
「生きづらい」「普通の幸せがわからない」と感じることはありませんか。
そんな時、心の凝り固まった部分を優しくほぐしてくれるのが、山崎ナオコーラ(やまざき・なおこーら、1978年~)の小説、エッセイです。
彼女の作品は、ジェンダーやルッキズム、家族のあり方といった現代的なテーマを扱いながらも、決して説教くさくありません。
「魂に性別はない」「自信は社会が決めるものではない」といった、ハッとするような視点。
それを、独特のフラットな文体と論理的な思考で描くのが特徴です。
今回は、初心者の方でも入りやすいおすすめの本を、読みやすさとテーマの深さに合わせて厳選しました。
心を軽くするエッセイから、価値観を揺さぶる小説まで。
あなたの今の気分に寄り添う一冊が、きっと見つかります。
1.『ベランダ園芸で考えたこと』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
マンションのベランダという限られた空間で繰り広げられる、植物との共生を描いたエッセイ集です。
著者は、植物を自分好みに「管理」するのではなく、予測不能な変化を受け入れる姿勢を貫いています。
思い通りに育たなくても、虫に食われても、それはそれで地球の一部。
「植物への愛は片想いでいい」という言葉には、見返りを求めない愛情の形が示されています。
山崎ナオコーラの作品の中でも特に日常に根差しており、支配や完璧主義から解放される心地よさを教えてくれる一冊です。
次のような人におすすめ
- 都会での生活に少し疲れを感じていて、手軽な癒やしや自然との関わりを求めている人
- 植物を枯らしてしまった罪悪感があり、園芸に対するハードルを下げたいと考えている人
- 思い通りにいかない人間関係や仕事の悩みを抱え、心を軽くするヒントを探している人

2.『指先からソーダ』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
著者初のエッセイ集であり、内向的だった学生時代や作家デビュー後の日々が綴られています。
タイトルの通り、指先から思考の泡が弾けるような、爽やかで軽やかな読み心地が魅力。
「成長しなくていい」「本は逃げ場所でいい」と、社会への適応に苦しむ人々の肩の荷を下ろしてくれる言葉が詰まっています。
劇的な感動や教訓を押し付けるのではなく、常温の感情で日常を肯定する姿勢。
隙間時間に読める短いエッセイを探している方にとって、最初の一冊として最適な、おすすめの本です。
次のような人におすすめ
- 社会に馴染めない自分を責めてしまいがちで、そのままで良いと言ってほしい人
- 読書を「勉強」としてではなく、純粋な「現実逃避」や楽しみとして味わいたい人
- 重いテーマの本ではなく、炭酸水のように気分をリフレッシュできる軽い読み物を探している人
3.『ブスの自信の持ち方』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
衝撃的なタイトルですが、その内容は現代社会のルッキズム(容姿至上主義)への鋭い批評です。
「ブスなんていない」という綺麗事ではなく、「ブスでも堂々と生きていい」という新しい自信の持ち方を提唱しています。
美しくなるための努力やコストから降りる自由を説き、容姿は単なる身体的特徴の一つに過ぎないと喝破。
「ブス2.0」という概念を通じて、女性が容姿の呪縛から解放され、より自由に生きるための思考法を提示しています。
外見のコンプレックスに悩むすべての人に読んでほしい、エンパワーメントの書です。
次のような人におすすめ
- 自分の容姿が好きになれず、自信を持つために整形や過度なダイエットを考えている人
- 「美しくなければ価値がない」という社会の風潮に息苦しさを感じている人
- ルッキズムやジェンダーの問題に関心があり、当事者の視点から論理的な意見を知りたい人

