
『鉄道員(ぽっぽや)』や『壬生義士伝』などの小説で知られる浅田次郎(あさだ・じろう、1951年~)。
しかし、エッセイストとしての浅田次郎は、小説とはまた異なる、強烈で魅力的な人格を読者に見せてくれます。
自衛隊出身、波乱万丈な「ピカレスク的人生」、そして「江戸ッ子気質」に裏打ちされたその言葉は、まさに「体を張った文章」です。
浅田次郎のエッセイは、既存の文学ファンだけでなく、「生きる力」や「人生の哲学」を本物の言葉で学びたいと願う多くの人々におすすめできる作品群。
この記事では、数ある浅田次郎のエッセイ本の中から、初心者でも読みやすいおすすめの作品を中心に、その選び方や読む順番のヒントを、各作品の形式の違いにも注目しながら徹底的に紹介します。
1.『ま、いっか。』浅田 次郎
おすすめのポイント
浅田次郎エッセイの入門書として、まずおすすめしたいのが本書。
「ま、いっか。」というタイトルに象徴される、著者の粋なオヤジ目線で語られる軽妙洒脱な人生論が詰まった一冊です。
「嫌みのない大人の文章」と評されるように、押しつけがましさなく、人生の肩の力をふっと抜いてくれます。
しかし、その根底にあるのは単なる諦めではなく、社会通念や固定観念から自由になるための、ラディカルな価値観の転換の勧め。
浅田次郎の大人の文章に触れる最初の本として最適です。
次のような人におすすめ
- 人生の肩の力を抜きたい、軽やかな生き方のヒントが欲しい人
- 浅田次郎の粋な美学や、江戸ッ子気質に初めて触れてみたい人
- 「ま、いっか」という言葉の、単なる癒しではない攻めの哲学を知りたい人

2.『かわいい自分には旅をさせよ』浅田 次郎
おすすめのポイント
「かわいい子には旅をさせよ」という諺を、他人ではなく「自分」に向けるという視点がユニークなエッセイ集。
本書で語られる旅とは、単なる観光ではなく、自己を鍛え、高めるための試練としての側面を強く含んでいます。
著者が「雌伏の時代」をいかに耐え抜き、「雄飛の時代」を掴み取ったか。
その人生戦略が旅になぞらえて語られる、自己啓発的な読後感も持つ一冊です。
人生の転機や、今まさに「雌伏期」にいると感じる人にこそ、おすすめしたい本です。
次のような人におすすめ
- 現状を打破したい、自分を高めるための試練に飛び込む勇気が欲しい人
- 単なる観光記ではない、人生の旅の極意について知りたい人
- 浅田次郎流の「一流の人生指南」や、堕落せずに耐え抜く哲学に触れたい人
3.『つばさよつばさ』浅田 次郎
おすすめのポイント
JALの機内誌に連載されていたエッセイをまとめた本書は、浅田次郎エッセイの中でも最も洗練された美しい日本語で綴られる一冊です。
「食」「歴史」「海外での失敗談」などを通じ、「外から見た日本」や「日本人として」の姿勢を見つめ直す、知的でユーモアに溢れた内容。
「音読して気持ちが良い」と評されるほどの文体の美しさは、初心者向けの入門書として最適です。
後述する『勇気凛凛』シリーズの熱血なトーンとは対極にある、大人の教養としての旅エッセイが楽しめます。
次のような人におすすめ
- 浅田次郎エッセイの「最初の一冊」として、上質で読みやすい本を探している人
- 読むと旅に出たくなるような、美しい日本語で書かれたエッセイが読みたい人
- 熱血漢としてではない、教養人・大作家としての一面を知りたい人

