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【選書】高橋克彦のおすすめ本・書籍12選:歴史・時代小説、代表作、読む順番

高橋克彦(たかはし・かつひこ、1947年~)の歴史小説・時代小説に興味はあるけれど、「『炎立つ』『火怨』は長大で難しそう…」とためらっている人も多いかもしれません。

高橋克彦の作品世界は、重厚な歴史ロマンだけでなく、初心者にも読みやすいエンターテイメント性の高い本も豊富です。

実は、高橋克彦は江戸川乱歩賞や日本推理作家協会賞も受賞した、日本トップクラスのミステリー作家。

その卓越した技術で描かれるからこそ、歴史・時代小説も抜群に面白いのです。

この記事では、時代小説が初めての方でも楽しめる「読みやすい」ミステリー作品から、著者の真骨頂である壮大な「東北作品群」まで、おすすめの12作品を「読みやすさ順」に徹底解説します。

【入門編】まずはここから! 江戸エンターテイメント&ミステリー3選

時代小説への入門に最適。

ミステリーファンなら絶対にはまる、江戸の魅力あふれる3冊です。

1. 『完四郎広目手控』高橋 克彦

おすすめのポイント

江戸を舞台にした「バディもの」ミステリー。主人公は旗本の次男でのんきな古本屋居候・完四郎と、巷の噂を売り買いする情報屋「広目屋(ひろめや)」の由蔵。

このユニークな設定がまず面白い。軽妙なキャラクターのやり取りを楽しみながら、読者は二人が追う事件を通じて、幕末から明治へと移り変わる激動の時代を市井の人々の視点で追体験することになります。

江戸の終わりと明治の始まりを、魅力的な主人公たちと共に駆け抜ける傑作エンターテイメントです。

次のような人におすすめ

  • 時代小説は初めてで、読みやすいミステリーから入りたい人
  • 主人公たちの軽妙な会話や、人情の機微が描かれる「バディもの」が好きな人
  • 幕末の激動期を、有名な偉人ではなく一般市民の目線で感じてみたい人

2. 『だましゑ歌麿』高橋 克彦

おすすめのポイント

喜多川歌麿、葛飾北斎、蔦屋重三郎、そして松平定信。

歴史の教科書に登場するスーパースターが豪華共演する歴史ミステリー。

重要なのは、主人公が歌麿ではなく、架空の同心・仙波一之進であること。

読者は一之進という安全な視点から、スターたちの周りで起こる事件を捜査し、その華やかな舞台裏に潜入する興奮を味わえます。

伝記の重さを排し、エンターテイメントに徹した構成は見事。

分厚さを感じさせず一気に読ませる、高橋克彦の「ミステリー作家」としての手腕が光る本です。

次のような人におすすめ

  • 浮世絵や江戸の文化、歌麿や北斎といった実在の人物に興味がある人
  • 重厚な歴史小説よりも、史実をベースにした華やかなエンタメ作品が読みたい人
  • スピンオフの『京伝怪異帖』と併せて、一つの世界観を長く楽しみたい人

3. 『京伝怪異帖』高橋 克彦

おすすめのポイント

人気戯作者・山東京伝を主人公に据えた、『だましゑ歌麿』の世界観を共有するスピンオフ作品。

平賀源内や蔦屋重三郎といった仲間たちと共に、「天狗髑髏」や「地獄宿」といった奇怪な事件に挑む痛快な時代ミステリーです。

『だましゑ歌麿』を読んで世界観や、特に蔦重などの登場人物に愛着を持ったなら、必読の一冊。

『だましゑ歌麿』という「本編」の面白さをさらに深掘りできる作品です。

次のような人におすすめ

  • 『だましゑ歌麿』を読んで、あの世界のキャラクターをもっと見たいと思った人
  • 江戸のオカルトや怪奇事件簿といったテーマにワクワクする人
  • 平賀源内など、江戸の天才たちが活躍するフィクションが好きな人

