
三島由紀夫(みしま・ゆきお、1925年~1970年)といえば、耽美的で難解な小説の書き手、あるいは衝撃的な最期を遂げた思想家というイメージが強いかもしれません。
しかし、彼の遺した膨大なエッセイや対談集、紀行文に触れるとき、その印象は大きく覆されます。
そこには、驚くほどユーモラスで、明晰な論理を展開し、そして人間的な魅力に溢れた「もう一人の三島由紀夫」の姿。
この記事では、そんな三島由紀夫のエッセイの中から、特に初心者にもおすすめしたい本を厳選してご紹介します。
小説とは一味違う、彼の思考の核心や素顔に触れることができる必読書ばかり。あなたにぴったりの一冊を見つけるための選び方のヒントにもなるはずです。
さあ、どの本から三島文学の新たな扉を開きますか。
1. 『不道徳教育講座』 三島由紀夫
おすすめのポイント
三島由紀夫入門として、これ以上ないほど最適な本です。
「大いにウソをつくべし」「痴漢を歓迎すべし」など、挑発的なタイトルが並びますが、その実態は社会の偽善や建前を痛烈な皮肉とユーモアで暴き出す、痛快なエッセイ集。
各編が短くテンポが良いため、普段あまり本を読まない人でもスラスラと読み進められます。
難解な思想家というパブリックイメージを根底から覆す、三島の軽妙洒脱な一面に触れることができるでしょう。
この本は、三島由紀夫のエッセイの中でも特におすすめで、彼の知性と人間観察の鋭さを楽しみながら体感できる一冊です。
次のような人におすすめ
- 三島由紀夫の作品を初めて読む人
- 難解な文学ではなく、面白くて笑える本を求めている人
- 社会の常識や道徳に、少しだけ疑問を感じている人
- 人間心理の裏側を覗いてみたい人

2. 『三島由紀夫紀行文集』 佐藤秀明(編) 三島由紀夫(著)
おすすめのポイント
三島の作家人生の転機となった『アポロの杯』をはじめ、国内外の紀行文を集めたアンソロジー。
本書を読むことで、旅という体験を通して三島の感受性や思想がどのように変化していったのかを辿ることができます。
特にギリシャでの「太陽」との出会いは、彼の作品を理解する上で非常に重要です。鮮やかな筆致で描かれる世界各地の風景と、それに対する鋭い観察眼が光る、知的な旅の記録。
紀行文の名手としての一面を発見できる、おすすめの入門書です。
次のような人におすすめ
- 三島由紀夫の作品を網羅的に読みたい人
- 様々な時代の三島の文章に触れたい人
- 一冊で彼の紀行文の魅力を味わいたい人
- 旅が人間をどう変えるのかに興味がある人
3. 『小説家の休暇』 三島由紀夫
おすすめのポイント
三島由紀夫が30歳を迎えた年に書かれた、才気とユーモアに溢れるエッセイ集。
芸術論や社会時評といった硬質なテーマも扱いながら、その語り口はどこまでも軽やかでパーソナル。
「重たい」三島像からしばし離れて、彼の日常的な思索や人間味あふれる素顔に触れることができます。
彼の鋭い感性と知性が、日常の断片をどのように切り取り、料理するのかを味わえる一冊。三島由紀夫のエッセイの豊かさを知るためにおすすめの本です。
次のような人におすすめ
- 三島由紀夫の人間的な側面に触れたい人
- 知的なユーモアや皮肉の効いた文章が好きな人
- 『不道徳教育講座』が面白かった人
- 小説以外の三島の文章を手軽に楽しみたい人
4. 『葉隠入門』 三島由紀夫
おすすめのポイント
「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という有名な一句を、三島独自の視点で読み解いた思想的エッセイ。
本書で三島が提示するのは、単なる死への憧れではありません。
常に死を意識することで、いかに「生」を輝かせるかという、逆説的でありながら情熱的な「生の哲学」です。
彼の後期の思想や行動を理解する上で避けては通れない、最重要文献の一つ。なぜ彼はあの最期を選んだのか、その根源に触れるヒントがここにあります。
