
日々の暮らしや人間関係に少し疲れてしまったとき、特効薬となるのが田辺聖子(たなべ・せいこ、1928年~2019年)のエッセイ。
芥川賞作家としての鋭い視点と、大阪弁の「はんなり」とした柔らかさが同居する文章は、現代人の凝り固まった心をほぐす最強のツールとなる。
「上機嫌」は才能ではなく、技術。
田辺聖子はそう説く。
恋愛、仕事、老い、そして古典文学に至るまで、彼女の著作は「自分で自分の機嫌をとる」ためのヒントに満ちている。
数ある作品の中から、初心者でも読みやすく、生きる力が湧いてくるおすすめの本の12冊を厳選。
今の気分に合わせて、最初の一冊を選んでみてほしい。
1.『上機嫌な言葉 366日』田辺聖子
おすすめのポイント
膨大な著作の中から、心を軽くする名言を厳選し、1月1日から大晦日まで366日分の日めくり形式で収録した一冊。
最初から通読する必要はなく、パッと開いたページの言葉が、その日の「心のサプリメント」になる。
「上機嫌」を自分でつくる技術や、怒りを損得勘定で捉えるユニークな視点は、読むだけで背筋が伸びる。
田辺聖子作品の入門書として最適。
次のような人におすすめ
- 忙しくて長い本を読む時間がないが、元気が出る言葉に触れたい人
- 自己肯定感が下がっており、優しく励ましてくれる本を探している人
- 友人へのプレゼントや、自分へのお守り代わりの一冊を求めている人

2.『歳月がくれるもの まいにち、ごきげんさん』田辺聖子
おすすめのポイント
年齢を重ねることを「劣化」ではなく、心が柔らかくなる「成熟」と捉え直すエッセイ集。
人生は自分の思い通りにはならないものだと受け入れつつ、その中で楽しみを見つける達人の知恵が詰まっている。
「独身も楽しい、結婚も楽しい」という全方位的な肯定感は、将来に不安を感じる読者の背中を強く押してくれる。
日常の些細な出来事を面白がる視点が光る。
次のような人におすすめ
- 「老い」に対してネガティブなイメージや恐怖心を抱いている人
- 完璧主義に疲れ、もっと肩の力を抜いて生きたいと感じている人
- 50代以降の生き方の指針となるような、前向きな随筆を探している人
3.『女のおっさん箴言集』田辺聖子
おすすめのポイント
女性の中にある、酒や色気を解する「おっさん」的な視点を肯定した痛快な箴言集。
清く正しく生きることを求められがちな女性に対し、毒舌と本音を交えて「アホやな」と笑い飛ばす姿勢がカタルシスを与える。
恋愛や夫婦関係における男女の機微を、綺麗事抜きで鋭く突いており、読むだけで日頃の鬱憤が晴れるような爽快感がある。
次のような人におすすめ
- 建前ばかりの人間関係に疲れ、本音で語られる言葉を求めている人
- 恋愛や結婚生活のモヤモヤを笑い飛ばしたい人
- 辛口でも愛のあるアドバイスや、スカッとする読書体験をしたい人

4.『老いてこそ上機嫌』田辺聖子
おすすめのポイント
89歳時点で刊行された、「エイジング・ポジティブ」の決定版。
「80だろうが90だろうが屁とも思っておらぬ」という宣言から始まり、好奇心さえあれば人は老いないと説く。
死生観さえも明るく、周囲に感謝される生き方を提示。
いわゆる「終活」の暗さは微塵もなく、最後まで人生を面白がり尽くすパンクな精神に勇気をもらえる。
次のような人におすすめ
- 高齢の親を持つ世代で、親の心理を知りたい、または本を贈りたい人
- リタイア後の人生をどのように楽しむか模索している人
- 年齢を言い訳にせず、新しいことに挑戦する意欲を持ちたい人
5.『篭にりんごテーブルにお茶…』田辺聖子
おすすめのポイント
身の回りにある小物、食べ物、旅の思い出などを、乙女のようなロマンチックな視点で綴った随筆集。
単なるモノの紹介にとどまらず、それにまつわる物語や時間を大切にする「丁寧な暮らし」の原点がここにある。
リンゴ一つ、お茶一杯から豊かなストーリーを紡ぎ出す観察眼と、少しシニカルなユーモアのバランスが絶妙。
次のような人におすすめ
- 日々の暮らしを大切にし、生活の質(QOL)を高めたい人
- 美しい文章で綴られる、食べ物や雑貨のエッセイが好きな人
- 日常の解像度を上げ、身近な幸せに気づきたい人

