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【選書】奥田英朗のおすすめ本・書籍12選:小説、傑作、代表作、最悪、伊良部シリーズ

現代日本文学界で異彩を放つ作家、奥田英朗(おくだ・ひでお、1959年~)。

その魅力は、抱腹絶倒のユーモア小説から、背筋も凍る社会派クライムサスペンスまで、驚くべき作風の振り幅にある。

『イン・ザ・プール』のような笑える作品でファンになった読者が、次に手に取った『最悪』で衝撃を受けることも珍しくない。

多作な彼だからこそ、どの作品から読み始めればよいか迷うもの。

本記事では、初心者でも読みやすい「やさしい」作品から、文学的深淵に触れる「深い」傑作まで、段階的に楽しめるよう構成した。

奥田英朗のおすすめの本を探している方、物語の世界に没頭したい方はぜひ参考にしてほしい。


1. 『イン・ザ・プール』奥田英朗

おすすめのポイント

精神科医・伊良部一郎シリーズの第一作目にして、奥田英朗の代表作。

「いらっしゃーい」と甲高い声で患者を迎える非常識な医師・伊良部が、現代人の抱えるストレスや強迫観念を、常識外れの治療法(というより奇行)で解きほぐしていく医療コメディである。

注射フェチでマザコンという強烈なキャラクターと、それを冷ややかな目で見つめる露出狂の看護師・マユミの掛け合いは絶妙。

読書慣れしていない人でもスラスラと読め、読後には悩み事が馬鹿らしく思えてくるデトックス効果の高い一冊。

奥田英朗のおすすめの本としてまず最初に名前が挙がる、入門編に最適な短編集。

次のような人におすすめ

  • 日々の仕事や人間関係に疲れを感じており、とにかく笑ってスカッとしたい人
  • 活字中毒ではないが、気軽に読めて面白い小説を探している読書初心者
  • 「精神科医・伊良部シリーズ」の映画やドラマを見て、原作に興味を持った人

2. 『家日和』奥田英朗

おすすめのポイント

「家」をテーマに、平凡な日常に訪れる小さな変化や非日常を描いた心温まる短編集。

ネットオークションにハマる専業主婦や、会社が倒産して主夫となった男など、現代社会の縮図のような家庭の風景を優しく、時にユーモラスに切り取っている。

第20回柴田錬三郎賞を受賞した本作は、伊良部シリーズのような爆発的な笑いとは異なり、しみじみとした共感と癒やしを与えてくれるのが特徴。

家族のすれ違いや絆の再構築を描いており、夫婦や親子で読みたくなる良質なホームドラマである。

次のような人におすすめ

  • 夫婦関係の機微や、家族の絆を描いた温かい物語を求めている人
  • 仕事と家庭のバランスや、専業主婦・主夫という生き方に関心がある人
  • 読後に優しい気持ちになれる、癒やし系の小説を探している人

3. 『ガール』奥田英朗

おすすめのポイント

30代を中心とした働く女性たちの「本音」と「闘い」をリアルに描いた短編集。

「女の子」でいられる期間の終わりへの恐怖、部下の育成に悩む女性管理職の葛藤。

独身でのマンション購入への迷いなど、キャリアと女性としての幸せの間で揺れ動く心理描写が秀逸である。

男性作家が書いたとは思えないほど解像度が高く、多くの女性読者から「私のことが書いてある」と共感を呼んだ。

「ガール」とは年齢ではなく魂のあり方だと教えてくれる、働く女子への応援歌的一冊。

次のような人におすすめ

  • 仕事や結婚、年齢の壁に悩みながらも懸命に生きる20代〜40代の女性
  • 職場での人間関係や、自分らしい生き方を模索しているキャリアウーマン
  • 明日への活力が湧いてくるような、元気になれるお仕事小説が読みたい人

4. 『サウス・バウンド』奥田英朗

おすすめのポイント

元過激派で、税金も払わず学校教育にも噛み付く破天荒な父親・一郎と、それに振り回される長男・二郎の物語。

東京の下町から沖縄の西表島へと舞台を移しながら展開する、親子の冒険と成長を描いた長編小説である。

社会のルールに縛られない父親の生き方は、迷惑だがどこか痛快で、閉塞感のある現代社会に風穴を開けてくれる。

2006年の本屋大賞・第2位にランクインした本作は、笑いあり、涙あり、そして最後には鮮やかなカタルシスが待っているエンターテインメントの傑作。

次のような人におすすめ

  • 常識や権力に屈しない、痛快な反骨精神を持ったキャラクターが好きな人
  • 沖縄や西表島などの南国を舞台にした、開放感あふれる冒険小説が読みたい人
  • 少し変わった家族の絆や、少年の成長物語に感動したい人

