大きな助けとなる。

実際に、紹介されているロバート・ハイブローナー(Robert L. Heilbroner、1919年~2005年)の書籍『入門経済思想史 世俗の思想家たち』は、経済学の大家たちの思想を平易に解説しており、経済の大きな流れを掴むのに非常に有益な一冊だった。

こちらの記事「ロバート・L・ハイルブローナー『入門経済思想史 世俗の思想家たち』要約・感想」もご参考まで。

プランを立てたら、それで終わりではない。

定期的に自分自身の立ち位置を確認し、プランが正しく機能しているかを問い続ける必要がある。

若くして豊かに引退したいと思っている人にとって、一つの重要なステップは、静かに腰を下ろし、「今、私はどんなプラン、だれのプランに従っているか?」と自問することだ。
ほかに次のような質問をしてみるのもいいだろう。
1.私の人生の出口戦略はどんなものか?
2.私の言葉、考え方は速いか、遅いか?
3.今私はどの車線にいて、将来どの車線にいたいか?
4.今日私はどんな種類の所得のために働いているか? 明日はどんな種類の所得のために働きたいか?
5.安全を求めた場合、長期的に支払わなければならない対価は何か?(P.189「第十章 豊かな未来を見ることのレバレッジ」)

これらの問いは、自分の現在地と目的地を常に意識させ、軌道修正を促してくれる。

特に「安全を求めた場合の対価」という問いは重要だ。多くの人が求める安定した会社員の道は、一見安全に見える。

しかし、その安定と引き換えに、時間的自由や大きな富を得る機会を失っているのかもしれない。

常に自問自答を繰り返し、意識を高く保つことが、プランを着実に実行していく上で不可欠なのである。

富を築く土台となる「金融リテラシー」

ビジネスや投資の世界で成功するためには、その世界の共通言語を理解する必要がある。

それが「金融リテラシー」である。

専門用語を知らなければ、専門家と対等に話すことも、契約書の内容を正しく理解することも、適切な投資判断を下すこともできない。

だが、若くして豊かに引退したいと本気で思っているなら、むしろもっと基本的で、もっと重要な言葉の定義を知っている必要がある。そういう人が理解すべき、もっと基本的で、不可欠、重要な言葉の例としては、個人の財政における流動比率、当座比率、流動性比率、利益に対する負債比率などがある。もちろん、それ以外に資産と負債の違い、勤労所得、ポートフォリオ所得、不労所得の違いなどを知ることも必要だ。(P.192「第十一 一貫性のレバレッジ」)

流動比率、当座比率といった言葉に尻込みしてしまう人もいるかもしれない。

しかし、これらは企業の財務状況を判断したり、自分自身の家計の健全性を測ったりする上で非常に重要な指標である。

これらの金融用語を学ぶことは、羅針盤や海図の使い方を学ぶことに等しい。それなくして、資産形成という大海原に乗り出すのはあまりにも無謀である。

投資の世界も同様だ。

特に株式などの紙の資産を扱う上では、最低限の専門知識がなければ、市場の荒波を乗り越えることはできない。

市場がどんな状態でも儲け、自分の資産を守るために必要なのは、ファンダメンタル投資家とテクニカル投資家、両方の語彙を学び、正確に理解することだ。特に、紙の資産の場合はそうすることが大事だ。(P.325「第十七章 紙の資産のレバレッジ」)

ファンダメンタル投資(企業の業績や財務状況を分析する手法)と、テクニカル投資(株価チャートの動きを分析する手法)。

どちらか一方ではなく、両方の知識を身につけることで、より多角的な視点から投資判断を下せるようになる。

多くの人は、知らないこと、理解できないことを「危険だ」という一言で片付けてしまう。

しかし、その態度は、自らの成長の可能性を閉ざすことに他ならない。

平均的な投資家の多くは、「危険すぎる」の一言でこれらの大切な言葉を片付けてしまう。何かが「危険だ」と言うのは、「私は怠け者で、そのことを学ぶ気がない」と言っているのと同じかもしれない。(P.326「第十七章 紙の資産のレバレッジ」)

投資が危険なのではない。

無知なまま投資をすることが危険なのである。

不安を感じるのは、情報や知識が不足しているからに他ならない。

不動産、株式、法律、税制。これらの分野について学び、言葉を理解し、問題を細分化して分析する能力を身につけること。

それこそが、リスクを管理し、安全に資産を築くための最も確実な方法なのである。

具体的な資産形成のテクニック

本書では、精神論や思考法だけでなく、資産を増やすための具体的なテクニックも紹介されている。

その一つが、お金が増えるスピードを測るための簡単な計算式、「72の法則」である。

「72の法則」はお金のスピードを測るもう一つの方法だ。これは、利子、つまり一年で何パーセント増えるかをもとに測る。72の法則は、利子、つまり価値の増加率をパーセントで表した数字で七十二を割れば、元金が倍になるまでの年数、お金の相対的スピードが割り出せるというものだ。(P.288「第十五章 あなたのお金のレバレッジ」)

例えば、年利6%で運用できた場合、「72 ÷ 6 = 12」となり、元金が2倍になるまでにおよそ12年かかることがわかる。

もし年利1%の預金であれば、72年もかかってしまう。

この法則を知っていれば、どの投資対象がどれくらいのスピードで資産を増やしてくれるのかを直感的に把握でき、より効率的な運用を目指すことができる。

また、資産を増やすことと同じくらい重要なのが、損失を最小限に抑える「損切り」のルールである。

株価が十パーセント以上下がったら、私は損をそこで止めて売り払い、新しい株を探すことが多い。(P.290「第十五章 あなたのお金のレバレッジ」)

