山下清の略歴
山下清(やました・きよし、1922年~1971年)
画家。
東京都台東区の生まれ。千葉県市川市の八幡学園で“ちぎり絵細工”を知る。1938年に東京都中央区銀座の画廊で初個展を開催。後に“日本のゴッホ”や“裸の大将”と呼ばれる。
『山下清のすべて』の目次
日本全国を歩いた放浪画家の眼
山下清 心の風景
人物伝
いまだ旅をつづける山下清の生涯
野に咲くたんぽぽの綿毛のように
創造力の源泉はどこにあるのか?
山下清の才能を開花させた人々
在りし日のさまざまな面影にふれる
私のなかで生きている清さん
海を渡ってぶらりぶらり
清画伯、ヨーロッパを歩く
素描画が語る懐かしい風景
新東京十景
日記から味わう放浪画家の表現力
裸の大将、ひとりごと
『山下清のすべて』の概要
2000年8月10日に第一刷が発行。サンマーク出版。215ページ。ソフトカバー。148mm×210mm。A5判 。
山下清の生涯や周辺の人々の証言など、山下清のすべてを包括的にまとめた作品。山下清の代表作などがカラーで掲載されているのも大きな特徴。
副題は「放浪画家からの贈りもの」。
著者は以下の二人。
樽谷哲也(たるや・てつや、1969年~)…東京都生まれ、千葉商科大学商経学部商学科を卒業。雑誌社勤務を経たフリーのライター。
平島正夫(ひらしま・まさお、1937年~)…兵庫県生まれ、東京外国語大学フランス語学科を卒業。日本映画新社勤務を経たノンフィクションライター。
「山下清 心の風景」は、5~32ページで、山下清の代表作がカラーで掲載。
「清画伯、ヨーロッパを歩く」は、153~177ページで、ヨーロッパを題材にした作品がカラーで掲載。
「新東京十景」は、178~184ページで、東京を題材にした素描画が掲載。
ザックリと全体の20%くらいの割合が作品。その他に合間合間で、山下清の写真や交流のあった人物たちの写真も載っている。
『山下清のすべて』の感想
テレビドラマ「裸の大将放浪記」を再放送か何かで観ていた記憶がある。
そのようなことから、ずっと気になっていた人物。
長野県に山下清の記念館である放浪美術館があると知り、訪問。非常に楽しめた。
その後に山下清の著作というか放浪記というか日記的な文章の、『日本ぶらりぶらり』と『ヨーロッパぶらりぶらり』を読む。
そして、この『山下清のすべて』を手に取る。
とても素晴らしい書籍であった。
巻頭は、カラーで山下清の代表作品群。続いて、山下清の半生。亡くなる直前辺りの話から。
中盤で、山下清の周辺の人々。この方々が本当に素晴らしい人達。
自分が知らないだけで、それなりに有名な人達だったようだ。
確かに山下清は天才的な画家であった。また皆に愛される人柄でもあった。
ただ周りの人達にも非常に恵まれていた事も確かである。その人達の影響が大きかった事が理解出来る。
以下が、その人物たち。
久保寺保久(くぼでら・やすひさ、1891年~1942年)…山下清が在籍していた八幡学園・初代園長。
久保寺光久(くぼでら・みつひさ、1920年~1943年)…山下清を直接指導した八幡学園・園長。久保寺保久の長男。
渡辺実(わたなべ・みのる、1908年~)…山下清に絵の楽しさを教えた八幡学園主事。
式場隆三郎(しきば・りゅうざぶろう、1898年~1965年)…山下清を世に送り出した精神科医。
堀川恭(ほりかわ・やすし、1927年~)…山下清に油絵を描く機会を与えた彫刻家。久保寺保久の実弟。
戸川行男(とがわ・ゆきお、1903年~1992年)…山下清の心理を研究した学者。
安井曽太郎(やすい・そうたろう、1888年~1955年)…山下清の作品を『特異児童作品集』に選んだ画家。
生年等は、この作品の情報を基に記載。
この人達が本当に凄い。教育とは芸術とは人生とは、といった感じである。
その後には、舞台やドラマ、テレビ番組などで山下清と接した事のある芸能人たちによるエピソード集。
再びカラーの作品群。そして、山下清の著作からの引用。で終わり。
構成も、練られていて、スムーズに読む事ができた。傑作と言っても良いくらいの著作と感じた。
山下清のファン、山下清の作品を何となく知っている人、山下清について知りたい人などには、非常にオススメの作品。
書籍紹介
関連書籍
関連スポット
放浪美術館
長野県茅野市にある山下清の美術館。山下清は夏になると涼しい信州に訪れ、諏訪湖の花火を見物していたことから、この地に美術館が建造された。
実際に訪れたことがあるが、木造建築の美術館で雰囲気がある。所蔵品も豊富で充分に楽しめる内容。係員の人が親切で、色々と展示品の説明をしてくれた。山下清に関連するエピソードなども聞けるので面白い。ファンであったり、ちょっとでも関心があれば、オススメの観光スポットである。
公式サイト:放浪美術館