5. 『向田理髪店』奥田英朗

おすすめのポイント

北海道の寂れた元炭鉱町を舞台に、理髪店を営む親子と住民たちの悲喜こもごもを描いた連作短編集。

過疎化、高齢化、シャッター通りといった地方の厳しい現実(リアル)を背景にしながらも、そこには確かに息づく人々の温かさとユーモアがある。

都会から戻ってきた息子と父親の距離感や、町おこしに奔走する大人たちの姿は、ほろ苦くも愛おしい。

派手な事件は起きないが、しみじみとした人間ドラマが胸に染みる、大人のための地域小説。

次のような人におすすめ

  • 地方の生活やUターン、親の老後といったテーマに関心がある中高年層
  • 派手な展開よりも、人間の情愛や日常の機微を丁寧に描いた作品を好む人
  • 北海道の田舎町を舞台にした、少し切なくも温かい物語に浸りたい人

6. 『ララピポ』奥田英朗

おすすめのポイント

タイトルは「a lot of people」のスラング的読み。

風俗スカウトマン、デブ専AVに出演する声優志望者、ネットカフェ難民など、社会の底辺や周縁で生きる「イタい」人々を描いたピカレスク(悪漢)小説。

欲望に忠実で、倫理観が欠如した登場人物たちが交錯する群像劇であり、その疾走感とブラックユーモアは中毒性が高い。

『最悪』『邪魔』に通じる毒気を含みつつも、どこか彼らを肯定するようなエネルギーに満ちている。きれいごとの物語に飽きた読者に贈る、刺激的な一冊。

次のような人におすすめ

  • 人間の欲望や汚い部分も笑い飛ばせる、ブラックユーモア耐性のある人
  • 『闇金ウシジマくん』のような、裏社会やアングラな世界観を描いた作品が好きな人
  • 複数の物語が奇妙に繋がり合う、スピーディーな群像劇を楽しみたい人

7. 『ナオミとカナコ』奥田英朗

おすすめのポイント

DV夫の暴力に苦しむ親友・カナコを救うため、百貨店外商部のナオミが完全犯罪を計画するクライムサスペンス。

夫に瓜二つの中国人密航者を利用した「なりすまし殺人」の計画から実行、そして隠蔽工作まで、心臓が早鐘を打つようなスリルが続く。

「いっそ二人で殺そうか、あんたの旦那」という衝撃的な提案から始まる二人の共犯関係は、究極のシスターフッド(女性同士の連帯)とも言える。

ドラマ化もされた本作は、ページを捲る手が止まらない一気読み必至のエンタメ作品。

次のような人におすすめ

  • ハラハラドキドキする展開が続き、寝る間も惜しんで読めるサスペンスを探している人
  • 抑圧された状況からの脱出や、DV夫への復讐というテーマにカタルシスを感じる人
  • 「完全犯罪」のトリックや、警察・探偵との息詰まる攻防戦を楽しみたい人

8. 『最悪』奥田英朗

おすすめのポイント

町工場の社長、銀行員の女性、定職のない若者。

接点のない3人の人生が、些細な不運の積み重ねによって交錯し、タイトル通り「最悪」の事態へと転がり落ちていく長編クライムノワール。

真面目に生きている人間ほど損をする社会の不条理と、極限状態に追い詰められた人間の暴発を容赦なく描く。

「このミステリーがすごい!」にもランクインした本作は、読む者に胃の痛くなるようなストレスを与えつつも、圧倒的なリアリティで最後まで牽引する奥田英朗の裏の代表作。

次のような人におすすめ

  • 人間の業や社会の理不尽さを描いた、重厚で読み応えのある小説を求めている人
  • 「負の連鎖」が止まらない、ノワール小説やハードボイルドな世界観が好きな人
  • 甘い救いのある物語よりも、現実の厳しさを突きつけるような衝撃作を読みたい人

