
「平岩弓枝の小説を読んでみたいけれど、作品が多すぎて何から手をつければいいか分からない」。
そんな悩みを持つ初心者の方も多いかもしれません。
平岩弓枝(ひらいわ・ゆみえ、1932年~2023年)は、直木賞から文化勲章まで受賞した国民的作家であり、その作品世界は時代小説、現代小説、推理小説と非常に多岐にわたります。
また、『肝っ玉かあさん』や『御宿かわせみ』など、国民的ドラマの脚本家・原作者としても知られ、知らず知らずのうちに彼女の物語に触れていた、という方も少なくないでしょう。
膨大な著作の中から、自分にぴったりのおすすめの本を見つけるのは大変な作業です。
この記事では、平岩弓枝の小説の中から、特に初心者向けにおすすめしたい作品を「読みやすさ」を基準に12冊厳選しました。
優雅なミステリーから、骨太な人間ドラマ、壮大な歴史ロマンまで、あなたの好みに合う一冊を見つけるための選び方ガイドとしてご活用ください。
1. 『花ホテル』平岩 弓枝
おすすめのポイント
フランスのコートダジュールに佇むリゾートホテル「花ホテル」を舞台にした、連作短編形式のミステリアス・ロマン。
光あふれる南仏の華やかな設定と、美貌の女主人・杏子をめぐる色香漂う大人の恋愛が魅力です。
発表は1983年ですが、「文章も古く感じず美しい日本語が心地良かった」との評価も多く、平岩弓枝作品の優雅な世界観への入り口として最適。
日常を忘れて上質な時間を過ごせる小説です。
次のような人におすすめ
- 日常を忘れて、上質な大人のロマンスに浸りたい人
- フランスのコートダジュールなど、海外の華やかな舞台設定が好きな人
- 古さを感じさせない、美しい日本語で書かれた小説を読みたい人

2. 『風祭』平岩 弓枝
おすすめのポイント
莫大な遺産を相続したヒロイン・三重子。
ヨーロッパ旅行中に再会した恋人・佐和木には、裕福な前妻二人がいずれも外国旅行中に事故死した過去が。
本作は、古典的なゴシック・ロマンスの系譜にある大型ミステリー・ロマンです。
殺人事件が続きますが、読者からは「ふんわりと軽く読める」「品の良い」作品と評されています。
緊迫したスリラーよりも、ヨーロッパの優雅な雰囲気を楽しむエレガント・サスペンスとしておすすめします。
次のような人におすすめ
- ハラハラドキドキするスリラーより、品の良いサスペンスが読みたい人
- ヨーロッパの優雅な雰囲気が漂う、ロマンティックなミステリーを求める人
- 裕福なヒロインと謎めいた男性が登場する、古典的なロマンス設定が好きな人
3. 『湯の宿の女(新装版)』平岩 弓枝
おすすめのポイント
平岩弓枝が描く女性像の「ダークサイド」に触れられる、全10編の短編集。
表題作では、過去に自分を捨てた男と温泉旅館で再会した女の、静かな殺意が描かれます。
本書のテーマは「愛の地獄」。
「描かれている女性たちが皆生々しい」と評されるように、理想化されていない、執念や諦観、業といった女性の「生」の感情が巧みに描出されます。
『花ホテル』のような優雅な世界とは異なる、人間の暗部を描く文学的な一面を知ることができる一冊です。
次のような人におすすめ
- 理想化された人物像より、人間の暗部や業を描く文学的な作品が好きな人
- 桐野夏生や湊かなえの作品にも通じるような、ヒリヒリする読後感を求める人
- 女性の執念や生々しい感情を描き切った、読み応えのある短編集を読みたい人

