板坂元『何を書くか、どう書くか』

板坂元の略歴

板坂元(いたさか・げん、1922年~2004年)
日本文学者、評論家。
中国南京の生まれ。東京大学文学部国文科を卒業。専攻は江戸文学。
ケンブリッジ大学、ハーバード大学で教鞭を執る。

『何を書くか、どう書くか』の目次

まえがき
プロローグ――私の文章修行
第1章 何を書くか
1 テーマを決める
2 計画を練る
第2章 読み手に近づく
1 読み手の性格を知る
2 読み手に訴える方法
第3章 アイディアを製造する
1 頭脳を刺激して考える
2 頭脳を静止させて考える
第4章 材料を活かす
1 データを集める技術
2 データを整理する技術
第5章 文章を設計する
1 アウトラインを描く
2 データの上手な使い方
第6章 文章をつくる
1 「書き出し」の方法
2 段落の作り方
3 読み直しのチェック・ポイント
第7章 ライフ・スタイルを創る
1 一日の生活設計
2 私からの六つの提案
あとがき
文庫版のためのあとがき

『何を書くか、どう書くか』の概要

1997年1月20日に第一刷が発行。PHP文庫。252ページ。

1980年5月に光文社から刊行されたものを、PHP文庫で改めて出版。副題は「知的文章の技術」。

つまり、上手な文章を書くためには「書き方」だけでなく、「考え方」の修行もしなければならないのだ。文章の「考え方」とは、合理的に物を考え、合理的に知識を整理し、そして、合理的に文章を組み立てていく方法のことである。(P.3「まえがき」)

本書の主旨となる部分を明確に「まえがき」で記述。書き方とは、言葉遣いや文法など。

考え方とは、文章を書く前から始まる物の捉え方、情報の収集や整理、分かりやすく文章を組み立てる方法など。

いろいろと調べると、考え方や書き方にルールがあることが分かった。それをまとめたものが本書だという。

コツは、集中的に徹夜をしたり、一日十何時間といったことはしないで、一定時間ずつ毎日机に向かうことだ。私だけでなく、周囲を見回してみて、イキの長い仕事をしている人は、ほとんどそういった規則正しい生活を送っている。(P.47「第1章 何を書くか」)

ここでは、書くことが決まった場合のスケジュール管理の方法の助言。

毎日、地道にコツコツと実行できるようにすると、最終的には長期間に渡った素晴らしい仕事が可能であるという。

また他のポイントとしては、失敗の可能性ををできるだけ少なくする、というもの。

毎日、少しでも良いから作業をして、何もしない日をつくらいない。日々の業務を淡々と続けて、習慣化させるという方法。

誰かをインタビューするとしよう。その際、前もってたくさんの質問を用意するが、その質問のうち六十パーセントは、すでに調べがついて、聞かなくても答えがわかってしまっているものでなければならない。答えがわかってしまえば、質問するまでもないではないか、ということになるけれども、それくらい予備知識がなければ、インタビューは成功しない。これが「ライアンのルール」だ。(P64「第2章 読み手に近づく」)

アメリカ人ジャーナリストのコーネリアス・ライアン(Cornelius Ryan、1920年~1974年)が書き残したインタビューの際のルールを紹介。

さらに、相手のお気に入りの質問をするのも大切とも。そして、文章を書く時も同様であると。読み手のことを60%くらい知ってからでないと、満足度の高い文章は難しいという。

続く文章では、イギリスの女優であるヴィヴィアン・リー(Vivien Leigh、1913年~1967年)が、全く何も知らない新聞記者からの初歩的な質問を受けて、突っぱねたというインタビューの失敗の事例。

加えて、逆側の成功例として、アメリカの俳優であるジェームズ・ディーン(James Dean、1931年~1955年)は、インタビューを受ける時に、記者の人物像や過去の記事を前持って調べておき、その記者の好みに合わせて、自分のイメージを作り上げたという逸話も。

普通、資料は三つの情報源から得なければならない。どんなに信用できると思っても、一つの情報源だけでは危ない。とくに、主観的判断のおこりやすい場合は、三カ所からデータを得れられなければ、使うべきではない。これが三点法である。(P125「第4章 材料を活かす」)

情報を集める時に、間違ったデータも一緒になってしまうことがあるかもしれない。そのため、一旦集めたデータについて確認が必要となる。

それぞれ異なる情報源をチェックする。三カ所からデータを取って正しければ安心という話。百科事典なども、三種類を使うと良いという具体的なアドバイスも。

正しい事実の積み上げというのが、とても大切だということ。

つぎの日に頭が働きはじめるのは、書きさしがうまく行った日だ。何でもないことのようだが、大事なコツとしておすすめする。
また、それだけではなく、「ついでだから」と時間延長をするのも、規則正しい生活を乱すことになる。(P.220「第7章 ライフ・スタイルを創る」)

書きさし、つまり、書きっぱなしの途中で止めてしまった方が、次の日に上手く始めやすいという作業の中断・継続方法。

前の文章の流れが、適度な推進力となって、文章を再開させやすいという。

キリの良い所では、区切りがついてしまっているので、そこから自力で動き出さなければならない。中途半端な部分で、止めてしまった方が、始めやすい。

また後半では、気分が乗ったり、元気が出ていたりするからといって、時間を延長してはいけないとも。

長期的な視野で見ると、規則正しい生活が絶対条件なので、リズムを崩してはいけないと。

『何を書くか、どう書くか』の感想

多分、初めて読んだのは『考える技術・書く技術』で、そこから板坂元の本をいろいろと漁っていくようになった。

今回の書籍も、具体的で分かりやすい方法が各種、掲載されている。日本人だけではなく、海外の偉人たちの具体例も多い。

「文庫版のためのあとがき」に記述があるが、執筆の時に約200冊のアメリカの文章技術の本を参考にしたとのこと。

さらに板坂元の実体験も加えられているとなれば、納得の内容である。

本の構成も明確で、テーマ決めから文章を書くこと、さらにライフ・スタイルまで、言及していく。順番通り読んで、実践すれば、素晴らしい文章が書けるはず。

文体は柔らかく、読みやすいので、すんなりと進んでいける。

ここで紹介されている方法で、自分に合うものを選んでいけば、独自にアレンジした最適な文章の書き方ができるかもしれない。

私も毎日少しずつでも良いので、さまざまな物事を継続して成果を出していきたいと改めて思った。

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