9. 『邪魔』奥田英朗

おすすめのポイント

夫が勤務先の放火事件に巻き込まれたことをきっかけに、平凡な主婦の日常が崩壊していく心理サスペンス。

夫の無実を信じたい妻・恭子が、家庭を守ろうとするあまり警察の捜査を攪乱し、ついには自らも犯罪の領域へと足を踏み入れていく。

「日常」という名の平穏を維持するために、邪魔なものを排除しようとする主婦の狂気が恐ろしい。

大藪春彦賞を受賞した本作は、派手なアクションではなく、静かに、しかし確実に精神を蝕んでいく「イヤミス(嫌なミステリー)」の傑作である。

次のような人におすすめ

  • 平凡な人間が犯罪に手を染めていく過程を描いた、心理サスペンスに興味がある人
  • 読後にざらりとした余韻が残る、人間の暗部をえぐり出した作品が好きな人
  • 「家族を守る」という正義が狂気へと変わる瞬間を目撃したい人

10. 『沈黙の町で』奥田英朗

おすすめのポイント

ある地方都市の中学校で起きた男子生徒の転落死。

いじめの疑いが浮上する中、学校、教育委員会、保護者、警察、そしてマスコミがそれぞれの「保身」と「正義」を振りかざし、真相は藪の中へと消えていく。

特定の主人公を置かず、多角的な視点から事件を描くことで、集団心理の恐ろしさや、責任をなすりつけ合う大人の醜さを浮き彫りにする。

いじめ問題そのものだけでなく、事件後のネットリンチや報道被害など、現代社会の病理を鋭く突いた社会派ミステリー。

次のような人におすすめ

  • いじめ問題や集団心理、村社会の閉鎖性といった重いテーマに関心がある人
  • 特定の犯人探しよりも、社会構造そのものの歪みを問うような作品を読みたい人
  • 『告白』(湊かなえ)のような、多視点で描かれる告発型のミステリーが好きな人

11. 『オリンピックの身代金』奥田英朗

おすすめのポイント

1964年の東京オリンピック開催直前を舞台に、国家への復讐を誓う孤独なテロリストと、それを追う警察の攻防を描いた歴史サスペンス巨編。

高度経済成長の光と影、東京の繁栄と地方の貧困という社会矛盾を背景に、オリンピックを人質にした爆弾テロ計画が進行する。

吉川英治文学賞を受賞した本作は、当時の東京の熱気や匂いまで再現した圧倒的な描写力と、犯人側の動機にも深く切り込んだドラマ性が魅力。

奥田英朗の作品の中でも、特にスケールの大きいエンターテインメント大作。

次のような人におすすめ

  • 昭和30年代の歴史的背景や、社会派テーマを扱った重厚なドラマが好きな人
  • 『ALWAYS 三丁目の夕日』的なノスタルジーとは異なる、昭和史の闇を描いた作品を読みたい人
  • 犯人と刑事、それぞれの矜持がぶつかり合う、骨太な警察小説・犯罪小説を求める人

12. 『罪の轍』奥田英朗

おすすめのポイント

戦後最大の誘拐事件と言われる「吉展ちゃん事件」をモチーフに描いた、奥田英朗の最高傑作との呼び声高い犯罪小説。

孤独と貧困の中で生きる青年・宇野寛治が、ふとした弾みで子供を誘拐してしまう悲劇を描く。

社会のセーフティネットからこぼれ落ちた「悲しきモンスター」としての犯人像と、科学捜査以前の時代に靴底を減らして捜査する刑事たちの執念。

圧倒的なリアリティと筆力で描かれる人間ドラマは、ミステリーの枠を超え、読む者の魂を強く揺さぶる文学的到達点である。

次のような人におすすめ

  • 実在の事件をモチーフにした、リアリティあふれる重厚な犯罪小説を読みたい人
  • 『冷血』『復讐するは我にあり』のような、犯罪文学の金字塔的作品に触れたい人
  • エンターテインメントの面白さと、純文学の深さを兼ね備えた傑作を探している人

まとめ:まずは「やさしい」一冊から奥田ワールドへ

奥田英朗の作品は、読む順番によって作家への印象が大きく変わる。

まずは『イン・ザ・プール』『家日和』で、その卓越したユーモアと温かい人間観察眼に触れてみてほしい。

そこで彼の文章のリズムに惹かれたなら、次は『ナオミとカナコ』のようなスリル満点のサスペンスへ。

そして最後には『最悪』『罪の轍』といった、人間の業を深くえぐり出す傑作へと進むのがおすすめのルートである。

笑いも恐怖も、すべてが一級品。

ぜひあなたも、奥田英朗という底なしの沼に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。