4.『勇気凛凛ルリの色』浅田 次郎
おすすめのポイント
浅田次郎エッセイの代名詞とも言える、著者の原点が確立された自伝的熱血エッセイ。
陸上自衛隊時代から、自ら「ピカレスク(悪漢)的人生」と称する波乱万丈の経験、そして小説家として成功するまでの軌跡が、まさに体を張った文章で赤裸々に綴られます。
「理不尽な宿命を笑い飛ばす」その生き様は、「読むエナジードリンク」とも評され、多くの読者に生きるパワーを与えてくれます。
浅田次郎の言葉がなぜこれほどまでに心に刺さるのか、その答えがここにあります。
次のような人におすすめ
- 人生にパワーが欲しい、理不尽な現実を笑い飛ばす元気が欲しい人
- 小説家・浅田次郎がどのような人生を送り、その原点が形成されたのかを知りたい人
- 「読むエナジードリンク」と評される、熱血な自伝的エッセイを読みたい人
5.『競馬どんぶり』浅田 次郎
おすすめのポイント
競馬歴30年の達人である著者が「競馬とは何か」「馬券とは何か」を哲学的に語る、競馬ファン必携の達人語録。
本書は著者が執筆した「エッセイ(随筆)」ではなく、インタビュアーの質問に「口頭で答えたものを活字にした」インタビュー録です。
『つばさよつばさ』のような「美しい日本語の文章」を期待して読む本ではなく、浅田次郎の「語り」そのものを楽しむための競馬哲学書として、おすすめします。
次のような人におすすめ
- 浅田次郎の競馬哲学や、人生の達人語録に、語り口調で触れたい競馬ファン
- 著者の文章表現力ではなく、語りや思考そのものを知りたい人
- 本書がエッセイ・随筆ではなく、インタビュー録を読みたい人

6.『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』浅田 次郎
おすすめのポイント
『勇気凛凛』が「行動の自伝」なら、本書は「心情の自伝」と呼べる一冊。
「幸福な少年時代、生き別れた母のこと、競馬、小説の奇蹟」など、著者の内面に深く切り込むトピックが並びます。
特にタイトルにもなった「嘘つきだから、小説家にでもなればいい」という言葉には、壮絶な生い立ち(現実)を持つがゆえの「嘘」(=フィクションを紡ぐ力)こそが小説家の原動力である、という著者の創作論の源泉が示されています。
浅田文学のファン、そして作家志望者必読の創作論です。
次のような人におすすめ
- 小説家・浅田次郎が「なぜ小説を書き続けるのか」その原点を知りたい人
- 著者の壮絶な生い立ちや、生き別れた母への思いなど、パーソナルな側面に触れたい人
- 「嘘」と「フィクション」の関係性についての、深い創作論に興味がある人
7.『勝負の極意』浅田 次郎
おすすめのポイント
「私はこうして作家になった!」と宣言する、痛快な人生必勝エッセイ。
著者が「卓越した博才と商才」という、一見文学とは無縁の能力をいかに駆使して「小説家になる」という悲願を成就させたか、そのユニークな成功哲学が語られます。
ただし、本書は明確な「二部構成」である点に注意が必要。
「人生の勝ち方」を学びたい人におすすめの本ですが、後半は競馬ファン向けの内容になることを理解した上で手に取る必要があります。
次のような人におすすめ
- 浅田次郎流の「人生の勝ち方」や、博才・商才を活かす独自の成功哲学を知りたい人
- 本書が「前半の成功哲学」と「後半の競馬論」に興味のある人
- 作家デビューを勝ち取った著者の「勝負」の哲学に興味がある人

8.『ひとは情熱がなければ生きていけない』浅田 次郎
おすすめのポイント
『勇気凛凛ルリの色』シリーズの続編とも位置付けられる本書は、『勇気凛凛』が「こんな人生を送ってきた」(事実)の提示だとすれば、本書は「だから自分はこう考える」(哲学・方法論)の解説書です。
「天職への情熱」「創造の情F」「生活美学の情熱」「遊びの情熱」といった章立てで、著者の人生観や創作論が体系化されています。
『勇気凛凛』で著者の生き様に感銘を受けた読者が、その哲学を自らの人生や仕事に実践的に取り入れたいと願う時、その羅針盤となるおすすめの一冊です。
次のような人におすすめ
- 『勇気凛凛ルリの色』を読み、その哲学や方法論をより深く知りたい人
- 仕事、遊び、人生のすべてを100%楽しむための情熱の持ち方を学びたい人
- クリエイターや作家志望者で、浅田次郎の具体的な創作作法に興味がある人
9.『極道放浪記』浅田 次郎
おすすめのポイント
「殺られてたまるか」という強烈な副題が示す通り、本書は『勇気凛凛』などで触れられた「ピカレスク人生」の、より専門的かつ詳細な深掘りをしたアウトロー体験記。
幻冬舎アウトロー文庫というレーベルが、その内容の深さと過激さを物語っています。
『つばさよつばさ』が「上品」で「表」の浅田次郎像だとすれば、本書は「ディープ」で「裏」の浅田次郎像。
初心者がいきなり手に取るには劇薬的な性質も持ちますが、この幅広さこそがエッセイスト浅田次郎の真骨頂でもあります。
次のような人におすすめ
- 『勇気凛凛』で語られた「ピカレスク人生」の、よりディープな真相を知りたい人
- 小説家・浅田次郎が生き抜いた修羅場のリアルな記録に触れたい人
- 上品なエッセイだけでなく、著者のアウトローな側面や、裏の顔に興味がある人

