記事内に広告が含まれています

【選書】黒川博行のおすすめ本・書籍12選:ミステリー、警察小説、傑作、代表作、文庫

大阪弁の軽妙なリズムと、骨太なリアリズムが融合した「大阪ノワール」。

黒川博行(くろかわ・ひろゆき、1949年~)の小説は、単なるエンターテインメントにとどまらず、資本主義社会の欲望や人間臭さを描き出す点において、多くの読者を惹きつけてやまない。

直木賞作家であり、ミステリー界の重鎮による作品群は、初心者でも楽しめる痛快なコンゲームから、社会の深淵を覗く重厚なサスペンスまで多岐にわたる。

この記事では、数ある名作の中から、読みやすさとテーマの深さを基準に厳選した黒川博行のおすすめの本を12冊紹介。

初めて手に取る人から、より深い読書体験を求める人まで、段階的に楽しめる構成とした。

1. 『後妻業』黒川博行

おすすめのポイント

現代社会の闇をエンターテインメントに昇華させた傑作。

資産家の老人を狙って結婚や内縁関係を結び、死後に遺産を根こそぎ奪う「後妻業」という生業(シノギ)を描く。

映画やドラマ化もされた本作は、遺産相続や孤独死といった身近で深刻なテーマを扱いながらも、悪女・小竹小夜子のバイタリティあふれるキャラクター造形により、ページをめくる手が止まらない。

法律の隙間を突く手口のリアリティと、騙し合いの滑稽さが同居する、黒川博行のおすすめ本として最初に挙げるべき一冊。

次のような人におすすめ

  • 現実にありそうなスリルある物語を求めている人
  • 遺産相続や高齢化社会の問題に関心がある人
  • 映画やドラマの原作から黒川ワールドに入りたい初心者

2. 『文福茶釜』黒川博行

おすすめのポイント

美術教師出身である著者の知識がいかんなく発揮された、骨董業界を舞台にしたコンゲーム小説。

書画や陶芸品などの「お宝」を巡り、狐と狸の化かし合いのような騙し合いが繰り広げられる。

本作の魅力は、登場人物が全員悪人でありながら悲壮感が皆無である点。

章立てが短くテンポが良いため、隙間時間でもサクサクと読み進められる。

情報の格差を利用して金を稼ぐ骨董ビジネスの裏側を、ユーモアたっぷりに学べる痛快作。

次のような人におすすめ

  • 『なんでも鑑定団』のような骨董の世界に興味がある人
  • 重苦しい話よりも、スカッとする騙し合いが読みたい人
  • 美術品やアンティークの裏知識を知りたい人

3. 『疫病神』黒川博行

おすすめのポイント

黒川博行の代名詞とも言える大人気「疫病神シリーズ」の記念すべき第1作。

建設コンサルタントの二宮と、イケイケのヤクザ・桑原という異色の凸凹コンビが、産業廃棄物処理場を巡る巨大な利権争いに巻き込まれる。

暴力とカネの匂いが充満するハードボイルドな世界観でありながら、二人の漫才のような掛け合いが絶妙な清涼剤となっている。

シリーズ化されるのも納得のキャラクター強度と、二転三転するプロットの妙を味わえる。

次のような人におすすめ

  • 名コンビが活躍するバディものの小説が好きな人
  • 建設業界や裏社会の経済構造を覗いてみたい人
  • 人気シリーズを最初から順番に制覇したい人

4. 『二度のお別れ』黒川博行

おすすめのポイント

著者の実質的なデビュー作であり、サントリーミステリー大賞佳作受賞作。

現在の「シノギのリアリズム」あふれる作風とは少し趣が異なり、誘拐トリックやアリバイ崩しといった「本格ミステリー」の要素が色濃い。

身代金誘拐と銀行強盗が複雑に絡み合う事件に対し、大阪府警の刑事たちが地道な捜査と推理で挑む。

文章は平易で動機も分かりやすく、黒川ミステリーの原点として、ミステリーファンなら押さえておきたい一冊。

次のような人におすすめ

  • 謎解き要素の強い本格ミステリーを楽しみたい人
  • 作家の進化の過程や初期の作風に触れたい人
  • 警察小説におけるチームプレイが好きな人

5. 『迅雷』黒川博行

おすすめのポイント

「ヤクザの組長を誘拐して身代金を奪う」というハイリスク・ハイリターンな犯罪に挑む男たちを描くクライム・アクション。

タイトルの通り、物語は疾風迅雷のスピード感で展開する。

大阪の地理を熟知した著者ならではのリアルなカーチェイスや逃走劇は圧巻。

複雑な謎解きよりも、ハラハラドキドキするサスペンスとアクション要素が前面に出ており、映画を見るような感覚で一気に読了できるエンターテインメント作品。

次のような人におすすめ

  • スリル満点のアクションや逃走劇が好きな人
  • 難しいことを考えずに勢いで読める小説を探している人
  • 裏社会の住人たちの命懸けの駆け引きを楽しみたい人

