
複雑で変化の速い現代社会。経済やテクノロジー、国際情勢のニュースは日々更新されます。
しかし「そもそも、この世界の仕組みはどうなっているんだろう?」と根本的な疑問を感じることはありませんか。
そんな知的好奇心に応え、思考の枠組みをアップデートしてくれる最高の案内人が、翻訳家の山形浩生(やまがた・ひろお、1964年~)です。
彼の翻訳書は、難解な専門知識を驚くほど平易で刺激的な言葉に変換し、私たちの知的な冒険をサポートしてくれます。
この記事では、数ある山形浩生の翻訳書のなかから、特におすすめの本を厳選。
経済学の初心者向け入門書から、社会の根源を問う名著、未来を予見する一冊まで、あなたの世界観を揺さぶる本との出会いを約束します。
このおすすめリストを参考に、知の巨人たちの思考に触れる旅へ、最初の一歩を踏み出してみませんか。
- 1.『動物農場〔新訳版〕』ジョージ・オーウェル
- 2.『聖なる侵入〔新訳版〕』フィリップ・K. ディック
- 3.『経済学をまる裸にする ― 本当はこんなに面白い』Charles Wheelan
- 4.『貧乏人の経済学 ― もういちど貧困問題を根っこから考える』Abhijit V. Banerjee & Esther Duflo
- 5.『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか? ― ヒトの進化からみた経済学』Paul Seabright
- 6.『さっさと不況を終わらせろ』Paul Krugman
- 7.『WTF経済 ― 絶望または驚異の未来と我々の選択』Tim O’Reilly
- 8.『無敵の天才たち ― スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間』Doug Menuez
- 9.『それでも金融はすばらしい ― 人類最強の発明で世界の難問を解く。』Robert J. Shiller
- 10.『デジタルエコノミーの罠』Matthew Hindman
- 11.『21世紀の資本』Thomas Piketty
- 12.『21世紀の不平等』Anthony B. Atkinson
- まとめ:知の航海へ、最初の一冊を
1.『動物農場〔新訳版〕』ジョージ・オーウェル
おすすめのポイント
ロシア革命とスターリン主義を痛烈に風刺した、20世紀文学の金字塔。
農場の動物たちが人間を追い出し、理想の社会を築こうとしますが、やがて豚の独裁体制へと変貌していく物語です。
山形浩生による新訳版は、原文の持つ寓話としての面白さを、現代的で非常に読みやすい日本語で再現。
「すべての動物は平等である。だが、一部の動物は他よりもっと平等である」という有名な一節は、現代の組織や社会にも通じる権力の不条理を鋭く突いています。
社会構造や政治について考えるための、これ以上ない入門書です。
次のような人におすすめ
- 社会の仕組みや権力の本質について、物語を通して楽しく学びたい人
- 全体主義やポピュリズムといった、現代にも通じる政治的テーマに関心がある人
- 普遍的な面白さを持つ、時代を超えた海外文学の傑作に触れたい人

2.『聖なる侵入〔新訳版〕』フィリップ・K. ディック
おすすめのポイント
映画『ブレードランナー』の原作者としても知られるSF界の巨匠、フィリップ・K・ディックの自伝的三部作の第二作。
「現実とは何か?」を問い続けるディック自身の神秘体験が色濃く反映された、形而上学的なSF作品です。
難解とも言われるディックの世界観ですが、山形浩生の翻訳は、その思弁的な内容をクリアかつスピーディーな文体で読ませてくれます。
AIやVRが現実を侵食し始めた現代において、ディックが探求したテーマは驚くほどのリアリティをもって迫ってくる。
まさに今読むべき一冊と言えるでしょう。
次のような人におすすめ
- 「現実とは何か」「意識とは何か」といった哲学的な問いに興味がある人
- 単なるエンターテイメントに留まらない、思索的なSF小説を求めている人
- AIや仮想現実が普及する未来の世界について、深く考えてみたい人
3.『経済学をまる裸にする ― 本当はこんなに面白い』Charles Wheelan
おすすめのポイント
「経済学は難しくて退屈」そんなイメージを持っている人にこそおすすめしたい、最高に面白い入門書です。
本書の最大の特徴は、数式やグラフを一切使わず、豊富な具体例だけで経済学の核心的な考え方を説明している点。
「なぜ映画館のポップコーンはあんなに高いのか?」といった身近な疑問から、インセンティブ、市場の力、政府の役割といった重要な概念まで。
ストーリーを読むように理解できます。
山形浩生の軽快な訳文も相まって、経済ニュースの裏側が手に取るようにわかるようになる、まさに目から鱗の一冊です。
次のような人におすすめ
- 経済学を学びたいけれど、何から手をつけていいか分からない初心者
- 日々のニュースや社会の出来事を、経済学的な視点から理解したい人
- 数式アレルギーでも楽しく読める、実用的なビジネス・教養書を探している人