6.『残花亭日暦』田辺聖子
おすすめのポイント
数々のエッセイで面白おかしく描かれてきた最愛の夫「カモカのおっちゃん」との死別までの一年余りを綴った日記文学。
ユーモラスな夫婦像の裏にあった深い愛情と信頼関係が、静謐な筆致で描かれる。
夫が最期に残した「ワシはあんたの味方やで」という言葉は、夫婦という関係の究極の形を示しており、涙なしには読めない名著。
次のような人におすすめ
- 大切な人を失った悲しみの中にあり、心に寄り添う本を探している人
- 「カモカのおっちゃん」シリーズのファンで、夫婦の物語の結末を見届けたい人
- 深い愛情や絆を描いた、感動的なノンフィクションを読みたい人
7.『星を撒く』田辺聖子
おすすめのポイント
家庭の中に楽しみや工夫という「星」をちりばめることを提案するエッセイ。
主婦業を単なる労働ではなく、クリエイティブな演出家の仕事として捉え直す視点が新鮮。
「正しさ」よりも「楽しさ」を優先することで、家庭内の空気は劇的に変わる。
機嫌よく振る舞うことの重要性を説き、読むだけで家事や生活へのモチベーションが上がる。
次のような人におすすめ
- 家事や育児に追われ、自分の価値を見失いそうになっている主婦(主夫)
- 家庭内の雰囲気を明るくし、家族円満の秘訣を知りたい人
- ルーチンワークになりがちな日常に、彩りや楽しみを見出したい人

8.『田辺聖子の小倉百人一首』田辺聖子
おすすめのポイント
古典アレルギーの人にこそおすすめしたい百人一首の入門書。
架空のキャラクターによる対話形式で進み、「なんで見もしない女が好きになれまんねん」といった素朴なツッコミが読者の疑問を代弁してくれる。
文法解説ではなく、歌人の恋愛スキャンダルや人間臭さに焦点を当てた作品。
まるで現代のゴシップ記事を読むように古典を楽しめる。
次のような人におすすめ
- 学校の授業で古典が嫌いになったが、もう一度学び直したい大人
- 百人一首の意味を、丸暗記ではなくストーリーとして理解したい中高生
- 恋愛の和歌に込められた、昔も今も変わらない人間ドラマを知りたい人
9.『田辺聖子の万葉散歩』田辺聖子
おすすめのポイント
日本最古の歌集『万葉集』を、現代女性の視点で読み解く散策エッセイ。
特に大伴坂上郎女などの女性歌人を「恋多き女王様」としてキャラ付けし、その情熱や生き様を鮮やかに蘇らせる。
「姫百合」の歌の解釈など、文学探偵のような面白さも魅力。
気に入った歌を書き写したくなるような、万葉集の美しいリズムと熱量が伝わってくる。
次のような人におすすめ
- 万葉集に興味はあるが、専門書は難しくて手が出せない初心者
- 古代の女性たちがどのような恋愛をし、どう生きたのかを知りたい人
- 奈良の歴史や風景が好きで、文学を通じた旅気分を味わいたい人

10.『おくのほそ道を旅しよう』田辺聖子
おすすめのポイント
松尾芭蕉の『おくのほそ道』のルートを、田辺一行が賑やかに辿る紀行エッセイ。
気難しい芸術家という芭蕉のイメージを覆し、旅の途中で弱音を吐いたり人に頼ったりする「人生の旅の友」として再定義。
芭蕉の句と現代の旅の風景を対比させながら、変わらない日本の人情や風情を描き出す。
東北旅行のガイドブックとしても楽しめる。
次のような人におすすめ
- 『おくのほそ道』のルートを実際に旅してみたいと考えている人
- 松尾芭蕉という人物の、人間味あふれる側面を知りたい人
- 文学と旅行記が融合した、読み応えのあるエッセイを探している人
11.『文車日記 ― 私の古典散歩 ―』田辺聖子
おすすめのポイント
古事記から近代文学まで、田辺聖子が愛した書物について綴る読書日記。
「文車(ふぐるま)」とは本を運ぶ車のこと。
清少納言や額田王などの作家や登場人物を、まるで近所の友人のように親しみを込めて語る。
古典文学を権威ある教養としてではなく、悩み多き人間が書いたドラマとして紹介してくれる、極上のブックガイド。
次のような人におすすめ
- 何を読めばいいかわからない古典初心者のためのガイド本を探している人
- 枕草子や源氏物語の登場人物に、現代的な共感を覚えたい人
- 田辺聖子の読書遍歴を辿り、文学の奥深さに触れたい人

12.『人生は、だましだまし』田辺聖子
おすすめのポイント
真正面から問題にぶつかるのではなく、「だましだまし」やり過ごすことこそが大人の知恵であると説く。
「ほな」「そやね」という大阪弁の魔法を使って、人間関係の摩擦を減らし、執着を手放す生き方を提案。
「金属疲労」さえも人生の味わいとして肯定する視点は、生きるのが下手な現代人への優しい福音となる。
次のような人におすすめ
- 真面目すぎて生きづらさを感じている人
- 人間関係を円滑にする、具体的なコミュニケーションのコツを知りたい人
- 人生の後半戦を、無理せず楽な気持ちで生きていきたい人
まとめ:おせいさんの言葉は、人生の「お守り」になる
田辺聖子のエッセイ・随筆は、読むだけで心の凝りがほぐれ、自分を肯定する力が湧いてくる。
まずは1ページ読むだけで完結する『上機嫌な言葉 366日』や、笑って元気になれる『女のおっさん箴言集』から手に取ってみるのがおすすめ。
古典に興味があれば『田辺聖子の小倉百人一首』から入ることで、千年変わらない人間の営みに触れる楽しさを知ることができる。
どの本も、あなたの人生を「上機嫌」にするための心強い味方となってくれるはず。
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