4.『お父さん大好き』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
家族、特に父親との関係性をテーマにした短篇小説集です。
表題作では、血のつながらない娘と暮らす中年男性の視点から、威厳のない「生活者としての父親」が描かれます。
また、収録作の「手」では、おじさんを愛でる対象として捉え、権威性を無効化するユニークな視点が光ります。
伝統的な家父長制の父親像を解体し、弱さや滑稽さも含めて男性を肯定する温かさ。
血縁にこだわらない新しい家族の絆や、重苦しくない父娘関係のモデルを提示してくれる作品です。
次のような人におすすめ
- 父親との距離感に悩んでいたり、義理の家族との接し方を模索している人
- 威厳のある父親像に違和感があり、もっとフラットな家族関係を築きたいと考えている人
- 「おじさん」という存在を、恋愛や権威とは別の「かわいい」視点で観察してみたい人
5.『浮世でランチ』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
会社を辞めてアジアへ旅に出た25歳の主人公を描く、開放感あふれる小説です。
「人生ってきっと、ワタクシたちが考えているより、二億倍自由なのよ」という作中の言葉は、閉塞感を持つ読者の心に深く刺さります。
仕事を辞めることや、生産性のない趣味に没頭することを、後ろめたさではなく積極的な選択として肯定。
日本社会の同調圧力から離れ、物理的な移動を通じて自分を取り戻していく過程は、読むだけで旅をしているようなカタルシスを与えてくれます。
現状を変えたいけれど勇気が出ないという方に、背中を押してくれる一冊です。
次のような人におすすめ
- 今の仕事や生活に行き詰まりを感じていて、環境をリセットしたいと願っている人
- 「自分探しの旅」に興味があるけれど、もっと哲学的で自由な視点が欲しい人
- 社会のレールから外れることへの不安を解消し、自分のための人生を生きたい人

6.『カツラ美容室別室』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
高円寺の美容室を舞台に、名前のつかない緩やかな人間関係を描いた物語です。
あからさまなカツラを被る店長や、友達以上恋人未満の関係を続ける男女など、登場人物たちはみな個性的。
恋愛関係にならなくても、結婚しなくても、ただ一緒にいるだけで心地よいという関係性を肯定しています。
「カツラ」という偽物を否定せず、仮面を被って生きることも一つの真実であるとする視点は、都市生活者の孤独を癒やします。
白黒つけない曖昧な関係や、高円寺のような雑多で自由な雰囲気が好きな方にぴったりの小説です。
次のような人におすすめ
- 「付き合う」「結婚する」といった既存の恋愛の枠組みに疲れ、もっと自由な関係を求めている人
- 孤独は嫌だけれど、濃密すぎる人間関係も苦手という、適度な距離感を好む人
- 高円寺や中央線沿線の独特なカルチャーや空気感が好きな人
7.『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
文藝賞を受賞したデビュー作にして、著者の名を世に知らしめた代表作です。
19歳の専門学校生と39歳の女性講師の恋愛を描きますが、そこに不倫のドロドロした湿り気はありません。
「人のセックスを笑うな」というタイトルは、他者の欲望や恋愛の形を世間体で裁くことへの拒絶宣言です。
年齢差や容姿の美醜を超えて、心が「形」に食い込んでいく瞬間の描写は圧巻。
純文学でありながら非常に読みやすく、恋愛における個人の尊厳を強く感じさせる名作です。
次のような人におすすめ
- 年の差恋愛や世間的には「ありえない」とされる関係に悩んでいる人
- 純文学に挑戦してみたいけれど、難解な文章は苦手という読書初心者
- 映画化された作品の原作を読み、映像とは違った独特の文体や空気感を味わいたい人

8.『ニセ姉妹』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
血のつながらない他人同士が「姉妹」として暮らす様子を描いた、新しい家族小説です。
3億円を当てたシングルマザーが選んだのは、実の家族との同居ではなく、気の合う友人たちとの共同生活でした。
「屋根だけの家」という開放的な空間で育まれるシスターフッド(女性同士の連帯)は、血縁の呪縛からの解放を意味します。
家族だからといって無理に一緒にいる必要はない。
自分で選んだ相手と支え合うユートピア的な生活は、現代の「孤立」に対する温かい処方箋となるでしょう。
次のような人におすすめ
- 実の家族との関係に息苦しさを感じており、血縁によらないつながりを求めている人
- シェアハウスや共同生活といった、新しいライフスタイルに関心がある人
- シングルマザーや独身女性が、互いに助け合って楽しく生きる物語を読みたい人
9.『ミライの源氏物語』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
日本最古の長編小説『源氏物語』を、現代的なジェンダー観と倫理観で読み解く画期的な一冊です。
光源氏の行動を「ロリコン」「性暴力」として冷静に指摘しつつも、物語自体の文学的価値は深く愛する姿勢が貫かれています。
特に、作中で不美人として笑われる女性たちの尊厳を回復しようとする「ナオコーラ訳」は必読。
古典をただありがたがるのではなく、現代の私たちの感覚で読んでいいのだと背中を押してくれます。
『源氏物語』に挫折した経験がある方でも、エッセイ感覚で楽しみながら古典の世界に触れられる、おすすめの本です。
次のような人におすすめ
- 『源氏物語』のあらすじは知っているが、現代の感覚では違和感を覚えていた人
- フェミニズムの視点から古典文学を再解釈することに知的な興奮を覚える人
- 古典文学を教養として身につけたいが、堅苦しい解説書は苦手という人