4.『貧乏人の経済学 ― もういちど貧困問題を根っこから考える』Abhijit V. Banerjee & Esther Duflo
おすすめのポイント
2019年ノーベル経済学賞を受賞した著者たちによる、貧困研究の革命的な一冊。
「なぜ貧しい人々は、合理的でないように見える選択をするのか?」という問いに対し、「ランダム化比較試験(RCT)」という科学的アプローチを使用。
先入観や美談ではない、データに基づいた答えを提示します。
例えば、無料の予防接種になぜインセンティブとして豆一袋を配ると接種率が劇的に上がるのか。
本書は、貧しい人々のリアルな現実に寄り添い、本当に効果のある支援策とは何かを教えてくれます。
貧困問題への見方が根底から変わる衝撃的な読書体験です。
次のような人におすすめ
- 国際協力や社会問題に関心があり、効果的なアプローチを知りたい人
- データに基づいて物事を考える、科学的な思考法を身につけたい人
- これまでの常識を覆すような、知的な刺激に満ちたノンフィクションを読みたい人
5.『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか? ― ヒトの進化からみた経済学』Paul Seabright
おすすめのポイント
「なぜ私たちは、見ず知らずの他人と協力し、複雑な分業社会を築けるのか?」
この壮大な問いを、人類の進化の歴史から解き明かすユニークな経済学の本です。
血縁関係のない他人を信頼し、グローバルな市場経済を成立させている人類は、生物学的に見れば極めて異質な存在。
本書は、その謎を解く鍵が、他の霊長類にはない人間の「心を読む能力」や「評判を気にする性質」にあると論じます。
経済学だけでなく、進化生物学や人類学の知見を横断するダイナミックな議論。
それは、人間社会の根源を見つめ直すきっかけを与えてくれます。
次のような人におすすめ
- 経済の仕組みだけでなく、その背景にある人間社会の成り立ちに興味がある人
- 進化論や人類学といった、学際的な視点から物事を考えるのが好きな人
- 『サピエンス全史』のように、人類の歴史を壮大なスケールで語る物語が好きな人

6.『さっさと不況を終わらせろ』Paul Krugman
おすすめのポイント
ノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマンが、リーマンショック後の世界的な不況に対し、明快かつ痛烈な言葉で処方箋を示した一冊。
「不況時に緊縮財政を行うのは狂気の沙汰だ」と断じ、政府が需要を創出するために積極的な財政出動を行うべきだと強く主張します。
クルーグマンの議論は一貫してケインズ経済学に基づいています。
専門的な内容を含みながらも、山形浩生の翻訳によって、そのロジックは非常に分かりやすく展開されます。
経済政策に関する議論の「基本のキ」が学べる、現代人必読の書です。
次のような人におすすめ
- 政府の経済政策(金融緩和や財政出動など)の基本を理解したい人
- 景気や不況について、専門家がどのように考えているのかを知りたい人
- 一つの明確な視点から、経済問題を鋭く斬る論客の主張に触れたい人
7.『WTF経済 ― 絶望または驚異の未来と我々の選択』Tim O’Reilly
おすすめのポイント
シリコンバレーの最重要思想家の一人、ティム・オライリーが、AIやプラットフォームが支配する未来の経済(WTF=What The Future)を読み解く一冊。
テクノロジーは私たちに驚異的な豊かさをもたらす一方、仕事や人間性を奪う絶望的な未来にも繋がりかねません。
本書は、その分岐点で私たちが何をすべきかを問いかけます。
単なる未来予測に留まらず、オープンソースの思想などを応用し、人間が中心となる経済をどう設計すべきかという具体的な提言にまで踏み込んでいるのが特徴。
テクノロジーに関わる全ての人におすすめしたい未来の羅針盤です。
次のような人におすすめ
- AIの進化やギグエコノミーの拡大が、社会や自分の仕事にどう影響するのかを知りたい人
- テクノロジーと社会の未来について、楽観論でも悲観論でもない現実的な視点を得たい人
- これからのビジネスやキャリアを考える上で、重要なヒントを探している人

