『限界を突破する「学ぶ技術」』羽根拓也

羽根拓也の略歴

羽根拓也(はね・たくや、1966年~)
人材育成プロデューサー。
奈良県の出身。同志社大学文学部社会学科を卒業。日本の塾や予備校で指導後に渡米。
サスクェハナ大学、ペンシルベニア大学、ハーバード大学で日本語講師として教鞭をとる。

『限界を突破する「学ぶ技術」』の目次

はじめに
序章
私たちは本当の「学び方」を知らない
1章……[思考力のトレーニング]
この「アタマの使い方」が、成長を呼ぶ
2章……[感情のトレーニング]
感情エネルギーに火をつけろ!
3章……[行動力のトレーニング]
すべての解決メソッドは、いつもあなたの目の前にある
4章……[自分力のトレーニング]
限界をつくるのも、乗り越えるのもあなた自身
5章……[対人力のトレーニング]
「他人」を活かして成長する
6章……[組織力のトレーニング]
成長する組織に共通するもの
おわりに

概要

2004年11月25日に第一刷が発行。サンマーク出版。221ページ。ソフトカバー。127mm×188mm。四六判。

成長するための「学ぶ技術」を学ぶためのトレーニングについてまとめられた作品。思考力、感情、行動力、自分力、対人力、組織力などに分けて、それぞれ解説。

副題は“いまの自分に満足できないあなたへ”。

「はじめに」の冒頭で、「人間にとって最も重要な能力は、学び、成長する力である」という風に、この著作のテーマを明確にしている。

理論や技術を紹介するのではなく、その考え方や姿勢について重きを置いた内容。

感想

自分自身が学びたいという欲望を持っている。

また過去には社会人として、塾の講師や家庭教師などをしていたこともある。

そのため、学習方法や指導方法などには、昔から関心を抱いている。

そのような折に出合ったのが、この『限界を突破する「学ぶ技術」』である。

国内のみならず、海外でも指導経験のある著者が書いたもの。

「はじめに」でも明記されているように、具体的な理論や技術の紹介はない。

ただ関連したエピソードは非常に具体的なので読みやすく、ちょっとしたアドバイスも豊富である。

正確には、考え方や学び方の引き出しを多くするための著作といった感じだろうか。

日々の考え方や学び方の参考になる内容である。

以下、引用などを含めながら紹介。

ある日「茶道とは何か教えてください」と尋ねてくる者がいた。その者に対し利休はこう答えたという。

「茶は服のよきように点て、炭は湯の沸くように置き、冬は暖かに夏は涼しく、花は野にあるように生け、刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客に心せよ。この七則が全てです」(P.19:序章 私たちは本当の「学び方」を知らない)

茶人の千利休(せんのりきゅう、1522年~1591年)の問答の逸話。

上記の言葉を受けて、尋ねた者は「そんなことくらいは、三歳の赤子でも知っている」と怒った。

千利休は「分かっていても、できないのが人間ではないですか?あなたが本当にできるというなら、弟子になりましょう」と言った、というエピソード。

人間は、理解については、ある程度できてる。

だが、行動が伴わない。

ここが大きな問題というか、重要なポイントである。

スポーツでも有能な選手は、千利休と同様な主旨のことを述べる。

野球選手なら「ボールをよく見て、打ちなさい」。

サッカー選手なら「ボールをよく見て、蹴りなさい」。

そのアドバイスの本質的な内容というか、厳密な意味が、一般の人には伝わらない。

もしくは、選手たちが、アドバイスを言語化しきれない。

結局、本人が体得するしかない、といった感じか。

本書では、知識と能力の違いと伝えている。

大切なことは、あなたが対象を決め自分の意見をもったら、即座に自分以外の人がもちうる視点で考えてみることだ。この他人の視点で考える技術は、商品開発や人事マネージメントなど、あらゆる局面で役に立つ。(P.53:1章 思考力のトレーニング)

ここでは、ビジネス的な事例を続けているが、学生などの場合であれば、他の生徒や教師、家族の視点で考えてみるということ。

自己の視点だけではなく、他者の視点での考察。

そのように考えることで、物事の捉え方が変わり、対象について、より複合的に、総合的に観察できる。

より解像度が上がる。

分かりやすい言葉でいえば、より考えが柔軟になるということ。

不安とは、必ずしも「行動をやめろ」というサインではない。「不安」を感じるときは、脳が自分自身に対して、「情報が不十分です。結果を予測できる状態にするために必要な情報をもっと増やさなくてはなりません」と言っているのだと考えよう。(P.81:2章 感情のトレーニング)

これも非常に大切な考え方。

不安というのは、単に情報不足というシグナルでしかない。

必ずしも、その行動を止めなさい、その決断を止めなさいという意味ではない。

だから、不安になった時には、立ち止まって、冷静に情報を収集していくことが肝要。

と同時に、自信についての言及に繋がっていく。

どちらも、頭の中の情報を比較、検討、分析した結果のサイン。

自信があるというのは、情報が充分ということ。

だから、不安や自信といった、情報に対するレーダーを上手く活用すれば良いという話。

これは、とても有益である。

自分の差異を大切にし、そしてそれを他者評価が高いものに育てる。これを日々意識していけば、仕事の面だけでなく、人間関係や自分自身の心の余裕にもつながっていくのではないだろうか。(P.135:4章 自分力のトレーニング)

差異は、単なる違いで終わらせてはいけない。

差異を、付加価値にする。

他者の評価が得られる差異にすれば、自ずと仕事面だけではなく、日々の面でも、プラスの効果となる。

差異は誰にでもある。

自分の嫌いな差異もある。だが、それは他者の評価する差異かもしれない。

他者の受け容れる差異を伸ばしていく。

自己の成長と利益が得られる。

広告だけでなく、人に対してプレゼンテーションするあらゆる場面において大切なのは、「理解できる新規性」だ。それまでの流れとは違う新しさがあり、かつそれが理解できるものであるとき、プレゼン効果は最大になる。(P.179:5章 対人力のトレーニング)

とてもレベルが高く、オリジナリティーにも溢れた広告やプレゼンテーション。

ただ相手に理解されなければ意味がない。例え、実際にその広告やプレゼンテーションが、非常に優れた成果をもたらすものであっても。

そのためのポイントが、理解できる新規性。

この理解できる新規性の中で、レベルの高さやオリジナリティーを出す。

そうすることで、より大きな成果が導き出されるというもの。

あとは、講演の技術として、何かで読んだことがあるけれど、講演の場合には、集まった人々のほとんどが全く理解できない話を1~2割入れると、尊敬というか、畏敬の念が得られるというもの。

広告やプレゼンテーション、講演というのは、さまざまなテクニックや発想が必要である。

上記のように、具体的な技術や理論などはあまりないが、考え方や発想方法、視点などが得られる内容。

学びについて、成長について、知りたい人、また指導的な立場の人などにも、非常にオススメの本である。

書籍紹介