【展開編】あなたの好みがきっと見つかる! 多彩な時代ロマン4選

江戸ミステリーで慣れた後は、高橋ワールドの多様性に触れてみましょう。

鎌倉、剣豪、幕末、神話と、あなたの好みに「刺さる」一冊が必ず見つかります。

4. 『時宗 巻の壱 乱星』高橋 克彦

おすすめのポイント

NHK大河ドラマ『北条時宗』の原作小説。

ただし、読む前に注意点が一つ。

この第1巻の主人公は、タイトルの時宗ではなく、その父である北条時頼です。

時宗は巻の最後で産声を上げるにすぎません。

描かれるのは、若き時頼が内部の権力闘争や有力御家人との対立にいかに立ち向かい、来るべき「最大の国難」元寇の前に、まず「内部の敵」と戦い国を一つにまとめたかという重厚な政治群像劇。

合戦を期待すると肩透かしを食いますが、なぜ時頼から描く必要があったのかが分かると、この壮大な物語の序章に圧倒されます。

次のような人におすすめ

  • 鎌倉時代を舞台にした、骨太で重厚な政治ドラマが読みたい人
  • 大河ドラマの原作に興味があり、歴史の「なぜ」を深く知りたい人
  • 『時宗』という本を、「元寇」に至るまでの苦悩の歴史として捉えたい人

5. 『舫鬼九郎』高橋 克彦

おすすめのポイント

重厚な『時宗』とは対照的。

謎の美剣士・舫鬼九郎(もやい・おにくろう)が主人公の、痛快な剣豪アクション活劇です。

難しい理屈は抜きにして、「動」のアクションと「カッコ良い」剣士が魅力的。

柳生十兵衛、幡随院長兵衛、天竺徳兵衛といった、時代小説のオールスターたちが次々と登場し、九郎と派手なチャンバラを繰り広げます。

『時宗』のような重厚な歴史小説の「清涼剤」としても最適。

スカッとする最高のエンタメがここにあります。

次のような人におすすめ

  • 小難しい理屈や政治劇は抜きで、とにかく派手な剣豪アクションが読みたい人
  • 柳生十兵衛など、時代劇のスターたちが豪華共演する物語が好きな人
  • 謎めいた美形の主人公が活躍する、疾走感あふれる活劇を求める人

6. 『火城 ― 幕末廻天の鬼才・佐野常民』高橋 克彦

おすすめのポイント

坂本龍馬も新選組も出てこない、もう一つの幕末小説。

主人公は、後に日本赤十字社の生みの親となる佐野常民。

しかし、本作が焦点を当てるのは、彼の知られざる前半生、すなわち幕末の佐賀藩における「技術者(エンジニア)」としての情熱です。

刀ではなく「技術で日本を守る」と信じ、日本初の蒸気機関車の模型や国産初の蒸気船「凌風丸」の建造に邁進する常民の姿は、まさに「プロジェクトX」。

技術史ファンや理系の人々にも強くおすすめできる、異色の傑作歴史長編です。

次のような人におすすめ

  • 従来の幕末小説とは違う視点(技術、佐賀藩)の物語を読みたい人
  • 『プロジェクトX』のような、技術者たちの情熱的な開発物語が好きな人
  • 日本赤十字社の創設者・佐野常民の、知られざる前半生に興味がある人

7. 『えびす聖子』高橋 克彦

おすすめのポイント

「高橋版『古事記』」とも称される、神話伝奇ロマン。

出雲神話を著者独自の大胆な解釈で再構築しています。

本作は、この後で紹介する「東北作品群」へと読者を導くための、完璧な「精神的な助走」の役割を果たします。

「東北作品群」が中央(ヤマト)によって作られた「正史」を「北の視点」から語り直す物語であるように、本作は「神話(古事記)」そのものを再解釈します。

読者は、少年シコオの冒険を通じて、「これから『正史』や『神話』を疑い、別の視点から語り直しますよ」という、知的でスリリングな準備をさせられるのです。

次のような人におすすめ

  • 『古事記』や出雲神話を、単なる神話ではなく、エキサイティングな物語として楽しみたい人
  • 歴史の「正史」や「神話」の裏に隠された真実を考察するのが好きな人
  • 重厚な「東北作品群」に入る前に、著者の歴史観・神話観に触れておきたい人

