上阪徹『職業、ブックライター。』

上阪徹の略歴

上阪徹(うえさか・とおる、1966年~)
ブックライター。
兵庫県の生まれ。早稲田大学商学部を卒業。リクルート・グループを経てフリーランスのライターとして独立。

『職業、ブックライター。』の目次

はじめに
第1章 ブックライターの仕事はこんなに楽しい~仕事のスタイル
第2章 ブックライターの仕事のパートナー~出版社・編集者との関係作り
第3章 素材が七割、書くのが三割~企画と取材
第4章 「二五〇枚を一本」ではなく「五枚を五〇本」~目次を作る
第5章 毎月一冊すらすら書く技術~書き方と時間管理
第6章 ブックライターとして生きていくには~仕事に向かう心構え
おわりに 人間としての大きな成長をもたらしてくれる仕事

『職業、ブックライター。』の概要

2014年1月1日に第一刷が発行。講談社。190ページ。

副題は「毎月1冊10万字書く私の方法」。

『職業、ブックライター。』の感想

ブックライターの仕事の内容に興味を持ったのと、プロのブックライターの技術を知りたいと思ったので、評価も高いこちらの『職業、ブックライター。』を購入。

ページ数も少なく、文章も読みやすいので、あっさりと読み終える事が可能。構成も明確。流れも分かりやすい。具体性も高い。

そりゃそうか、プロのブックライターが書いているのだから。

お手伝いした本は、「執筆協力」「構成」「編集協力」などの形で、本のどこかで名前を出してもらっていることがほとんどです。(P.6「はじめに」)

「執筆協力」、「編集協力」とかは知っていたけれど、「構成」とかもブックライターの手伝いだったのか。

ブックライターといっても構成にも関わっているからといった感じか。それぞれの違いは、比重の問題なのか、関係してくる人たちの違いなのか。

また、その後にはブックライターに必要なものは、文章力よりもまず、取材力、編集力、構成力といったような話も。

ブックライターであれば、当然のこと、文章力は必須。そこでは差がつかない。そこに、取材力、編集力、構成力が加わる。

取材力は、「ヒアリングできる力」のこと。

編集力は、「大量の情報から必要な情報を整理」すること。

構成力は、「的確な情報を的確な順番で伝える」こと。

といったまとめになる。

これも講演などで語っていますが、この一五年で四億円以上は売上を出しています。(P.35「第1章 ブックライターの仕事はこんなに楽しい~仕事のスタイル」)

年間の平均の売上が、2,600万円くらい、ということになる。

実際の手取りというか、経費を除くとどれくらいだろうか。まあ、それでも、2,000万円くらいか。

しかも、著者の仕事の方法から見ると、物凄い忙しいという感じではなく、自分の能力にあったスタイルで、計画的にこなしているようだ。

私自身はここ数年、自分の本を出したときには、編集者や出版社の営業担当者と一緒に書店を回らせてもらうことにしています。売り場の担当者にご挨拶をしたり、直筆のサイン入りポップをお持ちしたり。(P.49「第2章 ブックライターの仕事のパートナー~出版社・編集者との関係作り」)

やはり、しっかりと本屋さんへの営業を直接している。この辺りは、とても大事なんだろうな。

売り場の担当者への挨拶、直筆のサイン入りのポップ。このように文章にしているということは、他のブックライターは、ここまでやっていないという話か。

主要都市の本屋だけでも、交通費や宿泊費、時間や労力もそれなりに掛かるが、それ以上のものが得られるということだろう。特に、関係性ということか。

また、編集者に関しての考察も。編集者は自分から見つけて近づいてきたいという性格が多いようだ。

編集者に近寄るのではなく、編集者に近寄ってもらえるようにする。出版に興味がないような素振りすら見せるのが重要だとか。今ならSNSで発信を継続させる感じか。

なかなかこの辺りも面白い。

これまでの経験からすれば、おおむね、企画がスタートしてから刊行まで七、八ヵ月くらいのものが多い印象があります。打ち合わせがあり、取材をして、原稿を書き上げた二、三ヵ月後に本が出るイメージです。(P.56「第2章 ブックライターの仕事のパートナー~出版社・編集者との関係作り」)

