
柴崎友香(しばさき・ともか、1973年~)の小説は、私たちが普段見ている景色を一変させる力を持っています。
何気ない街の風景や、ふとした瞬間の記憶。
それらを丁寧にすくい上げる彼女の作品は、劇的な事件が起きなくても、読む人の心を静かに揺さぶります。
今回は、柴崎友香の作品の中から、特におすすめの本を厳選しました。
初心者が読みやすい順に紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
映像化された話題作から、文学賞を受賞した名作まで。
あなたにぴったりの一冊がきっと見つかるはずです。
1.『フルタイムライフ』柴崎友香
おすすめのポイント
社会人としての生活に戸惑いや疲れを感じている方に、最初におすすめしたい本です。
大阪の会社で働き始めた新入社員の主人公が、仕事や人間関係に少しずつ慣れていく過程が描かれています。
大きなサクセスストーリーではなく、電話応対の緊張感や上司との距離感といった、リアルな日常が綴られているのが特徴です。
働くことへの違和感を優しく肯定してくれるような、温かみのある作品です。
次のような人におすすめ
- 仕事や職場での人間関係に少し疲れている人
- 等身大の女性が主人公の小説を読みたい人
- 関西弁の柔らかい語り口に癒やされたい人

2.『きょうのできごと』柴崎友香
おすすめのポイント
柴崎友香のデビュー作であり、行定勲監督によって映画化もされた代表作の一つです。
京都の大学院へ進む友人の引越祝いに集まった大学生たちの一夜を描いています。
特に劇的な事件は起こりませんが、どこか懐かしく、二度と戻らない青春の時間が封じ込められています。
短めの章で構成されており、非常に読みやすいため、柴崎友香の世界観に触れる最初の一冊として最適です。
次のような人におすすめ
- 淡々とした日常の中にドラマを感じたい人
- 京都の街の空気感が好きな人
- 映画版が好きで原作との違いを楽しみたい人
3.『寝ても覚めても』柴崎友香
おすすめのポイント
恋愛小説としてのエンターテインメント性が高く、物語の先が気になってページをめくる手が止まらなくなる本です。
かつて愛した男と同じ顔を持つ別の男と出会い、恋に落ちるという衝撃的な設定が話題を呼びました。
濱口竜介監督による映画化でも知られていますが、原作では主人公の心理描写がより緻密に描かれています。
人を好きになることの不可解さや、過去の記憶との葛藤が胸に迫る作品です。
次のような人におすすめ
- 一気読みできる面白い恋愛小説を探している人
- 少しミステリアスな展開が好きな人
- 映画を見て主人公の心情をより深く知りたいと思った人

4.『週末カミング』柴崎友香
おすすめのポイント
平日の仕事から解放された「週末」をテーマにした連作短編集です。
少し遠出をしたり、家で片付けをしたり、友人に会ったりする女性たちの姿が描かれています。
一話一話が独立しており短いため、通勤時間や寝る前の読書など、隙間時間に読むのに適しています。
何気ない休日が、この本を読むことで少し特別な時間のように感じられるかもしれません。
次のような人におすすめ
- 長編小説を読む時間がなかなか取れない人
- 旅や散歩に出かけたくなるような本が欲しい人
- 週末のゆったりした時間に読書を楽しみたい人
5.『主題歌』柴崎友香
おすすめのポイント
写真や「かわいさ」という感覚をキーワードに、30代前後の女性の心情を繊細に描いた作品です。
明確なストーリー展開よりも、その場の空気感や、言葉にしにくい感情の揺れ動きを味わうことができます。
過去の記憶と現在の生活が交錯する様子が、柴崎友香らしい透明感のある文体で表現されています。
同世代の方であれば、抱えている漠然とした不安や希望に共感できる部分が多いはずです。
次のような人におすすめ
- 写真やカメラ、視覚的な表現に興味がある人
- 「かわいい」という感覚について深く考えてみたい人
- 30代前後の女性のリアルな心情に触れたい人