【核心編】これぞ高橋文学の真骨頂! 「東北作品群」5選

ここからが高橋克彦文学の「核心」です。

なぜ彼は「北の魂」を描き続けるのか。

著者のライフワークであり、日本文学の金字塔。

その答えがここにあります。

8. 『水壁 ― アテルイを継ぐ男』高橋 克彦

おすすめのポイント

高橋文学の金字塔『火怨』で描かれた英雄アテルイの死から75年後。

アテルイの曾孫・天日子(あまひこ)を主人公に、史実の「元慶の乱」を背景に描く物語です。

時系列的には『火怨』『炎立つ』の間を繋ぐミッシングリンク。

いきなり「アテルイ」という重いテーマに触れるのではなく、まず「アテルイを継ぐ男」の活躍から入ることで、読者は「彼が背負うアテルイとは、どれほど凄い人物だったのか?」と、自然な形で作品群の核心『火怨』へと興味を誘導されます。

作品群への見事な導入として機能する一冊です。

次のような人におすすめ

  • 伝説の英雄の「その後」や、「遺志を継ぐ者」の物語に惹かれる人
  • 『火怨』を読む前に、まずアテルイという存在の重さを知っておきたい人
  • 平安時代の「元慶の乱」という、あまり知られていない史実を基にした小説が読みたい人

9. 『風の陣 一 ― 立志篇』高橋 克彦

おすすめのポイント

「東北作品群」の中で、最も古い時代(奈良時代)を舞台にした、すべての「発端」を描く物語。

陸奥国での「金」の産出が、平城京の権力闘争と、東北の蝦夷たちの運命をリンクさせます。

『火怨』『炎立つ』が既に「戦争」が始まっている状態から描かれるのに対し、本作は東北が「黄金の国」として中央に認識され、搾取と支配の対象とされる「前」を描いています。

主人公・丸子嶋足は、武力ではなく中央の官人となり、内部から故郷を守ろうと奮闘。

これは、作品群の壮大な第一歩です。

次のような人におすすめ

  • 『火怨』『炎立つ』に繋がる、東北作品群の「エピソード・ゼロ」が知りたい人
  • なぜ中央と東北の戦いが始まったのか、その「発端」に興味がある人
  • 奈良時代の平城京と、東北・陸奥がどう関わっていたのかを描く歴史小説が読みたい人

10. 『天を衝く(1) ― 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実』高橋 克彦

おすすめのポイント

豊臣秀吉の天下統一に対し、陸奥の武将・九戸政実が「最後の抵抗」を試みる物語。

「中央権力への抵抗」という東北作品群の通底テーマの、最も絶望的で、最も誇り高い「最終章」です。

戦国末期、相手は「天下人・秀吉」。

九戸政実が降伏後に裏切られて処刑される運命は、『火怨』のアテルイの運命と驚くほど酷似しています。

著者が、九戸政実の戦いを「800年にわたる東北の独立闘争の、最後の花火」として意図的に描いていることが伝わる、涙なしには読めない一冊です。

次のような人におすすめ

  • 戦国時代の「勝者」ではなく、誇り高く散った「敗者」の物語に惹かれる人
  • なぜ秀吉の天下統一に「NO」を突き付けたのか、北の最後のサムライの生き様を知りたい人
  • 東北作品群の壮大な戦いの「終焉」を見届けたい人