だいたい、企画から発売までが、7~8カ月くらい。打ち合わせと取材、原稿作成で5カ月。その後に、表紙カバー等のデザインや印刷、製本、流通で、2~3カ月。

先程は、売上の数字が出ていたが、このようなザックリとした時間の配分や流れも分かるのが有り難い。

その他に、印税で収益がカバーできない場合には、企画料や編集料の形で上乗せしてもらえないかの打診もするとのこと。

やはり、ある程度の交渉力は必要だな。

ただ、ゴリ押ししないで、可能であったら嬉しいくらいのスタンスだとか。

どのように取材をするか、さまざまな方法がありますが、私が最も数多く経験しているのは、二時間程度のインタビューを五回ほど行わせてもらうことです。合計一〇時間。(P.78「第3章 素材が七割、書くのが三割~企画と取材」)

2時間✕5回のインタビュー。合計10時間で、一冊の本を仕上げるのか。

確か取材の時には執筆はほぼしないで、後からテープ起こしをもらうと言っていた。この辺りの役割分担というか仕組みも効率が上がる部分だろう。

最近では、テープ起こしサービスというか文字起こしのアプリもあるから随分、楽だと思うけれど。

取材の時に執筆はほぼしないというのは驚いた。

自分の場合はブックライターではなく、シンプルなライターなので、異なると思うが、インタビューの録音をしないで、ひたすらに執筆というか、要約しながらメモを記載していくから。

これは、目的の違いが大きいか。

また服装は基本的にスーツで行くというのも同じだった。

「本を一冊書くなんて、大変でしょう」と言われることがあります。四〇〇字詰め原稿用紙に換算すると、おおよそ一冊で二五〇枚から三〇〇枚の原稿が必要になります。(P.105「第4章 「二五〇枚を一本」ではなく「五枚を五〇本」~目次を作る」)

一冊の本は、10万字から12万字で出来上がる。なるほど、それくらいの文量で本が仕上がるのか。

こういった具体的な数字の情報とかも普段あまり耳にしないから新鮮である。

さらに次の章では、著者である上阪徹の執筆量についての記述も。

丸一日、書籍にあてることができれば、四〇〇字詰め原稿用紙換算で一気に六〇枚から七〇枚、多いときには一〇〇枚以上書いてしまいます。掛けることの四〇〇字ですから、一日二万四〇〇〇文字から四万文字。(P.140「第5章 毎月一冊すらすら書く技術~書き方と時間管理」)

1日で24,000字から28,000字が通常。多い時には、40,000字を書き上げるという。

これは、かなりのハイペースだと思うけれど。

既に編集も構成も仕上がっていて、ほぼ文字を打ち込んでいくという感じならば理解できるけれど。

あるいは、文字起こしのデータを編集していくスタイルなのか。

文字起こしのデータを脇に置いて新たに書いていくのか。

そこまで具体的な話は書かれていなかったので気になるところ。

というか、自分ではそこまでのスピードでは書けない。かなり気合いを入れて、一日に10,000字くらいかな。

「第6章 ブックライターとして生きていくには~仕事に向かう心構え」では、めっちゃ当たり前のことが書かれていた。

きちんと取材をして、目次を作って、スケジュールを守って、執筆しましょう、みたいな。

ただこのように書かれているというのは、やはりそこまでする人が少ないということか。

でも、そういう人物でもブックライターの仕事にありつけるというのも凄いけれど。

確か、プロインタビュアーの吉田豪(よしだ・ごう、1970年~)の『聞き出す力』でも、仕事に関して、めっちゃ当たり前のことが書かれていたような気がする。

閑話休題。

というわけで、ブックライターに興味のある人、文章を書く仕事に関心のある人には非常にオススメの本である。

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