室生犀星『我が愛する詩人の伝記』

室生犀星の略歴

室生犀星(むろう・さいせい、1889年~1962年)
詩人、小説家。
石川県金沢市の生まれ。金沢市立野町尋常小学校を卒業。長町高等小学校を3年で中退。金沢地方裁判所に勤務。後に上京。本名は室生昭道(むろう・てるみち)。
代表作に『愛の詩集』『杏っ子』など。

『我が愛する詩人の伝記』の目次

北原白秋
高村光太郎
萩原朔太郎
釈迢空
堀辰雄
立原道造
津村信夫
山村暮鳥
百田宗治
千家元麿
島崎藤村
あとがき

『我が愛する詩人の伝記』の概要

2022年3月10日に電子書籍版が発行。ディスカバーebook選書。209ページ。

室生犀星と何らかの交流があった詩人たち11人を紹介する作品。伝記というよりも、詩人たちとの交流を描いた随筆に略歴の情報を添えたような構成。

もともとは、1958年に「婦人公論」に連載したもの。連載中に佐藤惣之助(さとう・そうのすけ、1890年~1942年)の遺族から抗議があり、佐藤の章は未収録。

1960年4月10日に中公文庫で第一刷が発行。1974年4月10日に新たに中公文庫で第一刷が発行。

詩人は以下の11人。

北原白秋(きたはら・はくしゅう、1885年~1942年)…詩人、歌人、作家。本名は北原隆吉(きたはら・りゅうきち)。熊本県玉名郡の生まれ。福岡県柳川市の育ち。福岡県立伝習館中学を卒業間際に中退。早稲田大学英文科を中退。代表作に『邪宗門』『桐の花』など。

高村光太郎(たかむら・こうたろう、1883年~1956年)…詩人、彫刻家、画家。本名は同じ漢字で読みの異なる高村光太郎(たかむら・みつたろう)。東京都台東区の出身。父親は彫刻家の高村光雲(たかむら・こううん、1852年~1934年)。共立美術学館予備科、東京美術学校彫刻科を卒業。ニューヨーク、ロンドン、パリを遊学。代表作に『道程』『智恵子抄』など。

萩原朔太郎(はぎわら・さくたろう、1886年~1942年)…詩人。群馬県前橋市の出身。群馬県師範学校付属小学校高等科を卒業、群馬県立前橋中学校を卒業。熊本の第五高等学校第一部乙類(英語文科)、岡山にある第六高等学校第一部丙類(ドイツ語文科)、慶應義塾大学予科を中退。代表作に『月に吠える』『青猫』など。

釈迢空(しゃく・ちょうくう、1887年~1953年)…詩人、歌人。本名は、折口信夫(おりくち・しのぶ)で民俗学者、国文学者。大阪府大阪市の生まれ。天王寺中学校、國學院大學国文科を卒業。

堀辰雄(ほり・たつお、1904年~1953年)…小説家。東京都千代田区の生まれ。牛島小学校を卒業。東京府立第三中学校4年修了で、第一高等学校理科乙類(ドイツ語)へ入学。東京帝国大学文学部国文科を卒業。代表作に『風立ちぬ』『聖家族』など。

立原道造(たちはら・みちぞう、1914年~1939年)…詩人、建築家。東京都中央区の生まれ。東京府立第三中学校、第一高等学校理科甲類、東京帝国大学工学部建築学科を卒業。

津村信夫(つむら・のぶお、1909年~1944年)…詩人。兵庫県神戸市の生まれ。神戸一中、慶應義塾大学経済学部を卒業。東京海上火災に勤務しながら詩作。父親は、経済学者で実業家の津村秀松(つむら・ひでまつ、1876年~1939年)

山村暮鳥(やまむら・ぼちょう、1884年~1924年)…詩人、児童文学者。本名は、土田八九十(つちだ・はくじゅう)。旧姓は志村。群馬県高崎市の生まれ。東京府築地の聖三一神学校を卒業。キリスト教日本聖公会の伝道師として布教活動をしながら詩作。

百田宗治(ももた・そうじ、1893年~1955年)…詩人、児童文学者、作詞家。本名は、読みは同じで漢字の異なる百田宗次。大阪府大阪市の出身。高等小学校を卒業。

千家元麿(せんげ・もとまろ、1888年~1948年)…詩人。東京都千代田区の生まれ。小学校、中学校等を転々とし、後に学業に興味を失うが、詩や短歌、俳句を投稿。武者小路実篤(むしゃのこうじ・さねあつ、1885年~1976年)と交流し、白樺派に属す。

島崎藤村(しまざき・とうそん、1872年~1943年)…詩人、小説家。岐阜県中津川市の生まれ。上京し、泰明小学校を卒業。三田英学校、共立学校を経て、明治学院普通部本科を卒業。代表作に『若菜集』『夜明け前』など。

『我が愛する詩人の伝記』の感想

田端文士村記念館に立ち寄って、再び室生犀星などの詩人たちに関心が向いた。

そんな折に、kindle unlimitedにあったので、この作品を読む。

自分の好きな高村光太郎や立原道造もいる。
さらに、北原白秋や萩原朔太郎、堀辰雄、島崎藤村など、多少知っている詩人たちも。

加えて、知らない詩人の勉強にもなると思った。

結論としては、とても楽しく読めた。

あとは、津村信夫と山村暮鳥に、非常に興味を持った。
さらに、深掘りしていこうと思う。

ちなみに、ディスカバーebook選書は、2021年に立ち上がったもので、電子書籍化されていない過去の作品を電子書籍化するシリーズ。

以下、引用しながら紹介。

小説は滅びて読まれなくとも、詩は滅びないということだけは私の永い生涯に、摑み得た真実であったのだ。(P.133「山村暮鳥」)

