木下斉『地方創生大全』

木下斉の略歴

木下斉(きのした・ひとし、1982年~)
社会起業家。事業家。
東京都板橋区の出身。板橋区立志村第五小学校、早稲田大学高等学院を経て、2005年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業。2007年に一橋大学大学院商学研究科修士課程を修了、修士(経営学)。修士論文では産業論を研究。

『地方創生大全』の目次

はじめに
第1章 ネタの選び方 「何に取り組むか」を正しく決める
第2章 モノの使い方 使い倒して「儲け」を生み出す
第3章 ヒトのとらえ方 「量」を補うより「効率」で勝負する
第4章 カネの流れの見方 官民合わせた「地域全体」を黒字化する
第5章 組織の活かし方 「個の力」を最大限に高める
おわりに

『地方創生大全』の概要

2016年10月20日に第一刷の電子版が発行。東洋経済新報社。258ページ。

各章は、4~7つのテーマに分けられて、事例と解説がある。

『地方創生大全』の感想

以前からに興味を持っていた人物。何で知ったのかは忘れてしまったけれど。

kindle unlimitedにあったので読んでみた。

予想以上に面白かったし、知らないことも沢山あった。

つまり、絶対的な成功などはなく、成功と失敗を繰り返しながら、それでも決定的な失敗をせずに、どうにか上昇気流をつくり出していく日々の取り組みこそ、地域活性化のリアルです。(P.8:はじめに・メディアが取り上げる「地方の成功物語」の消費を疑え)

これはいろいろな人が言っていることだな。

ユニクロの柳井正(やない・ただし、1949年~)も似たようなことを書いていたような気もする。『一勝九敗』だったかな。むしろ小さな失敗から学ぶみたいな。

大きな失敗をしないように、小さな失敗から改善案を出して、地道な小さな成功を積み上げていく。

その後には、地味な取り組みなので、メディアには取り上げられないので、ニュースとして全国には知らされない、と。

そのため、成功事例は、多くの人が知ることはない。

また同時に、官民ともに地域政策に関与する人々の多くが、財務諸表すら読めない、つまり、お金の流れを理解していない、という指摘も。

どのような状況でも、やはりお金の勉強は大事である。

つまり、民間企業であるオガールプラザの運営会社と入居テナントが紫波町に家賃や固定資産税などを逆に支払っているのです。(P.125:第2章 モノの使い方 使い倒して「儲け」を生み出す・武雄市とは真逆の、オーガルの図書館の発想)

この文章の前には、佐賀県武雄市の「武雄市図書館」の話。

佐賀県武雄市が、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)にお金を払って図書館を運営してもらっているもの。

この武雄市図書館の事例は知っていた。でも、岩手県紫波町の事例は全く知らなかった。

あれか、やっぱり、地味な取り組みで、ニュースにならないからか。もしくはシンプルに自分のアンテナの感度が低いからかもしれないが。

佐賀県武雄市は、お金を支払っている。

岩手県紫波町は、お金を受け取っている。

一方は運営費・管理費を支払い、一方は家賃や固定資産税を受け取る。

しかも、岩手県紫波町図書館は、年間30万人以上が来場しているという。

地元の民間人のパブリックマインド、町長のリーダーシップなどなど、地域の人々の熱意、柔軟さ、計画性の高さか。

素晴らしいな。

盛岡や花巻には行ったことがあるから、次の機会には紫波町を訪れてみようと思う。

大手予備校の代々木ゼミナールは、20年以上前から、来たる少子高齢化による生徒数減少を想定し、ホテルや高齢者住居への転用などを想定して自社ビルを建てていました。(P.134:第3章 ヒトのとらえ方 「量」を補うより「効率」で勝負する・国民を移動させる前に、自治体経営の見直しを)

これも全く知らなかった。頭良いいな、とは思ったけれど、当たり前の人口動態か。ただ予測は出来ても、それに対して実際に行動して、布石を打っているのが凄い。

さらに人口の問題点を指摘する。つまり、人口は増加し過ぎても、減少し過ぎても、問題になる。

明治維新後の日本は、人口の激増で重要なテーマとして問題になっていたという。

人口が減少した時、人口が増加した時、それぞれの課題において、上手く対処していきたい。

プロジェクトを任されたチームが、最初の段階で大事な撤退設定についての議論が起こせないような空気感に覆われている場合、<中略>、状況を客観的かつ冷静に議論・判断できない環境にあることを意味します。(P.206:第5章 組織の活かし方 「個の力」を最大限に高める・撤退戦略を設定していな場合の「2つのリスク」)

上記は、2つ目のリスクの部分。

客観的で冷静な判断が出来ないということは、最初から「そもそも失敗しやすい」というリスク。

ちなみに、1つ目のリスクは「失敗したときの傷が深くなる」。つまり、大きな失敗になってしまう。プロジェクトそのものが消滅してしまうことも。

そのため、最初から撤退戦略を考えて、撤退ライン、リスク許容範囲、コストの限度を設定しておく。

これは、ビジネスだけではなく、私生活でも大事だと思うな。

この第五章は、なかなか面白いテーマについて書かれている。

事業を始めようとすると、地元の一部から「聞いていない」や「プロジェクトを潰してやる」と言われる事もあるとか。

「情緒的な意思決定」と、失敗の「情緒的な寛容・許容」によって、原因・結果、改善・対策などが実行できないとか。

若者、女性といった属性に関するステレオタイプな勝手なイメージの問題とか。

興味深い事項が扱われていて、どんどん読み込んでしまう。フランクな文章で読みやすいというのもあるかもしれない。

どんな地域でも似たような人間、感性、思考の人がいるんだな。やり切る力や、いなす力、聞く力、説得する力など、諸々と合わせ持つ必要がありそうだ。

というわけで、地方創生に興味のある人には非常にオススメの本である。

書籍紹介

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オガール

岩手県紫波郡紫波町で実施されている公民連携のプロジェクト。図書館に加えて、カフェ、居酒屋、学習塾、クリニックなどが入居。

公式サイト:オガール