10.『母ではなくて、親になる』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
出産・育児を通して感じた違和感を、論理的に解きほぐしていく育児エッセイです。
「母親だから」という役割や母性神話のプレッシャーに対し、「親になる」というジェンダーニュートラルな言葉を用いることで対抗します。
授乳以外はすべて「親」の仕事であり、性別による役割分担は不要であるという主張は痛快。
離乳食の手作りや自己犠牲を強いる風潮にNOを突きつけ、自分らしい言葉と振る舞いで子どもと向き合う姿勢を提示しています。
育児に疲れている方や、プレママ・プレパパにとって、心の負担を劇的に軽くしてくれるバイブル的な一冊です。
次のような人におすすめ
- 「理想の母親像」に縛られてしまい、育児が辛い、しんどいと感じている人
- 夫婦での育児分担や、ジェンダーにとらわれない子育てに関心がある人
- 感情論や精神論ではなく、論理的に納得できる育児論を求めている人
11.『美しい距離』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
癌で死にゆく妻と、それをケアする夫の日常を描いた、静かで美しい小説です。
闘病記にありがちな「感動」や「涙」を安易に誘うことなく、夫婦の間に横たわる絶対的な「距離」を肯定しています。
たとえ夫婦であっても、死の苦しみや孤独を完全に共有することはできない。
しかし、その埋められない距離があるからこそ、相手を一人の人間として尊重できるのだという逆説的な愛が描かれています。
死生観を深めたい方や、ベタベタしない大人の夫婦愛に触れたい方におすすめの傑作です。
次のような人におすすめ
- パートナーとの死別や闘病という重いテーマに対し、お涙頂戴ではない物語を求めている人
- 「すべてを分かり合うこと」が愛だという価値観に疑問を持ち、自立した関係性を模索している人
- 死を恐ろしいものとしてではなく、日常の延長として静かに見つめたい人

12.『論理と感性は相反しない』山崎ナオコーラ
おすすめのポイント
著者が「代表作」と公言する、実験精神にあふれた短篇集です。
一般的に対立するとされる「論理」と「感性」が、実は相反するものではないことを小説という形式で証明しようと試みています。
メタフィクション的な構造や、架空のバンドの伝記など、自由奔放なスタイルで描かれる14の物語。
論理的に突き詰めた思考の果てに現れる、乾いた詩情(ポエジー)は、まさに山崎ナオコーラ文学の真骨頂です。
普通の小説には飽きた、知的な刺激や文学的な遊びを楽しみたいという方に、ぜひ挑戦してほしい一冊です。
次のような人におすすめ
- あらすじを追うだけの読書ではなく、著者の思考プロセスに参加するような知的な読書体験をしたい人
- 「論理的であること」と「感情的であること」の関係性について深く考えてみたい人
- 実験的でユニークな構成の小説を読み、文学の可能性を感じたい人
まとめ:ナオコーラ・ワールドへようこそ
山崎ナオコーラの作品は、読む人の心を縛っている「見えない鎖」を、言葉の力で解いてくれます。
それは「ブス」という言葉の再定義であったり、「親になる」という役割の書き換えであったりします。
読書は、現実から逃げるための場所であっていいのです。
もし、今の生活に息苦しさを感じているなら、気になった一冊を手に取ってみてください。
そこには、あなたが楽に息をするための、新しい思考の空間が広がっているはずです。
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