『苦しかったときの話をしようか』森岡毅

森岡毅の略歴

森岡毅(もりおか・つよし、1972年~)
マーケター。
兵庫県伊丹市の出身。兵庫県立伊丹高等学校、神戸大学経営学部を卒業。P&Gジャパンマーケティング本部を経て、USJに入社。2017年に独立して、マーケティング会社「刀」を創業。

『苦しかったときの話をしようか』の目次

はじめに 残酷な世界の“希望”とは何か?
第1章 やりたいことがわからなくて悩む君へ
第2章 学校では教えてくれない世界の秘密
第3章 自分の強みをどう知るか
第4章 自分をマーケティングせよ!
第5章 苦しかったときの話をしようか
第6章 自分の“弱さ”とどう向き合うのか?
おわりに あなたはもっと高く飛べる!

概要

2019年4月10日に第一刷が発行。ダイヤモンド社。305ページ。ソフトカバー。127mm×188mm。四六判。

副題は「ビジネスマンの父が我が子のために書きためた『働くことの本質』」。

四人の子供がいる著者の森岡毅。その子供たちに向けて、就職や仕事に従事する上でのアドバイスを書き溜めていたものを、編集者が読んで、出版が決定したという経緯。

そのため、かなり親身になっているし、深い経験を交えつつ語っている作品。

一般的なビジネス書とはテイストが異なり、ノンフィクション作品や、ある種のビジネスをテーマにした私小説のような著作。

子供たちに向けて書いている前提なので、読者は「君」という形で呼びかけられる。

君がコントロールできる変数は、①己の特徴の理解と、②それを磨く努力と、③環境の選択、最初からこの3つしかないのである。(P.56「第2章 学校では教えてくれない世界の秘密」)

自分が制御できることにフォーカスすべきという姿勢。その話は、後半の自分の強みや弱みの話にも繋がっていく。

また、その前の部分では、世の中は平等ではな、不公平であるという現実を伝えている。

学校を卒業した後には、そのような世界で生きて行かななければならないということを改めて記述している。

加えて、資本主義というシステムを「無知であることと、愚かであることに、罰金を科す社会」と定義している。

会社が給料を払っている対象は、君の強みに対してであり、君が弱みを克服する努力ではない。(P.279「第6章 自分の“弱さ”とどう向き合うのか?」)

会社員であれば、会社は、その人の強みにお金を払っている。

同様に、フリーランスや個人事業主であれば、クライアントは、その人の強みにお金を払っているのである。

そのため、努力や頑張りといったものには、基本的にお金を払ってくれる人はいないということ。

そして、強みを伸ばし続けることが大切であるという話。

働き方と同時に、生き方や人生観といった部分にまで、迫る書籍である。

感想

これまでの森岡毅の著作とは、少し毛色の異なるもの。

上記した通り、ノンフィクション作品やビジネスを主題に置いた私小説を読んでいるような感じであった。

特に書名と同じタイトルの「第5章 苦しかったときの話をしようか」など。

そこでも繰り返し、自分自身の強みを活かしなさいと伝えている。

大切なことは自分の強みで戦うしかないことと、自分の強みを知っておくことの2つ。(P.257「第5章 苦しかったときの話をしようか」)

プロの世界や資本主義のメカニズムは、冷淡で明確。そのために、実績をしっかりと残すことが大切と。

そして、顕著な実績を残せば、世の中はそのような人物を見逃すことはしない。

何故なら、そのような人と組めば、売り上げが伸びたり、認知が上がったり、といったメリットがあるから。

このまま日本人がボンヤリしたまま、“ワークライフバランス”とか寝ぼけたことを言っているとますます落ちるだろう。Work is an important part of your lifeではないのか? 二者択一でバランスをとってどうする!(P.145「第3章 自分の強みをどう知るか」)

この辺りの主張も、同意できる。

私の場合は、個人事業主というかフリーランスで仕事をしているから、というのもあるかもしれないが。

ただ、ワークライフバランスといったように、明確に仕事とプライベートの時間を区分けするというのが、あまりよく分からないというのもある。

ほぼほぼ、仕事とプライベートの境目を無くしてしまえば、とても充実した時間を過ごせるように思うから。

閑話休題。

ビジネス書としても、もちろん読めるし、ノンフィクション作品としても読める、素晴らしい著作。

特に若い人に、もしくは若い気持ちを蘇らせたい人には、非常にオススメの作品である。

書籍紹介

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