投資に絶対はなく、時には判断を誤ることもある。

その際に、損失が拡大するのをただ眺めているだけでは、大きなダメージを被ってしまう。

事前に「何パーセント下がったら売る」という自分なりのルールを決めておき、それを機械的に実行することが重要である。

これは、『財産告白』の著者としても知られる日本の林学博士、本多静六(ほんだ・せいろく、1866年~1952年)が、自身の投資ルールとして2割での損切りを推奨していたこととも通じる。

自分の判断ミスを認め、潔く損切りすることは、長期的に市場で生き残るために不可欠な技術なのである。

不動産投資で成功するための行動量の原則

ロバート・キヨサキが特に重要視する資産の一つが不動産である。

不動産は、税制上の優遇措置があったり、銀行融資というレバレッジを最大限に活用できたり、安定した不労所得を生み出したりと、多くのメリットを持つ。

しかし、良い物件に巡り合うのは簡単ではない。そこで重要になるのが、圧倒的な行動量である。

不動産を買う時、とても有効な戦略は「100:10:3:1」方式だ。つまり、百の物件を検討し、そのうちの十に買付申込をし、三人の売り手がそれでいいと言ったら、そのうち一つを買うということだ。言い換えると、物件を一つ買うには、百以上の物件を見て回らなければならないということだ。(P.302「第十六章 不動産のレバレッジ」)

この数字は、質の高い投資を行うためには、いかに多くの量をこなさなければならないかを示している。

たった数件の物件を見ただけで決めてしまうのは、あまりにも選択肢が少なすぎる。数多くの物件情報を収集し、現地を訪れ、比較検討し、交渉する。

この地道なプロセスを大量にこなすことで初めて、本当に価値のある「掘り出し物」を見つける確率が高まるのだ。

多くの人は、このプロセスを面倒に感じ、途中で諦めてしまう。その結果、理想とは程遠い物件を掴んでしまうことになりかねない。

金持ち父さんはこう言った。「たいていの人はカエルにキスをするのを避け、結局はカエルと結婚する」。(P.302「第十六章 不動産のレバレッジ」)

これは非常に示唆に富んだ言葉である。

童話『カエルの王様』のように、理想の王子様(優良物件)を見つけるためには、たくさんのカエル(並の物件)にキス(検討・交渉)をしなければならない。

その手間を惜しんで、最初に現れたカエルと安易に結婚(契約)してしまえば、後で後悔することになる。

成功者は、この「カエルにキスをする」という地道な作業の重要性を知っているのである。

そして、多くの成功者が最終的に富の保管場所として不動産を選んでいるという事実も見逃せない。

お金持ちの多くは不動産で金儲けをしたか、あるいは、ほかのことでお金を稼いだあと、その大部分を不動産にして保有しているかのどちらかだ。金持ち父さんの場合もそうだった。ビジネスと株式市場でたくさんのお金を儲けはしたが、それによって築かれた財産をとっておくための手段は不動産だった。(P.312「第十六章 不動産のレバレッジ」)

ビジネスや株式投資で得た利益は、時に不安定なものでもある。

それらの利益を、価値が安定しており、インフレに強く、実物資産として存在する不動産に換えておくことで、築いた富を安全に守り、さらに増やしていくことができるのである。

本書から学ぶべき本質と行動への転換

ここまで『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』の内容を解説してきたが、本書を読む上で一つ留意すべき点がある。

それは、本書のスタイルが、やや回りくどく、同じ概念が繰り返し語られる傾向にあることだ。

結論がなかなか見えなかったり、精神論的な側面に多くのページが割かれていたりすることに、もどかしさを感じる読者もいるかもしれない。

しかし、それは欠点ではなく、むしろロバート・キヨサキの意図の表れだと考えるべきである。

私たちの中に深く根付いている「お金のために一生懸命働くのが当たり前」という固定観念は、非常に強力だ。

その思考のブレーキを壊し、新しいパラダイムをインストールするためには、繰り返し、手を変え品を変え語りかける必要があるのだ。

本書の真髄は、小手先のテクニックではなく、「自分の器を大きくすること」「思考の限界を取り払うこと」にある。諦めずに学び続け、考え続け、そして行動し続けること。

そのためのマインドセットを構築することこそが、本書の最大の目的と言えるだろう。

最終的に、私たちの資産を形成するのは、不動産や株、ビジネス、あるいは商品といった具体的なものである。

私がもっと若かった頃、金持ち父さんは、資産に基本的に四つの種類があることを私が忘れないように、よくそれについて話してくれた。その四つの種類とは次のようなものだ。
1.不動産
2.紙の資産
3.ビジネス
4.コモディティ(商品)(P.361「第十八章 Bクワドラント・ビジネスのレバレッジ」)

これらの資産をどう組み合わせ、どう育てていくか。その戦略を描き、実行に移すのは、他の誰でもないあなた自身である。

『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』は、一度読んで終わりにする本ではない。

何度も読み返し、その都度自分の状況と照らし合わせ、新たな気づきを得るべき一冊だ。

この記事が、あなたが本書を手に取り、そして何よりも、経済的自由への第一歩を踏み出すきっかけとなれば、これ以上の喜びはない。

読書で得た知識を、ぜひ行動へと転換してほしい。

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