三島由紀夫の思想を知るためにおすすめの本として、多くの読者に挙げられる一冊です。
次のような人におすすめ
- 三島由紀夫の思想の核心を知りたい人
- 「武士道」や日本の精神文化に興味がある人
- 生き方や死生観について深く考えたい人
- 彼の最期の行動の背景にある哲学を理解したい人

5. 『若きサムライのために』 三島由紀夫
おすすめのポイント
学生運動が激化していた1960年代末、平和と繁栄の中で精神的な規範を失いつつあった日本の若者たちへ向けて、熱く語りかけたエッセイ・対談集。
「サムライ」という言葉をキーワードに、勇気、作法、信義、そして肉体の重要性を説きます。その語り口は平易で力強く、まるで情熱的な師からのメッセージのよう。
現代を生きる我々の心にも響く、普遍的なテーマが散りばめられています。生きる指針を求める人にこそおすすめしたい本です。
次のような人におすすめ
- 人生の目的や指針を探している若い世代
- 三島由紀夫の熱いメッセージに触れたい人
- 行動哲学や自己鍛錬に関心がある人
- 1960年代の日本の社会情勢に興味がある人
6. 『文章読本』 三島由紀夫
おすすめのポイント
古今東西の名文を豊富な実例として引きながら、文章の美しさと技巧を解き明かす、三島流の文章講義。
彼の目指す文章の理想は「格調と気品」。単なるテクニック論に留まらず、文章を深く味わう「精読者(リズール)」になるための道を示してくれます。
文章を書く人だけでなく、読むことの喜びを再発見したいすべての人におすすめ。
この本を読めば、普段何気なく読んでいる文章が、まったく違って見えてくるはずです。三島由紀夫の美学が凝縮された、知的な刺激に満ちた一冊。
次のような人におすすめ
- 文章を上手に書きたい、読みたいと思っている人
- 三島由紀夫の華麗な文体の秘密を知りたい人
- 論理的で美しい文章の書き方を学びたい人
- 読書体験をより深いものにしたい人

7. 『太陽と鉄・私の遍歴時代』 三島由紀夫
おすすめのポイント
三島文学の最重要評論であり、彼の行動哲学の集大成。言葉(ペン)と肉体(剣)、太陽と鉄(ボディビル)といった対立概念を通じて、自己の存在と死を巡る思索を極限まで突き詰めた作品です。
文章は観念的で難解ですが、彼の精神世界の最も深い場所を覗き見るような、唯一無二のがい読書体験ができます。
彼の最期を理解するための「思想的遺書」とも言える本書は、覚悟を決めて挑む価値のある一冊。この本を読まずして、三島由紀夫を語ることはできません。
次のような人におすすめ
- 三島由紀夫の哲学の神髄に触れたい上級者
- 肉体と精神の関係性について考えたい人
- 芸術や存在、死についての哲学的な思索が好きな人
- 難解な本に挑戦し、自分の思考力を試したい人
8. 『三島由紀夫 石原慎太郎 全対話』 三島由紀夫 石原慎太郎
おすすめのポイント
戦後日本を代表する二人のスター作家、三島由紀夫と石原慎太郎。
1956年から1969年にかけて行われた全9編の対話を収録した本書は、時代の証言であると同時に、スリリングな知の応酬の記録です。
互いの才能を認め合いながらも、次第に明らかになる思想的な隔たり。
理想主義者の三島と現実主義者の石原、二人の生の言葉のぶつかり合いは、抽象的な思想を人間的なドラマとして浮かび上がらせます。
対談形式で読みやすいため、初心者にもおすすめできる本です。
次のような人におすすめ
- 対談や対話形式の読み物が好きな人
- 三島由紀夫と石原慎太郎の関係性に興味がある人
- 戦後日本の文学や思想の歴史を知りたい人
- 二人の知性が火花を散らす様子を体感したい人
9. 『行動学入門』 三島由紀夫
おすすめのポイント
言葉が空虚なものとなり、行動が失われた戦後日本社会を背景に、「男としての爽快な生き方」を説いた実践的なエッセイ集。