6.『わたしがいなかった街で』柴崎友香
おすすめのポイント
個人の生活と、世界で起きている戦争や歴史といった大きな出来事が、どのように繋がっているのかを問いかける作品です。
主人公がテレビでドキュメンタリーを見続ける描写などを通して、自分とは関係のない場所への想像力が描かれています。
少しシリアスなテーマですが、現代社会に生きる私たちが無意識に感じている不安や感覚が鋭く切り取られています。
日常小説から一歩踏み込んで、社会との関わりを考えさせる深みのある一冊です。
次のような人におすすめ
- 日常を描くだけの小説では物足りないと感じる人
- ドキュメンタリー番組や歴史に関心がある人
- 震災後の社会の空気感を文学を通して考えたい人
7.『その街の今は』柴崎友香
おすすめのポイント
織田作之助賞などを受賞し、柴崎友香の作家としての評価を決定づけた重要な作品です。
大阪の街を歩きながら、現在の風景の中に、かつてそこにあった戦前の街や人々の記憶を重ね合わせていきます。
古地図や古い写真を手がかりに街を探索するような面白さがあり、知的興奮を味わえます。
土地に刻まれた記憶や歴史を感じながら街を歩くのが好きな方には、たまらない一冊となるでしょう。
次のような人におすすめ
- 大阪の街や地理、歴史に興味がある人
- 古地図や古写真を見るのが好きな人
- 街歩きや散歩をテーマにした深い小説を読みたい人

8.『ドリーマーズ』柴崎友香
おすすめのポイント
タイトル通り「夢」や、目に見えない気配、少し不思議な現象をテーマにした短編集です。
ホラー小説のような怖さではなく、日常のふとした瞬間に異界が顔を覗かせるような、静かな不気味さと美しさがあります。
現実と非現実の境界が曖昧になる感覚を楽しむことができ、想像力を刺激される読書体験が待っています。
比喩表現も豊かで、文学的な表現の面白さを存分に味わえる作品です。
次のような人におすすめ
- 不思議な話や、少しスピリチュアルなテーマが好きな人
- 夢の中のような浮遊感のある物語を楽しみたい人
- 説明のつかない出来事に魅力を感じる人
9.『パノララ』柴崎友香
おすすめのポイント
奇妙な増改築を繰り返した家での共同生活を描いた、少しSF的な要素を含んだ長編小説です。
同じ一日が繰り返されるタイムループ現象などが日常の延長線上で描かれており、不思議な読後感を残します。
建築的な想像力を刺激される空間描写も魅力的で、純文学とSFの境界を行き来するような面白さがあります。
普通の小説とは一味違う、構成の妙を楽しみたい方におすすめの本です。
次のような人におすすめ
- 少し不思議な(SF的な)設定の物語が好きな人
- 建築や変わった家の構造に興味がある人
- 血縁によらない共同生活のあり方に関心がある人

10.『春の庭』柴崎友香
おすすめのポイント
第151回芥川賞を受賞した、柴崎友香の代表作とも言える傑作です。
取り壊し予定のアパートから、隣にある洋館を眺めること。
「見る」「見られる」という行為を通じて、他者との距離感や、失われていく都市の風景が繊細に描かれています。
文章の密度が高く、じっくりと腰を据えて読むことで、その文学的な美しさを深く味わうことができます。
次のような人におすすめ
- 芥川賞受賞作や、質の高い純文学を読みたい人
- 世田谷など東京の住宅街の雰囲気が好きな人
- 視線や空間描写にこだわった小説を楽しみたい人
11.『百年と一日』柴崎友香
おすすめのポイント
33の短い物語からなる、非常に実験的でアートのような作品集です。
特定の主人公はおらず、ある場所における「百年の時間」と「一日の出来事」が並列に描かれています。
ストーリーを追うというよりは、言葉で描かれた美術作品を鑑賞するような、新しい読書体験ができます。
柴崎友香が追求してきた「場所と記憶」というテーマの到達点とも言える一冊です。
次のような人におすすめ
- 従来の小説の形式にとらわれない新しい表現に触れたい人
- 言葉の響きやイメージを重視する人
- 現代アートや詩的な文章が好きな人

12.『ビリジアン』柴崎友香
おすすめのポイント
子供時代の記憶や感覚を、鮮烈な解像度で蘇らせるような長編小説です。
小学校の教室の空気や、友人との微妙な距離感、孤独などが、色彩豊かな文章で綴られています。
内省的で静かな物語ですが、読み手の心の奥底にある記憶を呼び覚ますような力強さを持っています。
柴崎友香の作品世界に深く浸りたい、上級者の方にこそ読んでいただきたい本です。
次のような人におすすめ
- 静かで内省的な文学を好む人
- 子供時代の繊細な感覚や記憶を大切にしたい人
- 文章そのものの美しさや密度を味わいたい人
まとめ:柴崎友香の本で日常の解像度を上げよう
柴崎友香の作品は、読み進めるうちに、私たちの日常の見え方を変えてくれます。
まずは読みやすい『フルタイムライフ』や『きょうのできごと』から手に取ってみてください。
そして、さらに深い世界に触れたくなったら、『その街の今は』や『春の庭』へと読み進めていくのがおすすめです。
本を閉じた後、いつもの街並みが少し違って見えるような、素敵な読書体験を楽しんでください。
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