11. 『火怨 上 ― 北の燿星アテルイ』高橋 克彦

おすすめのポイント

吉川英治文学賞を受賞した、高橋克彦の紛れもない代表作。

平安時代初期、朝廷(ヤマト)の侵略に対し立ち向かった蝦夷の伝説的英雄・阿弖流為(アテルイ)の生涯を描きます。

歴史の教科書では「反逆者」としか記されないアテルイを、「英雄」として日本文学の表舞台に描き直し、最高の文学賞で認めさせた意義は計り知れません。

本作は読者の「歴史観」そのものに挑戦してきます。

『風の陣』が「なぜ」を描き、『天を衝く』が「結末」を描くならば、『火怨』は「いかに戦ったか」という、作品群の最も熱い精神的支柱を描いています。

NHKでドラマ化もされました。

次のような人におすすめ

  • 高橋克彦の最大の代表作にして「核心」を読みたい人
  • 歴史の教科書では語られない、北の英雄アテルイと盟友・母礼(モレ)の熱き戦いと友情に触れたい人
  • ドラマ『アテルイ伝』の原作を読み、あの感動を壮大なスケールで再体験したい人

12. 『炎立つ 壱 ― 北の埋み火』高橋 克彦

おすすめのポイント

1993年のNHK大河ドラマ『炎立つ』の原作小説であり、高橋克彦文学の最高傑作と目される壮大な大河ロマン。

平安後期、奥州藤原氏三代(あるいは初代・経清から四代)の興亡と、「黄金の楽土(ユートピア)」を目指した夢の軌跡を描きます。

本作を最後に紹介するのは、東北作品群の全てのテーマ(抵抗、独立、文化、経済)を内包しているから。

作中で安倍氏がアテルイを守護神としている記述は、『火怨』の魂が本作に受け継がれた証拠。

アテルイの「軍事」による抵抗が敗れた後、藤原氏が目指した「経済と文化」による独立。

これこそが、著者が描きたかった「北の夢」の最終形態であり、作品群の壮大な集大成です。

次のような人におすすめ

  • 高橋克彦文学の「最高傑作」にして「集大成」を読みたい人
  • 大河ドラマ『炎立つ』の原作で、奥州藤原氏がなぜ「黄金の楽土」を目指したのか、その壮大な夢の軌跡を追いたい人
  • 『火怨』アテルイの魂が、その後いかにして受け継がれていったのかを知りたい人

「東北作品群」を100倍楽しむ「歴史時系列マップ」

「核心編」で紹介した5作品は、著者のライフワークです。

これらの作品は、個別に読んでももちろん面白いのですが、以下の「歴史的な時系列順」で流れを掴むと、各作品の繋がりと、時代を超えて受け継がれる「北の悲願」が鮮明になり、感動が倍増します。

推奨する「最強の読書順」です。

読破順(時系列)時代設定作品名主な出来事・テーマ主人公(または中心人物)作品群内の役割
1奈良時代『風の陣』陸奥での黄金発見、中央の政争への巻き込まれ丸子嶋足【発端】 なぜ戦いが始まったのか
2平安時代(初期)『火怨』蝦夷三十八年戦争、ヤマト(朝廷)軍との全面戦争アテルイ、母礼【核心】 北の魂の象徴、最大の武力抵抗
3平安時代(中期)『水壁』アテルイの死から75年後、元慶の乱、遺志の継承天日子(アテルイの曾孫)【継承】 伝説の「その後」と再生
4平安時代(後期)『炎立つ』前九年の役、奥州藤原氏による「黄金の楽土」の夢藤原経清、清衡【結実】 武力から「文化・経済」での独立
5戦国〜安土桃山『天を衝く』豊臣秀吉の天下統一に対する、最後の抵抗九戸政実【終焉】 800年にわたる魂の「最後の戦い」

まとめ:あなたの「最初の一冊」は

高橋克彦の歴史・時代小説の世界は、まさに広大。

あなたの「最初の一冊」は決まったでしょうか。

読みやすい江戸のミステリーから入るのも、著者の多様な時代ロマン作品に触れてみるのも。

あるいは覚悟を決めて「東北作品群」の壮大な歴史の深淵にいきなり挑むのも、すべてが正しい選択です。

どの本から入っても、高橋克彦が紡ぐ物語は、あなたの知的好奇心を必ず満たしてくれるはずです。