口述筆記で書かれたため、まるで三島が直接語りかけてくるようなライブ感があります。
テーマは「どう行動するか」「どう待つか」「どう困難に立ち向かうか」など、現代の自己啓発書にも通じる普遍的なもの。
難解な文学論ではなく、より良く生きるための哲学として、多くの示唆を与えてくれる一冊です。
次のような人におすすめ
- 優柔不断で、決断力や行動力を身につけたい人
- 三島由紀夫流の「生き方の哲学」を学びたい人
- 自己啓発的な内容に興味がある人
- 言葉だけでなく行動で示すことの重要性を感じている人

10. 『源泉の感情』 三島由紀夫
おすすめのポイント
自決直前に刊行された、画期的な対談集。
小林秀雄、安部公房、野坂昭如といった文学者から、伝統芸能の大家まで、各界の第一人者たちと交わした19の対談を収録。
美、文学、エロチシズム、国家、死、伝統など、多岐にわたるテーマについて丁々発止の議論が繰り広げられます。
三島の幅広い知的関心と、対談相手によって柔軟に変化する顔が見えるのが魅力。知の巨人たちがぶつかり合う総力戦は、まさに圧巻の一言です。
次のような人におすすめ
- 昭和の文学や文化を牽引した巨人たちの思想に触れたい人
- 知的な刺激に満ちた対談を読みたい人
- 三島由紀夫の幅広い交友関係や関心のありかを知りたい人
- 興味のある人物やテーマから拾い読みを楽しみたい人
11. 『小説読本』 三島由紀夫
おすすめのポイント
「小説家を志す人々の為に」書かれた、三島流の小説創作術。自身の創作の秘密を惜しげもなく披露し、小説とはいかに構築されるべきかを論じます。
インスピレーションよりも緻密な設計と構成を重んじる彼の「建築家」のようなアプローチは、作家志望者でなくとも知的好奇心を大いに刺激されるはず。
三島のあの壮麗な小説群が、どのような設計図に基づいて書かれていたのか、その舞台裏を覗き見ることができる貴重な一冊です。
次のような人におすすめ
- 小説や物語の創作に興味がある人
- 三島由紀夫の小説の構造をより深く理解したい人
- 物事を論理的に構築する方法を学びたい人
- クリエイターの創作論や方法論を読むのが好きな人
12. 『古典文学読本』 三島由紀夫
おすすめのポイント
『古事記』から『源氏物語』、『葉隠』に至るまで、日本の古典文学を三島独自の鋭い美意識で読み解く評論集。
彼は古典を単なる過去の遺物としてではなく、現代にも通じる日本の「文化意志」の生きた源泉として捉えます。
彼の美学や思想のルーツが、日本の古典に深く根差していることがよくわかる一冊。
三島の情熱的な案内によって、難しそうに見える古典の世界が、豊饒で魅力的なものとして立ち現れてきます。
次のような人におすすめ
- 日本の古典文学に興味はあるが、何から読めばいいかわからない人
- 三島由紀夫の美意識の源流を知りたい人
- 専門家の解説で古典をより深く味わいたい人
- 日本の文化や伝統について考えたい人
まとめ
三島由紀夫のエッセイや対談集の中から、初心者にもおすすめの本を12冊ご紹介しました。
ユーモアに溢れた軽妙なものから、彼の思想の核心に迫る重厚なものまで、その内容は驚くほど多彩です。
難解な小説家のイメージに臆することなく、まずは手に取りやすそうな一冊から、彼の言葉に触れてみてください。
そこにはきっと、あなたの知的好奇心を刺激し、人生を豊かにするような発見があるはずです。
この記事が、あなたと三島由紀夫の新たな出会いのきっかけとなれば幸いです。
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三島由紀夫文学館
山梨県南都留郡山中湖村にある三島由紀夫の文学館。山中文学の森公園にある。
公式サイト:三島由紀夫文学館