これは格好良い文章。たしかに、小説は時代を反映しやすく、また同時代では読まれたとしても、後世に読まれるとは限らない。

古典となるには、時代を超越しなければならない。その作品が良くても、後世に伝え続ける人や仕組みがなければならない。

また、ある種、詩は小説よりも上位のものであるとも言える。

例えば、百人一首や、その他の俳句なども残っている。

千年以上経てもなお。短いながらも、現在に通じるものがある。というよりも、人間の根本は変わらないというもの。喜怒哀楽など。

詩人は早く死んではならない、何がなんでも生き抜いて書いていなければならないのだ、生きることは詩を毎日書くことと同じことなのだ。(P.140「山村暮鳥」)

そのままの文意としても読める。

だが、これは反語的な現実的な意味がある。室生犀星の交流のあった詩人たちは、若く亡くなる人が多かった。

また室生犀星よりも相対的に若く亡くなっているという現実がある。その寂しさの表れでもある。

いままでに私は詩友数人の小伝を述説して来たが、その執筆の間に迫るものは、いつもしんしんたる死のはかなさ、避けがたさ、腹立たしさである。(P.143「山村暮鳥」)

先程の文章の真意を語っているような部分。

どうしようもない運命に対する憤懣が感じられる。

基本的には、非常に分かりやすく感情を抑えた文章で書かれているが、この部分は室生犀星の感情が迸っている気がする。

中原中也、宮沢賢治、中川一政の詩にも私は惹かれていたが、その個人の生活が不分明であり起稿は不可能であった。(P.205「あとがき」)

これは、読んでみたかった部分。

自分も中原中也(なかはら・ちゅうや、1907年~1937年)と宮沢賢治(みやざわ・けんじ、1896年~1933年)は大好きだから。

でも、ここでの記述は、直接的な交流が無かったという話だろう。資料とかを集めれば書けたと思うし。他の人々に関しては、何らかの交流があったエピソードが語られているから。

ちなみに、中川一政(なかがわ・かずまさ、1893年~1991年)は、洋画家、歌人、随筆家。

文章は基本的に読みやすい。たまに馴染みのない語彙も出てくるが。

また詩人の詩も出てきて、その中で読めないものも多々あった。言葉の勉強になる。

色々な詩をもっと読みたいと思う。取り敢えずは、津村信夫や山村暮鳥などを読み進めていこうと思う。

室生犀星をはじめ、書かれている詩人の数人に興味があれば、非常に楽しめるオススメの本である。

書籍紹介

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関連スポット

室生犀星記念館(石川)

室生犀星記念館は、生家跡に建つ室生犀星の文化施設。

実際に訪問したことがある。吹き抜けがあったり、庭があったり、とても上品な雰囲気の施設。

公式サイト:室生犀星記念館

室生犀星記念館(長野)

室生犀星記念館は、長野県北佐久間郡軽井沢町にある室生犀星の文化施設。春から秋までの期間限定で開館。入館料は無料。

公式サイト:室生犀星記念館

北原白秋記念館

北原白秋記念館は、福岡県柳川市にある北原白秋の文化施設。生誕百年の1985年に開館。

公式サイト:北原白秋記念館

高村光太郎記念館

高村光太郎記念館は岩手県花巻市にある高村光太郎の文化施設。彫刻や資料などが展示。高村光太郎が疎開し、戦後も過ごした場所。

公式サイト:高村光太郎記念館・高村山荘

智恵子の生家・智恵子記念館:高村光太郎

高村光太郎の妻・高村智恵子(たかむら・ちえこ、1886年~1938年)を記念する福島県二本松市にある文化施設。

高村智恵子は、洋画家、紙絵作家。旧姓、長沼(ながぬま)。福島県二本松市油井の出身。油井小学校高等科を卒業、福島高等女学校3年へ編入学し、総代として卒業。日本女子大学校家政学部を卒業。

公式サイト:智恵子の生家・智恵子記念館

前橋文学館:萩原朔太郎

前橋文学館は群馬県前橋市にある文学館。常設展示室として、朔太郎展示室がある。

公式サイト:前橋文学館

萩原朔太郎記念館

萩原朔太郎記念館は、群馬県前橋市にある萩原朔太郎の文化施設。

公式サイト:萩原朔太郎記念館

堀辰雄文学記念館

堀辰雄文学記念館は、長野県北佐久郡軽井沢町にある堀辰雄の文化施設。堀辰雄は、1944年から定住し亡くなるまで過ごした。

公式サイト:堀辰雄文学記念館

ヒアシンスハウス:立原道造

ヒアシンスハウスは、埼玉県さいたま市の別所沼公園内に2004年に建設された立原道造に関する展示などを実施する施設。ヒアシンスハウスは、立原道造が構想したもの。

公式サイト:ヒアシンスハウス

藤村記念館(岐阜)

藤村記念館は、島崎藤村の生まれた岐阜県中津川市にある文化施設。

公式サイト:藤村記念館

藤村記念館(長野)

藤村記念館は、長野県小諸市にある島崎藤村の文化施設。小諸義塾の教師として、1899年~1905年の約6年間を過ごした場所。

公式サイト:藤村記念館

旧島崎藤村邸

旧島崎藤村邸は、神奈川県中郡大磯町にある島崎藤村が晩年、1941年~1943年を過ごした場所。

大磯町観光情報サイト:旧島崎藤村邸