『マイクロソフトCEO バルマー 世界「最強」の経営者』フレデリック・アラン・マクスウェル

フレデリック・アラン・マクスウェルの略歴

フレデリック・アラン・マクスウェル(Fredric Alan Maxwell、1954年~)
アメリカの作家。
アメリカのミシガン州デトロイト生まれ。アルビオン大学、ミシガン大学、ジョージタウン大学、スタンフォード大学などで学ぶ。

スティーブ・バルマーの略歴

スティーブン・アンソニー・バルマー(Steven Anthony Ballmer、1956年~)
アメリカの実業家。マイクロソフトの元最高経営責任者。
アメリカのミシガン州デトロイト生まれ。ハーバード大学で数学と経済学の学士号を取得し卒業。P&Gで2年務めた後に、スタンフォード大学経営大学院に入学、後に中退し、マイクロソフトに入社。

『マイクロソフトCEO バルマー 世界「最強」の経営者』の目次

はじめに
第一部 磨かれた才能
第一章 学校一の秀才
第二章 ビル・ゲイツとの出会い
第二部 ベンチャーの躍進
第三章 有能な人々
第四章 マイクロソフトの快進撃
第五章 ウィンドウズ、ついに登場
第三部 世界企業への道
第六章 バルマーの最強軍団
第七章 サバイバルゲームの勝者
第八章 ウィンドウズ95!
第九章 逆境
第一〇章 反トラスト法裁判
第一一章 マイクロソフトの危機
第一二章 史上最大の反撃作戦
第一三章 シアトルに昇った太陽
第一四章 マイクロソフトにどんな未来が待っているか?
訳者あとがき

概要

2003年1月30日に第一刷が発行。イースト・プレス。284ページ。ハードカバー。127mm×188mm。四六判。

マイクロソフトを創業したビル・ゲイツの右腕であるスティーブ・バルマーの半生が描かれた作品。その生い立ちからマイクロソフトでの活躍。その影と光を照らしたノンフィクション。

奥付を見ると、題名は『マイクロソフトCEO バルマー』で、副題が“世界「最強」の経営者”となっている。

原題は『BAD BOY BALLMER : The Man Who Rules Microsoft』。2002年9月17日に発行。

最初は、スティーブ・バルマーの半生が描かれているが、後にマイクロソフトの歴史と重なっていく。半分以上はマイクロソフトの歴史といった感じでもある。

マイクロソフトということで、もちろんビル・ゲイツ(William Henry “Bill” Gates III、1955年~)も登場する。

訳者は、遠野和人(とおの・かずと、1947年~)で東京外国語大学を卒業している人物。

感想

ルーム・トゥ・リードの創設者であるジョン・ウッド(John Wood、1964年~)の『マイクロソフトでは出会えなかった天職』

コンピュータ技術者である中島聡(なかじま・さとし、1960年~)の『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』

この二つの本にも登場してくる人物がスティーブ・バルマー。

上記の二人は、もちろん、マイクロソフト出身者である。

特に、ジョン・ウッドは、スティーブ・バルマーの影響を受けたというエピソードも。

そういった流れで、スティーブ・バルマーに興味を持ち、この『マイクロソフトCEO バルマー 世界「最強」の経営者』を買って読む。

なかなかの内容で面白かった。

頭が良い。数学が秀でている。プログラミングの知識もある。

そして何よりも、力強いアメリカ的な社交性とコミュニケーション能力とリーダーシップ。

ゲイツが頭脳・技術屋、バルマーが頭脳・交渉人といった感じか。

ホンダで言えば、ビル・ゲイツが本田宗一郎(ほんだ・そういちろう、1906年~1991年)で、スティーブ・バルマーが藤沢武夫(ふじさわ・たけお、1910年~1988年)か。