10.『待つ女 ― 浅田次郎読本』浅田 次郎
おすすめのポイント
本書は純粋なエッセイ集ではありません。
その正体は、作家・浅田次郎を多角的に分析・研究するための公式ガイドブックであり資料集です。
「ロングインタビュー」「デビュー以来の自作解説」「詳細年譜」「評論」「豪華対談」「書き下ろし小説」など、極めて豪華な内容が収録されています。
浅田次郎のエッセイや小説を読み、その作品世界に魅了された上級者が、著者をより深く知るために次に手に取るべきファン必携の一冊です。
次のような人におすすめ
- ファン向けの公式ガイドブックを読みたい人
- 浅田次郎ファンであり、著者の詳細なインタビューや自作解説を読みたい上級者
- 渡辺淳一、林真理子らとの豪華対談や、評論など、多角的に浅田次郎を「研究」したい人
11.『日本の「運命」について語ろう』浅田 次郎
おすすめのポイント
『壬生義士伝』や『蒼穹の昴』など、歴史小説の大家である著者が、日本の未来を語るために「歴史(特に近現代史)」の重要性を説く一冊。
「なぜ歴史を学ぶのか」「明治維新が目指した未来とは」
といった重厚なテーマが並び、著者の歴史観が凝縮されています。
講演録をまとめた内容で、「大人のための近現代史」の教養書としておすすめです。
次のような人におすすめ
- 『壬生義士伝』などの歴史小説の背景にある、浅田次郎の「歴史観」そのものを知りたい人
- 日本の近現代史を学ぶ重要性について著者の語りから学びたい人
- 浅田次郎の講演録に興味のある人

12.『人間の縁 ― 浅田次郎の幸福論』浅田 次郎
おすすめのポイント
本書は新作エッセイ集ではなく、過去作からの抜粋・再編集によるアンソロジー(選集)です。
すでに浅田作品を多く読んでいる既存ファンにとっては、内容が重複してしまいますが、逆に「浅田次郎の哲学を初めて知りたい」という真の初心者にとっては、最適な入門書。
著者の考えを効率よくインプットできる、ベスト盤としておすすめの本です。
次のような人におすすめ
- 浅田次郎の「幸福論」に関するイイとこ取りのベスト盤として、入門用に読みたい人
- 過去作からの抜粋・再編集アンソロジーに興味のある人
- 内容の重複を承知の上で、著者の哲学を「幸福論」というテーマで読み直したい人
まとめ:あなたの「悩み」に効く、浅田次郎エッセイという処方箋
浅田次郎のエッセイは、単なる随筆を超え、読む者の人生に直接働きかける力を持っています。
それは、著者が人生の荒波を体を張って生き抜いてきたからこそ紡ぎ出せる、本物の言葉の力です。
「生きるパワーが欲しい」なら『勇気凛凛ルリの色』を、「肩の力を抜きたい」なら『ま、いっか。』を。
「作家の原点」に触れたいなら『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』を、そして「入門」として美しい文章に触れたいなら『つばさよつばさ』がおすすめです。
この記事で紹介した、随筆か、インタビュー録か、はたまたアンソロジーか、といった形式の違いも参考に、今のあなたの悩みや知的好奇心に最も響く一冊を見つけてください。
きっと、明日を生きるための確かなヒントと「勇気」を与えてくれるはずです。
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