8.『無敵の天才たち ― スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間』Doug Menuez
おすすめのポイント
1985年から15年間にわたり、写真家ダグ・メネズがシリコンバレーの内側からデジタル革命を記録した貴重なフォト・ドキュメンタリー。
アップルを追放された若き日のスティーブ・ジョブズがNeXT社を立ち上げ、苦闘の末に復活を遂げるまで。
そのドラマが、臨場感あふれる写真とテキストで綴られます。
成功の輝きだけでなく、プロジェクトの失敗や人間関係の軋轢といった生々しい現実も。
イノベーションがいかに混沌と熱狂の中から生まれるかを教えてくれます。
創造の現場のエネルギーに満ちた、読むビジュアルブックです。
次のような人におすすめ
- スティーブ・ジョブズやシリコンバレーの歴史に興味がある人
- イノベーションやものづくりが生まれる瞬間の、リアルな舞台裏を覗いてみたい人
- 文章だけでなく、写真からもインスピレーションを得たいクリエイティブな仕事の人
9.『それでも金融はすばらしい ― 人類最強の発明で世界の難問を解く。』Robert J. Shiller
おすすめのポイント
金融危機以降、「悪者」と見なされがちな金融。
しかし、行動経済学の大家でノーベル賞学者のロバート・シラーは、金融こそ「人類最強の発明」であり、その力を社会のために活かすべきだと説きます。
本書は、住宅ローンや保険といった金融技術が、本来は人々の生活を豊かにし、リスクから守るための素晴らしい仕組みであることを再確認させてくれます。
そして、金融を一部の専門家から解放し、貧困や格差といった社会問題を解決するために応用する「金融の民主化」という壮大なビジョンを提示。
金融へのイメージが180度変わる一冊です。
次のような人におすすめ
- 金融や投資に対して、漠然とした不信感や苦手意識を持っている人
- 行動経済学の視点から、人間と社会の仕組みを理解したい人
- 社会問題を解決するための、新しいビジネスやアイデアに関心がある人

10.『デジタルエコノミーの罠』Matthew Hindman
おすすめのポイント
「インターネットは誰にでもチャンスを与える平等な世界」という神話を、膨大なデータを用いて容赦なく破壊する一冊。
本書は、GoogleやAmazonといった巨大IT企業がいかにして市場を独占するに至ったか。
「粘着性(ユーザーが離れられない仕組み)」と「規模の経済」というキーワードで解き明かします。
勝者がすべてを独占するデジタル経済の構造は、経済的な格差だけでなく、民主主義そのものを脅かす危険性をはらんでいると警告。
GAFAの功罪を冷静に分析し、ネット社会の現実を直視するために欠かせない本です。
次のような人におすすめ
- GAFAなど巨大IT企業のビジネスモデルや、その社会的影響力について深く知りたい人
- デジタル時代のマーケティングやビジネス戦略について考えている人
- 「フィルターバブル」や「フェイクニュース」といった問題の根本原因に関心がある人
11.『21世紀の資本』Thomas Piketty
おすすめのポイント
世界中で大論争を巻き起こした、現代における格差研究の記念碑的著作。
フランスの経済学者トマ・ピケティが、20カ国以上、300年にわたる膨大な税務データを分析し、資本主義の本質的な傾向を明らかにしました。
その結論が、有名な「r > g」(資本収益率 > 経済成長率)という不等式。
これは、資産が生み出す富の増え方が、労働によって得られる富の増え方を上回ることを意味。
資本主義が本質的に格差を拡大させる力を持つことを示しています。
700ページ超の大著ですが、山形浩生たちの明快な翻訳により、その核心的な主張は驚くほどクリアに理解できます。
次のような人におすすめ
- 現代社会における「格差問題」の根本原因を、歴史的・構造的に理解したい人
- 経済学の最前線でどのような議論が行われているのかに触れてみたい人
- 骨太で読み応えのあるノンフィクションに挑戦し、知的な達成感を味わいたい人

12.『21世紀の不平等』Anthony B. Atkinson
おすすめのポイント
『21世紀の資本』で世界に衝撃を与えたトマ・ピケティが「師」と仰ぐ、所得分配研究の世界的権威のアンソニー・アトキンソンによる格差論。
ピケティが格差拡大のメカニズムを歴史的に解明。
対して、アトキンソンは「では、我々は何をすべきか」という問いに焦点を当てます。
そして、格差を是正するための具体的な15の政策提言を行っています。
技術革新の方向性の管理から、最低賃金の引き上げ、相続税の強化まで、その提案は野心的かつ多岐にわたります。
格差は宿命ではなく、政策によって克服できるという力強いメッセージが込められた一冊です。
次のような人におすすめ
- 『21世紀の資本』を読み、格差問題への具体的な解決策に関心を持った人
- 税金や社会保障といった、具体的な経済政策について学びたい人
- グローバル化が進む現代において、一国単位で何ができるのかを考えたい人
まとめ:知の航海へ、最初の一冊を
山形浩生が翻訳する本の世界は、まるで広大な海です。
経済学という大陸、テクノロジーが形作る新しい島々、そして文学という深く豊かな海溝。
今回紹介した12冊は、その海を航海するための、信頼できる海図の一部にすぎません。
しかし、どの本から手に取っても、そこには必ず新しい発見があり、これまで見ていた世界の風景が少し違って見えるようになるはずです。
ポップコーンの値段から人類の未来まで、あらゆる物事の裏にある「なぜ?」を探求する旅。
そのスリリングな冒険へ、まずは気になる一冊から漕ぎ出してみて下さい。
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