まぁ、どちらも飛び抜けた頭が良いことは分かる。
ただ、ビル・ゲイツは、学生時代はそこまで成績は良くなかったぽい。

あとは、ビル・ゲイツは裕福な家庭の出身、スティーブ・バルマーは移民二世で中流もしくは下流の家庭の出身。

この辺りも二人の人間関係のバランスが良かったか。

にしても、マイクロソフトの営業方法というか、市場に対する姿勢の悪どさを感じる。

ビジネスとしては、正しいのかもしれないけれど、道徳や倫理としてはどうなんだろう。

ビル・ゲイツが慈善家として活動しているのも、その反動としてのバランスを取るためなのか。

もしくは、マーケティングの一環として、ビジネスの悪名高さを少しでも弱めるためなのかと疑ってしまうくらい。

最初は、スティーブ・バルマーの生い立ち。残りの6割~7割くらいは、マイクロソフトのこれまでの軌跡といった感じか。2001年くらいまでの。

ちょうど、反トラスト法の判決というか和解というか、結末に至るくらいで、アメリカ同時多発テロ事件が発生。
のちにWindows XPの販売も。

マイクロソフトが分割、解体されるかの瀬戸際で、歴史的事件が発生。その影響も大きかったのだろう。

まぁ、ビジネス戦略としては、ゲーム理論などを含めて参考になる部分もあった。

以下、引用を少しだけ。

バルマーは、コールドスナップ・フリーザーデザート・ミックスを売り出す仕事も手がけたが、無残に失敗した(バルマーは、用意周到に練られた計画でも失敗に終わるときがあることを肝に銘じるために、今でもマイクロソフトの自分のオフィスの壁にそのミックスのラベルを額に入れて飾っている)。(P.52「第三章 有能な人々」)

これは、かなり印象的な教訓である。

非常に頭が良くて、マーケティングも上手くいくであろうスティーブ・バルマーでも失敗することがある。

また、さらにそれをしっかりと忘れないために、常に意識できるように、額に入れて飾っているという謙虚さというか、堅実さ、自己反省。

スティーブ・バルマーの人間性の表れでもある。

ただ、この著作では作者の目線は、スティーブ・バルマーやビル・ゲイツという人物たち、またマイクロソフトという企業に対しては、相当冷めた、厳しいものである。

割りと批判的に書かれている部分も多数。

著者がスティーブ・バルマーと同郷のミシガン州デトロイト生まれというのもポイントかもしれない。

ゲーム理論の骨子となっているのは、ゲームをする人間が少なければ少ないほど勝つことがより簡単になるという単純な事実だ。ほかのヨットを沈めることでヨットレースに勝つようなものだ。ゲーム理論はマイクロソフトのビジネス戦略の要であり、富の源泉だった。(P.77「第四章 マイクロソフトの快進撃」)

ビル・ゲイツもスティーブ・バルマーも、ハーバード大学の数学の授業で、ゲーム理論を学んでいる。

その理論を、そのまま、マイクロソフトのビジネスに応用している、という著者の指摘である。

競技参加者が少なければ、競技に勝ちやすい。

そうであるならば、参加者を少なくすれば良い。参加者を競技不能にしてしまえば良い。

分かりやすいけれど、かなり恐ろしい感じではある。

具体的には、周辺や競合の企業を懐柔というか、情報を盗んだり、自分たちの有利な状況になるように、交渉を引き伸ばしたり。

対外的に問題ないというアピールをしたり。かなり強引である。

実際には、マイクロソフトのサービスを色々と利用しているが、マイクロソフトに対しての考え方や見方が、ちょっと変わったかも。

スティーブ・バルマーという人物や、マイクロソフトという企業に興味のある人には非常にオススメの作品である。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

ハーバード大学:スティーブ・バルマー

ハーバード大学(Harvard University)は、アメリカのマサチューセッツ州ケンブリッジにある1636年設立の総合私立大学。

スティーブ・バルマーは卒業しているが、ビル・ゲイツは中退している。

公式サイト:ハーバード大学

スタンフォード大学経営大学院:スティーブ・バルマー

スタンフォード大学経営大学院(Stanford Graduate School of Business)は、アメリカのカリフォルニア州にあるスタンフォード大学のビジネススクール。1925年に設立。

スティーブ・バルマーは、ビル・ゲイツにマイクロソフトへの入社を誘われて、スタンフォード大学経営大学院を9カ月で中退。

公式サイト:スタンフォード大学経営大学院