4. 『女の家庭(新装版)』平岩 弓枝
おすすめのポイント
『花ホテル』とは対極にある、骨太の社会派ドラマ。
パリでの海外赴任を終えた永子を待っていたのは、姑と小姑との同居生活と想像を絶する気苦労でした。
情け容赦のない嫁いびりなど、日本の家制度における女性の葛藤を容赦なく描きます。
読むのが辛くなるほどのリアリティですが、同時に、苦難の中で女性が自立を見出していく物語でもあり、最後には深いカタルシスを提供してくれます。
次のような人におすすめ
- 山崎豊子のような、骨太の社会派・人間ドラマが好きな人
- 女性の自立や、社会的な葛藤を描いたリアリティのある物語に興味がある人
- 日本の家制度や、嫁姑問題をテーマにした、読み応えのある本を探している人
5. 『セイロン亭の謎』平岩 弓枝
おすすめのポイント
異国情緒あふれる神戸・山の手を舞台にした、初心者にとって日常ミステリーの入り口となる作品。
人気紅茶店「セイロン亭」オーナーの一族の殺人事件を扱いますが、「登場人物が少なめで展開も早くサクサクととても読みやすい」と評価されています。
神戸の洗練された雰囲気と紅茶のグルメミステリー的要素も魅力。
平岩ミステリーの中で最も読みやすい一冊として、軽い読書を楽しみたい方に最適です。
次のような人におすすめ
- ミステリーは読みたいが、重い話や難しい話は苦手な初心者
- 神戸の異人館のような、異国情緒あふれる舞台設定が好きな人
- 紅茶を飲みながらゆったり読めるような、グルメ要素のあるミステリーを求める人

6. 『パナマ運河の殺人』平岩 弓枝
おすすめのポイント
豪華客船を舞台にした「クルーズ×ミステリー」ですが、本書の最大の魅力はミステリー部分ではありません。
読者からは作者自身の体験に基づく「パナマ運河を通過するシーンの描写は圧巻」「船上の生活が手に取るよう」と、旅行記としての側面が絶賛されています。
比類なき豪華客船の旅情小説として、ミステリーはあくまでスパイスと捉えて読むのがおすすめです。
次のような人におすすめ
- 謎解きミステリーよりも、豪華客船の旅情や旅行記として小説を楽しみたい人
- 「水の階段」と呼ばれるパナマ運河の、圧巻の風景描写を体験したい人
- クルーズ船での優雅な生活が、手に取るようにわかる小説を読みたい人
7. 『女の旅(新装版)』平岩 弓枝
おすすめのポイント
「ザ・昭和のメロドラマ」とも評される、王道の恋愛長篇。
旅行社に勤める美里とデザイナーの大介、そして二人の関係をかき乱す富豪未亡人・亜稀子。
雪の平泉、桜の鎌倉、紅葉のニューヨークといった美しい風景を背景に、王道の三角関係が描かれます。
現代のドライな恋愛小説にはない、情念の濃さや「古き良きメロドラマ」の様式美こそが本作の魅力。
情熱的な恋愛模様を楽しみたい読者向けの作品です。
次のような人におすすめ
- 昭和の雰囲気を感じる、古き良き「メロドラマ」の様式美を楽しみたい人
- 美しい日本の風景やニューヨークを舞台にした、王道の恋愛小説が読みたい人
- 情念の濃い、情熱的な三角関係を描いた物語を求める人

8. 『おんなみち(上・新装版)』平岩 弓枝
おすすめのポイント
単なる恋愛ロマンに留まらない、「女性の大河ドラマ」と評される傑作。
明治時代、静岡の茶商の娘・世津が、親の決めた許嫁を捨てて「かけおち」するところから物語は始まります。
本作の魅力は恋愛だけでなく、激動の時代の「茶相場」や「産業革命」といったビジネスの野心もダイナミックに描いた点。
NHKの朝ドラ『あさが来た』のような、女性の一代記とビジネス小説の面白さを兼ね備えています。
次のような人におすすめ
- NHKの朝ドラ『あさが来た』のような、強い女性の一代記が好きな人
- 恋愛だけでなく、明治時代のビジネス(茶相場など)のダイナミズムにも興味がある人
- 骨太で読み応えのある「女性大河ドラマ」小説を読みたい人
9. 『旅路(上)』平岩 弓枝
おすすめのポイント
昭和初期の北海道を舞台に、若い鉄道員夫婦の生活を描いたヒューマンドラマ。
本作は単なる小説ではなく、昭和の国民的イベントであった伝説的なNHK連続テレビ小説、朝ドラの原作です。
昭和天皇が作者を宮中に招き、ドラマについて語り合ったという逸話は、本作がいかに時代の空気と人々の記憶を正確に捉えていたかを示す証拠。
「昭和という時代そのもの」を体験させてくれる、歴史の証言としての価値も持つ作品です。
次のような人におすすめ
- 「昭和という時代そのもの」の空気を体験したいと願う読者
- 歴史の証言としての文学や、心温まるヒューマンドラマを求める人
- 昭和史に残る、伝説的な朝ドラの原作小説に触れてみたい人