6. 『蒼煌』黒川博行

おすすめのポイント

日本画壇の最高権威「芸術院会員」の座を巡る、熾烈な選挙戦と買収工作を描いた社会派小説。

芸術という美名の裏で飛び交う数千万円の実弾(現金)や、料亭での接待攻勢など、ドロドロとした権力闘争が赤裸々に描かれる。

テーマは少し重厚になるが、組織の論理や人間の名誉欲という普遍的な題材を扱っており、企業小説や政治ドラマが好きな読者にはたまらない面白さがある。

中級編への架け橋となる一作。

次のような人におすすめ

  • 『白い巨塔』のような組織内の権力争いが好きな人
  • 美術界の政治的側面や裏側に興味がある人
  • 人間の欲望とプライドが交錯するドラマを読みたい人

7. 『勁草』黒川博行

おすすめのポイント

映画『BAD LANDS バッド・ランズ』の原作となった、ノワール小説の金字塔。

特殊詐欺(オレオレ詐欺)グループの名簿屋と、その相棒が、巨額の資金を巡って組織や警察と対峙する。

犯罪の手口が詳細に描かれるだけでなく、その背景にある貧困、格差、虐待といった現代社会の構造的問題を深くえぐり出す。

タイトルの「勁草」が意味する通り、困難な状況下でしか見えない人間の強さと哀しみが胸に迫る、読み応え抜群の重量級作品。

次のような人におすすめ

  • 映画の原作小説として、より深い背景を知りたい人
  • 現代日本の格差社会や犯罪構造に関心がある人
  • 救いのない状況で足掻く人間のドラマに感動したい人

8. 『カウント・プラン』黒川博行

おすすめのポイント

日本推理作家協会賞を受賞した表題作を含む短編集。

目に見えるものを数えずにはいられない「計算症」の男など、奇妙な強迫観念や性癖を持つ人物たちが登場する。

長編のようなダイナミックな展開とは異なり、個人の内面に潜む狂気や異常心理に焦点を当てた「奇妙な味」のミステリー。

短編ならではの切れ味と、緻密に計算された犯罪計画の妙を楽しめる、中級者向けの知的な一冊。

次のような人におすすめ

  • 人間の異常心理やサイコ・サスペンスに興味がある人
  • 短時間で読める完成度の高い短編を探している人
  • 一風変わった設定のミステリーを味わいたい人

9. 『連鎖』黒川博行

おすすめのポイント

食品卸会社社長の失踪を発端に、複雑に絡み合った犯罪の糸を刑事が解きほぐしていく警察小説。

派手なアクションではなく、手形の裏書き確認や帳簿の精査といった、地道な捜査の積み重ねによって真実に迫る。

食品業界の資金繰りや保険金詐欺のトリックなど、経済的なディテールが物語の鍵を握る。

複数の事件が連鎖し、一つの絵図として浮かび上がる構成力に唸らされる玄人好みの作品。

次のような人におすすめ

  • リアリティのある警察の捜査活動を追体験したい人
  • 経済犯罪や企業の倒産劇に関心がある人
  • 緻密に構成された謎解きをじっくり楽しみたい人

10. 『騙る』黒川博行

おすすめのポイント

『文福茶釜』の姉妹編とも言えるが、より専門的でディープな贋作の世界を描いた連作短編集。

ヴィンテージ・アロハシャツや彫刻など、マニアックなアイテムの真贋を見極める眼力と、それにまつわる物語(来歴)の捏造プロセスが描かれる。

モノの価値とは何か、それを信じ込む人間の心理とは何かを問いかける。

知識欲が刺激されるとともに、騙し騙される心理戦の深みに浸れる、大人のための教養ミステリー。

次のような人におすすめ

  • 専門的な知識や業界の裏話を知的興奮として楽しめる人
  • モノづくりやヴィンテージ市場に興味がある人
  • 高度な心理戦や腹の探り合いが好きな人

11. 『煙霞』黒川博行

おすすめのポイント

私立高校の美術教師と音楽教師が、学校法人の理事長を誘拐し、隠し財産の金塊を奪おうとするコンゲーム小説。

教育現場の聖職者たちが抱える欲望や、私学経営の裏金問題など、学校という閉鎖空間の闇を暴く。

素人である教師たちがプロの悪党と渡り合うスリルと、二転三転する予測不能な展開が魅力。

登場人物の心理描写も緻密で、文学的な読み応えも十分な、じっくりと腰を据えて読みたい作品。

次のような人におすすめ

  • 学校や教育現場の裏側を描いた物語に興味がある人
  • 一般人が犯罪に手を染めるサスペンスが好きな人
  • 複雑な人間模様とどんでん返しを楽しみたい人

12. 『悪逆』黒川博行

おすすめのポイント

2023年に発表された、黒川ノワールの到達点とも言える重厚な長編。

医療法人と老人ホームを舞台に、巨額の資金流出とそれを巡る悪党たちの騙し合いを描く。

単なる金銭の奪い合いにとどまらず、介護ビジネスの歪みや組織の腐敗といった社会問題を背景に、人間の業と欲望を徹底的に描き切る。

複雑な人間関係と容赦のない展開は、読者に覚悟を強いるほどの密度があり、黒川博行の「深淵」を体験するのにふさわしい一冊。

次のような人におすすめ

  • 最高濃度のノワール小説に挑戦したい上級者
  • 現代の社会システムに潜む悪を直視したい人
  • 甘さのないハードな読書体験を求めている人

まとめ:大阪ノワールの深淵へ、最初の一歩を

黒川博行の小説は、エンターテインメントとしての面白さと、社会の暗部を射抜くジャーナリスティックな視点が同居している点が最大の魅力だ。

入り口は軽妙な大阪弁の会話劇であっても、読み進めるうちに資本主義社会の本質的な構造や、人間の逃れられない欲望に直面することになる。

今回紹介した12冊は、その入り口から深淵へと続く階段のようなものである。

まずは気になる一冊を手に取り、その圧倒的なリアリティと熱量を体感してほしい。