10. 『鏨師(新装版)』平岩 弓枝
おすすめのポイント
平岩弓枝の原点であり、その名を世に知らしめた第41回直木賞受賞作。
偽銘を彫る「鏨師」とそれを見破る刀剣鑑定家の対決など、芸の世界に生きる人々の「矜持」と「厳しさ」を描いた初期短編集です。
「濃厚な人間ドラマ」と絶賛される一方で、「古い言葉も多く苦戦した」という感想もあるため、初心者の方は注意が必要かもしれません。
平岩弓枝の作家性の“核”に触れたい、読み応えのある文学作品を求める方におすすめします。
次のような人におすすめ
- 平岩弓枝の作家性の“核”に触れたい、文学作品志向の読者
- 職人や芸の道に生きる人々の、厳しい世界や矜持を描いた物語が好きな人
- 直木賞受賞作など、文学的評価の確立した作品から読み始めたい人
11. 『黒い扇(上・新装版)』平岩 弓枝
おすすめのポイント
平岩弓枝の得意分野であるミステリーと伝統芸能の世界を繋ぐ、橋渡し的な作品。
日本舞踊・茜流の家元周辺で起こる連続変死事件を扱います。
『鏨師』のような芸道ものは専門性が高いですが、本作は現代(戦後)を舞台に、銀座の料亭の娘と人気俳優という若い男女が探偵役を務めるため、非常に読みやすいロマンミステリーに仕上がっています。
次のような人におすすめ
- 伝統芸能(日本舞踊など)の裏側には興味があるが、難しい小説は苦手な人
- 華やかな世界の闇を描く、読みやすいロマンミステリーを探している人
- 『鏨師』のような本格的な芸道ものへの入門として、まずは読みやすい一冊を試したい人

12. 『火の航跡』平岩 弓枝
おすすめのポイント
有名カメラマンの夫が失踪。
新婚の妻・久仁子は、夫の「航跡」を追い、東京、佐賀、ギリシャ、マイセン、メキシコへと旅立ちます。
本作は「誰が犯人か」の謎解きよりも、有田焼にまつわる一族の「陰の歴史」と驚愕の真実に直面する壮大なサスペンスです。
日本の伝統がグローバルな舞台と結びつく、その圧倒的なスケール感が最大の魅力です。
次のような人におすすめ
- 謎解きミステリーより、壮大な家族の物語やロマンティック・サスペンスが好きな人
- 有田焼などの日本の伝統が、国際的な舞台と結びつくスケール感のある物語を求める人
- 一族の隠された歴史が暴かれていくような、重厚な物語が読みたい人
まとめ:最初の一歩、そして広がる平岩弓枝の世界
読みやすさ順に、平岩弓枝のおすすめ小説12冊を紹介しました。
優雅なミステリーから、社会派ドラマ、壮大な歴史ロマンまで、そのジャンルの幅広さを感じていただけたのではないでしょうか。
もし、このリストを読んでもまだ迷う、あるいは「平岩弓枝の真骨頂」から触れてみたいという方には、代表作である時代小説『御宿かわせみ』シリーズも、おすすめします。
旅籠「かわせみ」を舞台にした人情捕物帖であり、一話完結の短編形式で読みやすく、平岩文学の温かく知的な魅力が凝縮されています。
このリストが、あなたの好みや気分に合った、最高の「最初の一冊」を見つける手助けとなれば幸いです。
そこから、奥深い平岩弓枝の文学の世界が広がっていきます。
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